京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/04/30
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心豊かな子どもに育てるために

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 「豊かな心を持つ子どもに育てるためには,どうしたらよいのでしょうか?」「共感できる子どもに育てるためには,どうしたらよいのでしょうか?」

1つは, 胎児期,乳・幼児期に,お母さんが自分の感動・共感を子どもに語り,自然と聴かせることです。それもプラス思考の視点で感じ語ることです。
2つは,直接体験をたくさんするということです。
3つは,子どもの良さや伸びや頑張りの事実を,たくさん語りかけるということです。

 長くなりますが,一つ一つ順番に考えていきたいと思います。時間を分けても結構ですので,どうか最後までお付き合いください。何かヒントになると確信しています。

1つ目の,「胎児期,乳・幼児期に,お母さんが自分の感動・共感を子どもに語り聴かせることが,それもプラス思考の視点で感じ語ることが,とても大事です」ということです。
  「緑が若葉色できれいね」「ウサギさんがこっちを見ているよ。こんにちは」「横断歩道の小学生,手を上げてさっさと歩いているね」「雨ですね。たくさんのカエルさんの声が聞こえるね」「この曲はモーツアルトさんの作曲だよ。うっとりするね」どんなことでもよいのです。たくさん感じたことを語り,見たこと聴いたことを語ったらいいのです。胎児もちゃんと聴いています。乳幼児も,もちろん聴くことができますし難しい言葉が混じっても言っていることは分かっています。心配されないでどんどん語ってください。
 赤ちゃんを産まれたお母さんが語ってくれました。「元気に生まれましたが,お腹も一杯のはずで眠るはずなのに,いつまでも泣いているのです。どこか悪い様子でもありません。生まれて1週間経っても同じようでした。そこで,絵本を読んだのです。すると,あれだけ泣いていたのに,泣き止んで聞いているようでした。1冊読み終わって寝かせようとすると,また泣き出しました。2冊,3冊・・5〜6冊読んだでしょうか。読み終わった時,スースーと眠っていました」「そうですか。絵本を読んでもらいたかったのですね」「そうなんです。まさかとは思ったのですが・・」と,お母さんはさらに次のようなエピソードを語ってくれました。
 「お腹に赤ちゃんができたという時から,胎児教育のことを聞き,お腹の赤ちゃんに何でも語ってきました。絵本も毎日読んで,おなかの赤ちゃんに聞かせてきました。赤ちゃんは生まれてからも,同じようにしてほしい。絵本を読んでほしいと思っていたのでしょうね」ということでした。
 お腹の中の胎児は,お母さんの言葉を聞いています。絵本を読む声や内容までもおそらく聞いています。ましてや,すでに生まれている赤ちゃんや幼児は大概のことは分かっています。ですから,お母さんが感じたことを口に出したことは,子どもはすべて聞いてお母さんと同じように感じていきます。
 「汗をかいて,がんばっているんだね」「雨の中でも道路を直してくれているね。ごくろうさまです」「あそこの二階のベランダであんな小さい子が洗濯物を片付けているね。えらいね」「少女は雪の中でおばあさんの夢を見ていました。そして天国に行きました。かわいそうなお話だったね。助けてあげたかったね」などと見たこと聴いたこと読んだこと感じたことなど共感することをたくさん見つけて言葉に出して語ってほしいのです。
 これらの例は,すべてプラス思考の視点から見た言葉です。こういうプラス思考,肯定的視点での感動言葉が大事なのです。ですから,マイナス思考,つまり否定的視点での言葉はいけません。「(汗をかいて働いている人を見て)あんなに汗をかいているね。汗をかくほどは,働かなくてもいいのにね」「小さい子が洗濯物を片付けているね。小さい子が片づけなくてもよいのにね。どんなお母さんなんだろうね」などと否定はいけません。聞いた子どもは,同じように否定的に感じ否定的な言葉を出すようになります。これは豊かな心を育てないばかりか,自分自身が学ぼうという地点から後退していくことになります。また,言っている大人(本人)自身も豊かな心を伸ばすことはできません。学ぼうということを拒否した言葉が,否定の言葉だからです。同じ場所に留まっているのではなく,おそらく後退している,前の自分からマイナスになっていっていると思っています。ですから,ぜひプラス視点での感じ方や言葉を出すようにしてほしいと願います。
 このようにプラス視点での,お母さんや大人の感動や共感を聴いた子どもは,同じように感じたり共感したりできるようになります。心豊かな子に育っていきます。共感した時点で学びを行っていますので,どんどん心が豊かになっていきます。
 すでに育って大きくなった私たちはどうでしょうか? 手遅れでしょうか? いえいえ,まったく問題ありません。素直な気持ちになってたくさん感じとりましょう。「歌が好きなんだね。ソロでみんなの前で歌うようになったなんて,すごいね」と,独り言でも言ってみましょう。自分の心に語りかけてもいいと思います。続けていると,感動することが増えていき,どんどん心が豊かになっていきます。
 心が豊かになるということは,自分を振り返ることができる,客観視ができる力がついてくることでもあります。自分を見つめ反省ができることによって,心の垢も取れていきます。かたい殻が少しづつ薄くなり柔らかくなり,そして自分の本物の内面が出てきます。それは素直な本当の自分の心です。豊かな感情ですし,優しさも素直に出てきます。表情が穏やかになり,本物の笑顔で外観もきれいになっていきます。

2つ目の,「直接体験をたくさんするということ」について考えていきましょう。
 京都市立幼稚園は16園あります。どの園も,直接体験,本物体験を保育の最重要な柱と考え実践しています。
 本物体験で五感で直接触り匂い,見て聞き,六感で予想したり感じたりすることで,驚いたり嬉しかったり怖かったりして心が出てきます。それこそが,自分の心の奥にある本当の自分の心です。その本当の自分を感じ表出することで,自分を自覚し自分と向き合い,自分に誇りが持てたり反省したりできるのです。
目の前の友だちと目を見つめ合ったり,砂場で砂遊びをしたり,冷たい水を触ったり,ドロドログチャグチャの泥遊びや粘土や絵の具遊びは,すべて本物体験です。テレビの画面で人と向かい合うのとでは,全く違います。
 本物体験では,大脳が前頭葉が盛んに活動しているのに対して,テレビやゲームなどの画面でのバーチャル体験だと,ほぼ停止しているという脳科学の実験結果が報道されています。
 子ども達は,本物体験を重ねる度に自信を積み重ねます。「触れた」「匂いをかげた」「見たし聞こえた」「話せた」「がまんしてきた」「練習してきた」「少しできる気がしてきた」全部自信が積み重なります。その積み重なった自信が,自分を支え後押しして前に進む原動力になります。未来を積極的に切り開いていくエネルギーになります。
 年長組さんは,春からしっぽ捕りをしてきました。A子ちゃんは,ずーとB子ちゃんのしっぽが捕れません。とられるばかりで「わたしはB子ちゃんからは,とれないのだ」と思う日々が続いていました。「何とかしてB子ちゃんのしっぽを捕りたい」の思いで,すきを見たり後ろに回る工夫をしたりしていました。そして,3ヶ月目に入ったある日のことです。大きな声が響きました。「ヤッター」何と初めてB子ちゃんからしっぽを捕ることができたのです。次の日から表情が一層キリリと変わりました。言うことが変わりました。「先生,私はしっぽ捕りの名人なんやで」
 本物体験を積み重ねる中では,失敗も沢山あることでしょう。その失敗体験も,実はすべて自分だけが体験したことです。ですから本来は自信のはずです。「がんばってきている分,必ず力がついているのだよ。昔からね,継続は力という言葉があるんだよ」と,励ましてほしいと思います。成果が自覚できた時,自信は何倍にも倍増されます。

3つ目の,「子どもの良さや伸びや頑張りの事実を,たくさん語りかけるということ」です。
 ここまで読まれたみなさま方は,当たり前だと思われるでしょう。その通りです。でも,よく考えてみてほしいと思います。自分の生活の中で,そうなっていますか?そうなっておられる方は,もうこれ以上読まなくても結構です。
 子ども達は,3歳児の年少組でも,すでに自分と相手とを比べ優劣を感じています。クラスの中で,「虫捕りではあの子がすごい」とわかっています。「ことばでは,あの子にかなわない」とわかっています。ですから,大人が「あの子は虫捕りすごいなあ,何であなたはできないのだろうね」「どうしてそんなに言葉が出ないのだろうね」などと否定的な言葉をかけることは,本人プラス大人の言葉で,ダブルの否定になります。
 仮に,何がしかのことで毎日この否定的なことが自分に続いたらどうでしょう。強靭な心の持ち主でも,持ちこたえられなくなるのではないでしょうか。落ち込み,傷つき引きこもりがちになり,前に進むエネルギーが出てこないのではないでしょうか。
 反対に,自分の良さや頑張りの事実を知らされたらどうでしょう。自信をつけて前を向き,自分を大事にしていくのではないでしょうか。
 私が小学校の教頭先生であった時のエピソードです。
 小学1年生の A子,B子,C子の3人が,いつも一緒に学童保育へ帰っていました。そのA子が,B子と組んでC子をいじめていました。カバンを持たせる,「いやだ」と断ると言葉の暴力で泣かせるなどです。あるときA子のわがままな願いをC子が断ったときのことです。泥水の水溜りの中に,わざと押し倒して服をドロドロにしました。C子は泣きながら家に帰ったので,それを見たお母さんがいじめられているとわかったのです。C子のお母さんは担任とA子のお母さんに連絡しました。A子のお母さんはA子を連れてC子の家に行き一緒に謝りました。
 A子ちゃんのお母さんが職員室に寄られて,「この度はすみませんでした」と挨拶をされました。そこで声をかけました。「少しいいですか?」と時間をもらいました。お母さんはまだ30代前半ぐらいの若さなのに,やつれた暗い顔をされていました。
 「お母さんはお仕事ですか?」と尋ねると,「ええ,朝7時半頃にもう仕事に出かけます。娘のA子は家の鍵をかけて学校へ行くのです。私と娘の2人ぐらしです」「夜は,仕事から6時とか,遅いと7時頃に家に帰るのですが,A子が洗濯物を取り入れていないので,叱ったりします。・・それがいけないのでしょうか?」「お母さん,よくがんばっておられますね。A子ちゃんも偉いね。まだ1年生なのに,洗濯物を取り入れたり,風呂の掃除をしたり・・,がんばっていますね」「でもそんなことは1年生だから当たり前です。だから別に何も言いません。私も目一杯がんばっていますし,・・反対にさぼっている時は叱ります」ということでした。
 「そうですか。A子ちゃんもお母さんも一杯がんばっておられるのですね。お母さん,A子ちゃんを褒めてください」「えっ,褒める? なぜですか? 当たり前のことをしてもらっているので褒めるなんて・・・それに褒めるって?・褒めたことがないのでどうやったらいいかわかりません」ということでした。「お母さん。A子ちゃんがしてくれた事実を,そのまま伝えて,その後にお母さんは助かるわとか,ありがとうと言われるとよいですよ。例えばね,A子ちゃん洗濯物取り入れてくれたんだね(事実)。お母さん助かったわ。ありがとう」「それでいいんですか?」「それでいいんです。してくれた事実とありがとうで最高の褒め言葉です。A子ちゃんを最高に認める言葉ですよ」「わかりました。やってみます」と言うことでお母さんはお家に帰って行かれました。
 1ヶ月ほどしてA子のお母さんが職員室にまた寄ってくれました。明るいきれいな顔をしておられました。思わず,「お母さん,きれいになられましたね」と言ってしまいました。お母さんは「あれから言われたことをやってみました。洗濯物取り入れてくれたね。お母さん助かったわ。ありがとう。と,すると,次の日はもっとやっていたり,自分からお手伝いも勉強もやるようになりました。いじめることもなくなったと,C子ちゃんのお母さんも喜んでくれました」「お母さん。よくがんばっておられますね。毎日朝から晩まで働いて疲れているのに・・」「いいえ,疲れていても,子どもと話をしていたら疲れがなくなる感じです」ということでした。「お母さん,とてもがんばっておられますね。よくA子ちゃんを見ておられますし,事実を言っておられますね。このままよく見られて事実を語ってくださいね」「がんばります」と帰って行かれました。まだまだ道のりは始まったところですが,お母さんは子どもと語る楽しさを感じておられました。気持ちも外観も若返っておられて,本当に驚いた記憶があります。
 このエピソードからも解りますが,その子の頑張りや良さの事実を語るということ。お母さんは助かるわ,うれしいわ,ありがとう。とお母さんの気持ちを伝えるということ。このことが,どんなにか子どもを認めることになり,ほめ言葉になり,子どもの心を支えていくことになるのかということが分かります。
 仮に,お母さんにとって悲しいことをしたとしたら,どのように言ったらよいでしょうか。「なんでそんなことをするの。そんなことをしたら,○○さんにものすごく叱られるよ。警察も許してくれないよ」というのがよいでしょうか。それとも,「そんなことをして,お母さんは悲しいよ。悲しくて夜も寝られない」と言ったらよいのでしょうか。そうです。後者のように言ってほしいのです。「お母さん」を主語にして語ってほしいのです。
 子どもにとって,お母さんの喜びは自分の喜びです。反対に,お母さんの悲しみは子どもの悲しみなのです。「お母さん」は,とお母さんを主語にして語ることを,覚えてほしいと思います。

 ここまで,3つのことを一緒に考えてまいりました。貴重なお時間を,長い時間に渡って関わっていただきました。誠にありがとうございました。
 3つのことを実践していくと,子どもは心豊かに育つだけではなく,自尊感情や自己有用感をも高めていきます。そして,小学校の先生方がよく言われる,「公立幼稚園から来た子たちは,高学年になるに従って伸びてくる。後伸びしてくる」と。実は,そればかりではありません。実践していく私たち大人自身が,心豊かになり自信をつけ前に進んで行くようになるのです。エピソードのお母さんになるのです。長い時間本当にありがとうございました。


心豊かな人=感謝できる人 に育つ翔鸞幼稚園の教育

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 心豊かな人=感謝できる人=人生が豊かに過ごせる人・・に育ち育てる  翔鸞幼稚園の教育

 心豊かな人は,感動できる人だろうと思います。感動できる人は「すごいなあ」「うれしいな」「ありがたいな」「どうもありがとうございます」と素直に感謝できます。感謝できる人は,「どうもありがとうございます」「そんなにしてもらって,すごいですね。(わたしもそうなりたい)」と他人から学ぼうとしている人です。人生をはるかに豊かに過ごせる人です。
 翔鸞幼稚園では,感動できる人,素直に感謝できる人を育ち育てています。

 エピソードを2つ読んでみましょう。
1 私が若い時に,今は亡き山田無文ご老師様(1900〜1988,花園大学学長,妙心寺派管長)の書かれた本を読んだことがあります。感謝について書かれているところがありました。とても印象に残っているのが,インドに旅をした時のお話です。「朝,おびただしい人がガンジス川で体を清めています。太陽が出てくるとみんなが太陽の方を向いて感謝し,合掌しています。その姿を見て言いようのない感動を覚えました。このインドの国は,今は混沌とし混乱しています。しかし,近い将来必ず世界をリードする国になるだろう。太陽に感謝できるおびただしい人たちを見て確信しました」というような内容だったと記憶しています。あれから30年以上経ちました。
 今のインドの状況はどうでしょうか。NASAの科学者の36%,アメリカの医師の約40%はインド人(インド系)。世界最高ランクのハーバード大学生のこの10年間の増加率は中国の164%を抑えて190%と世界一位,教授陣もノーベル賞を受賞しているインド人を始め・・と続きます(田村耕太郎氏2011、1、26の論文より)。インドの人たちは世界中で活躍しています。
 インドの国は今や底知れない経済発展をしていくだろうと見られています。安倍首相も平成27年1月25日〜27日にインドを訪問されました。シン首相との会談の中で,両国の経済関係が大きく発展しているのを評価しますと述べ,今後の重要なパートナーとして関係強化を願っておられます。
 山田無文ご老師様は,インドの人たちの真摯に合掌しているたくさんの人たちを見られて,素直に感謝できる人は心豊かな人,心豊かな人は,想像力も豊かで主体性のある人たち。そのような人たちがたくさんいるインドの国。必ず世界をリードしていく国になると確信されたのでしょう。その慧眼には驚くばかりです。

2 感謝についてのエピソード2つ目は,あるおばあさんの話です。ご縁のあるお寺のご老師さんが「本当の話ですよ」と語ってくれたお話です。
 「また秋になったと,ため息しか出ませんわ」とお婆さんが言われます。「どうしたのですか?」と尋ねると,次のようなことを話されたそうです。「私の足は,毎年毎年ひどいしもやけになります。痒くて痛くて本当に悪い足で困ります。どうして私の足だけが,こんなにもしもやけがひどいのか,困った足です。毎年お医者さんに行くのですが,どうしても治りません。毎年毎年ひどいしもやけで苦労しています。冬が近づく秋になると,またしもやけが出るなあと憂鬱になり,ため息になったのです」「そうですか。それは大変ですね」ということで別れたそうです。
 その後何年かして,またそのお婆さんに会われたのだそうです。「この頃,足はどうですか」とご老師さんは尋ねられました。すると,お婆さんはニコニコしながら答えられました。「本当にこの足はいい足です。毎日感謝しているのです。しもやけはあれから全く出ません。お医者さんも不思議がっておられます。とても良い足です」と語り,次のような話をしてくれたそうです。
 「冬が近づいたある日,今年もしもやけで苦労するなあ。困った悪い足だなあと自分の足を眺めていました。その時,気づいたのです。そうだ,一日中この体を支えてくれているこの足に,今まで感謝したことはあったのだろうか。生まれて,1歳に歩けるようになってから,毎日歩けるのは当たり前だと思ってお婆さんになった今日まで来ました。でも,自分の人生の中で,この足をいたわったことがあったのだろうか。耳には,よい音楽や嬉しいお話をたくさん聞かせてきた。目には,きれいな景色や映画を見せてきた。口には美味しいごちそうを食べさせてきた。でも,この重い体を支え,文句一つ言わないでどこへでも運んでくれているこの足に,本当に感謝してきただろうか。感謝してこなかった,ということに気付いたのです。
 それからは,一日の終わりに,今日も支え体を運んでくれてご苦労様,ありがとうと感謝して足をいたわっています。マッサージしたり,風呂の後にはクリームを塗ったり,指の間もよく揉んだりして,ありがとうありがとうと大事にしているのです。すると不思議なことに,その冬から全くしもやけが出なくなったのです。お医者様も,あのひどいしもやけがどうして治ったのだろうと首をかしげているのです」
 「それは良いことに気付かれたのですね。よかったですね。とても良いお話を聞かせていただき,ありがとうございました」とご老師さんは温かい気持ちで別れたのだということでした。

 翔鸞幼稚園では,感動できる心・感謝できる心を,本物体験を最重点の柱に据えて育てています。
・自然の土や水や草や木に触れて遊び,虫や動物に触れたり飼育し,野菜・果物を種から育て収穫して味わいます。その活動の中で夢中に遊び,夢中の中で出てくる本当の自分の本音で,それらの自然と向き合うのです。素直に感じる本音の自分を,大事に誇りに思うようになるのです。
・本物同士の人との関わりの中で自分を磨いていく保育。遊べる環境を設定して保育を行います。夢中になって子どもは遊び込み,本音を出します。その本物本音で相手と向き合います。相手も本物本音です。本物本音同士の関わりの中で,ぶつかり合い喜び合い心を通わせていきます。自分を見つめる力,自分を調整する力,相手の気持ちを感じ関わる力を身につけていきます。感動できる人は感謝できる人です。感謝できる人は感動できる人です。自尊感情や自己有用感を高めていく人です。

 自画自賛になりますが,翔鸞幼稚園の子ども達の感動する姿が見られたエピソードを一つご紹介します。
 年長組が京都水族館に行った時のことです。「おはようございます」とみんなで受付のお姉さんに挨拶をしました。
 中へ入った途端,「ワー」大きな歓声が子どもたちみんなから出ました。私たち引率の先生は,「何,何」「何の歓声?」「先生,見て見て。ここに大きな魚がいる!」「先生,足がある!」「先生,足が大きい」「動いている?」「オオサンショウウオだって」入ってすぐ右手にある加茂川の生き物(魚)水槽のところで足が釘付けです。一人一人が,自分の見つけたことを,感動した大きな声で先生に報告するのです。その声の大きいこと。「わかったよ。もっと静かに」と子ども達の声を抑えることに,先生方は気を遣い始めました。
 子どもたちが次へ行かないので,「次へ行きます」と先生が言いました。入り口から真直ぐ突き当たり正面の,大きな天井まである水槽が次の水槽でした。「ワー」また子どもたちの大歓声です。「先生見て」「先生こちらへ来て」「先生,天井の方,キラキラしている魚・・」一人一人が興奮しています。叫んでいます。「貸切ではありませんよ」先生も叫びそうになりました。どこへ行ってもこんな調子です。声が嗄れてきた子どもも一人や二人ではありません。
 翔鸞幼稚園の年長組さんが興奮して動き回り,感動して叫んでいる横を,よその幼稚園の子どもたちやよその保育園の子どもたちが,通っていきました。興奮している翔鸞の子ども達を横目で見て,次に水槽を見て2列の列を崩さないまま静かに追い抜いていきました。
 あんな風に静かにしてほしい,と引率の先生方はみんな,その時はそう思いました。しかし,帰ってからよく考えてみると,これでいいのだと先生方は思うようになりました。子ども達はみんなが,心豊かに育っている証拠を見せてくれたのだと思えたからです。
 
 ここまで長い文章を読んでいただきました。誠にありがとうございました。ここまで読んでいただけた方は,読まない前よりも,何かしら自分自身が進化しています。ここまでの文章に何かを感じ,自分の感想や意見を持ったからです。そうでないと,最後までは読んでいないからです。それは学んでいることになるのです。ぜひ,また一緒に語り合いましょう。ありがとうございました。
 いつでも見学にお越しください。お待ちしています。翔鸞(しょうらん)幼稚園461−3642へ

(改訂版)「加点法主義」をもう一度見直したいです

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 「加点法主義」と「減点法主義」 どんな主義なのですか? どんな物の見方をするのですか? 子どもの成長にとってだけではなく自分自身の成長にとっても是非とも見直してみたいことです。
 2010年6月13日 日本の小惑星探査機「はやぶさ」が7年かけて地球に戻ってきました。日本中に世界中に勇気と感動と元気をあたえてくれました。世界で最初に長さ約600mで幅約300mの小惑星「イトカワ」から砂を持ちかえった探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーだったのが川口淳一郎先生です。先生は「あれできない,これできない」ではなくて,「ああすればできる,こうすればできる」という加点法の発想を大切にしてプロジェクトチームをまとめ成功に導きました。
 先生によると,減点法と加点法の一番の違いは,失敗をカウントするか成功をカウントするかということだそうです。失敗がカウントされるなら失敗を減らすように,成功をカウントするなら成功を増やそうと努めるようになります。また,100点が上限の評価法ではそれ以上の努力は無駄と考えるようになるのだそうです。減点法では「ローリスク・ローリターン」の手堅いプロジェクトしか出てこない傾向があるのに対して,加点法では「ハイリスク・ハイリターン」ですが世界初の新しい技術をいくつも組み合せているプロジェクトが出てきて,それが「はやぶさ」に乗せられていたのだそうです。チームは「こうすればできる」という発想の人ばかりでした。ということを雑誌の対談で語っておられます。加点法の考え方での実践が,世界一の探査機を開発し見事に世界一の成功にまで導いたものでした。
「はやぶさ1」の成功を受けて,2014年12月3日「はやぶさ2」が種子島宇宙センターから打ち上げられました。打ち上げは成功し,2018年6月頃に1999JU3という小惑星直径約920mに到着して土を採収する仕事をするのだそうです。金星と地球の間と地球と火星の間とを楕円軌道している小惑星です。地球帰還は2020年秋だそうです。地球の重力を利用して飛行するので遠回りとなり地球とは約3億kmの距離離れていることになるということです。全飛行距離をネットで調べてみると何と約52億kmとありました。地球から月までは約38万km,地球から太陽までは約1億5000万kmです。地球から火星まででも平均して7800万kmですから,いかに遠い距離を飛行するかということです。光のスピードは1秒間に約30万km地球7周半と言われます。3億kmとか52億kmとかいうと光のスピードでも16分とか4時間30分とかいう距離です。
この「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャーが圀中均先生です。圀中先生は「はやぶさ1」ではやぶさを最後まで動かしていたイオンエンジンの開発リーダーをされていた先生です。この先生の下でのプロジェクトですから,今回も川口先生の言われている加点法主義を引き継がれてきっと成功してくれるだろうと願っています。
 前段のエピソードが長くなりましたが,加点法主義の2つ目のエピソードです。私たちの毎日の言葉に注目してみましょう。
 ごく日常の生活の私事で,こんなことがありました。小学校高学年の時に近所のおばあさんに誉められたことを数十年も経っている今でも思い出し,私の人生で大きな支えとなってくれてきたということを思い返すことがよくあります。
 薄暗くなってきていたある日の夕方,荷物を背負って父と山仕事から帰って来た時に近所のおばあさんの家の前を通りかかりました。外で片付け物をしていたおばあさんが,「こんなに暗くなるまでよく働くねえ,がんばるね,本当にえらいなあ」と褒めてくれたのです。当時は子どもも働き手の一人で誰でも家の仕事をしていましたが,「そう言われてみればこの頃は暗くなるまでよく働いているなあ」と子ども心に納得し,そこのところを見て褒めてくれたおばあさんの一言をとてもうれしく思いました。その褒め言葉は,自分は頑張れるのだ,がんばっているのだという自分の自信に繋がっていったのです。
 この2つのエピソードは,私たちにとって教育や子育てのヒントを教えてくれます。どちらにも共通するのは加点法でのあり方や声の掛け方だということです。完璧の100点満点から,一つ失敗したから1点減点して99点,二つだから2点減点で98点・・という減点法ではなくて,「できないのではなくて,どうしたらできるだろう」「よくがんばっているね」は,否定ではなくて肯定するというまさに加点法です。
 子どもの教育についても同じことが言えるのではないでしょうか。真っ白で生まれてきて,つまりゼロからの出発の赤ちゃんの頃です。「ハイハイできるようになった,すごい」「1歩あるけたね,今日は赤飯を炊こうね」「トマトもモグモグ食べたね,えらかった」などは全部加点法です。このままの加点法主義で育てられて進んでいくと,子どもは自信をつけていき自分は頑張れるのだ大事な人なのだという自己肯定感を高め発想力も意欲も豊かに大きくなっていくと思われます。しかし,日本の子育てや教育ではどこの時点からか多くのことが,完璧なことから少しでも外れてマイナスがあると「何でできないの」「さっきから言っているでしょ,どうしてしないの」などと,減点法になっていくのです。減点法は「ここはアカンかった」という否定ですから,いつもそのパターンで対応されていると,言われる子どもはだんだんと嫌になります。ふて腐れてきます。減点法は,自分が否定されているということですから,自己肯定感も低くなり「どうせ僕なんか・・」「どうせ私なんか・・」と意欲も発想力も何もなくなって消極的になっていくのではないでしょうか。
 私たち大人もまだまだ未熟です。だからこそ,その子の良いところをたくさん見つけて言っていきたい,その子の1カ月前より・1週間前より伸びたところや良く変容してきたところを見つけて「ここがすごいな,がんばっているな」と加点法でどんどんと語っていきたいと思います。
 子どもの良さを見つけて言葉に出して言うことができるということは,その良さや変容に少しでも気付き感動できているということです。良さや変容に気付き感動できるということは,すごいなあ,がんばっているなあと少しでも思っているということです。すごいと思えるということは,自分もそうなりたいというあこがれであり,同時に自分もそうしよう,マネしよう,そうなりたいという学びでもあります。肯定的に気付いたり感動したりそれを口に出して言っているということは,言っている人,大人ならその大人自身がその時点で学び着実に成長しているということです。素直で柔軟な心の持ち主と言えます。ですから仮に年齢を重ねていっても進化し続ける人ということができます。
 加点法主義は子どものあらゆる可能性を成長させるだけではなくて,言っている人や言っている大人自身をも成長させているということです。私自身もこのことをもう一度よく考えて味わい,自分を振り返って子どもと共に成長できる大人になっていきたいと思います。
 みなさん,ぜひ加点法主義の良さを見直して,毎日の子育てや自分自身の進化の応援団としていこうではありませんか。
 ここまで大変長い文章を読んでいただきいっしょに考えていただきました。自分を振り返ったり「加点法」を考えたりしたのではないでしょうか。きっとそうだと思います。実は,その時点で,もう以前の自分ではなくなっています。1歩も2歩も自分自身が進化しています。このことは間違いありません。約40年間失敗を重ねながら教育に携わってきた者の言葉です。信じて大丈夫です。文章を読み始めた時点で,すでに学びモードに入っています。「なるほど」「そうかもしれないな」「ここはもっとこう考えられるよ」などと思った時点でもう大変な学びをしているのです。そして,自分の知識や経験と重ねて自分独自の加点法主義を実践に持っていこうとしているのです。そう考えたら1歩も2歩も進化していると言えるのではないですか? 子どもと共に私たち大人も進化成長して参りましょう。年齢に関係ありません。人は進化し続けます。大丈夫です。お互いが笑顔で支え合う社会を作り,一人一人みんなが自分を発揮できるようにしていきましょう。
 ご多用な中でここまで共に学び合っていただきました。本当に感謝いたします。誠にどうもありがとうございました。

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学校行事
3/8 子どもお別れ会
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