京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/05/28
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入園のご相談・見学など、随時OKです。園庭開放は9時30分から15時30分まで毎日行っております!お問い合わせは461−3642までお電話ください! みんなあそびにおいでよ!翔鸞幼稚園に!!

育てている3つの心の力

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  しょうらん幼稚園で身につける「3つの大切な心の力」
 しょうらん(以降は,翔鸞)幼稚園では,園児が「たくましい身体」と「心豊かに」なるように教育を進めています。京都市立幼稚園16園はいつも連携し,どこの園でも重点的にこれらの力を身につけていくよう力を注いでいます。
 今回は「心豊かに」の内容となる「3つの大切な心の力」について,翔鸞幼稚園で実践していることや考えていることをお話していきたいと思います。
この3つの心の力を身につける中で,
 1つは,自分自身と語れる子ども,つまり,自分と会話ができ自問自答できる心の深さと客観性や判断力を持つ人に育てていきます。
 2つは,自分と語れるため,人との人間関係力を本当に大きく伸ばしていきます。
その結果,小学校以降さらに自信を持って自分を高めていき,自分の人生を豊かにしていきます。

 翔鸞幼稚園で身につける3つの心の力ですが,
 1つは,心が豊かな力です。
 2つは,見えないものが見えるようになる心の力です。
 3つは,一番大切なことですが感謝できる心の力です。

 私の母親は昭和2年生まれです。今も田舎で畑に出て健在です。貧乏な山奥の村に生まれ,働きづめで学歴もありません。しかし,若い頃はみんなに推されて婦人会の会長をしたり,村の記念誌に執筆を依頼されて寄稿したりしてきました。文章を読ませてもらうと,自分の経験が深い思いの中で語られ,それが事実や思い,様子などが整理されて構成されている見事な内容です。「なかなか上手に書かれていると思わん?」母親の自慢です。
 その母は,花が大好きで,チューリップやマリーゴールド,グラジオラスや百日草やダリア,鉢のランやシクラメンなど季節の花々を趣味で育て楽しんでいます。私が子どもの頃,よく母が言っていた言葉を思い出します。
 「見てみ(見てごらん),一つ一つ本当にきれいや。ほら,かわいい。こんなに小さくてもちゃんと(しっかりと)咲いている。この花は,黄色い花をがんばって咲かせている。きれいに咲いて,本当にかわいい」こうして,一つ一つの花に語りかけたり手でなでたりして慈しむのです。「お天道様はね(太陽はね),綺麗に花を咲かせているお家が好きなんだよ。花が綺麗に咲いているお家の上を通った時は,お天道様はそこで一休みして,綺麗に咲いているねと言って花を見ていかれるんだよ。お天道様,今日も照ってくださってありがとうございます。どうぞ休んでいってください」花が咲き終わると「綺麗に咲いてくれてありがとう。えらかったです。(がんばったです)今年も本当に綺麗に咲いてくれましたね。来年もまたどうぞお願いします」
 今でも,花に語りかけて世話をして感謝し,太陽に手を合わせて感謝して生活しています。春に帰った時は,赤やピンクや黄色のチューリップが庭に咲きほこっていました。
幼稚園の子どもを見ながら色々と考えていますと,何とも不思議なことですが,この母の言葉や態度の中に,幼稚園で身につけさせたいと思っている3つの心の力を考えることができると思うのです。
 1つ目の,心が豊かな力です。結論を恐れずに先に言うと,感動できる力だと思います。
 花を見て「かわいい」「綺麗に咲いたね」という語りかけなどは,まったく幼児期の子どもにとっては,当たり前のようにおこなっている場面です。しかし,大きくなったり大人になっても,そのような本当の感動を言葉に乗せて表現できる人がどれほどおられるでしょうか? さらに進めて,もっともっと自然や生き物や出会うもの,現象に感動できる人になれるでしょうか? 自分一人ではなかなか困難なことだろうと思うのです。
 やはり教育的な援助が必要だろうと思います。
 もっと感動できる子になってもらうために,先ず,先生や大人や周りの人が,出会う自然や人,出会うことに本当に感動し子どもに語りかけるということです。「今日は本当にむしむしと暑いね。でも,この桜の木の下に来てごらん。スーとした風が吹いてきて涼しいよ。気持ちいい」「育ててきたトマトが日照りでクターとしているね。水を欲しがっている。水をあげようね」感じたことをたくさん語りたいですね。
 次に,子どもが自ら選択して出会った時の感動的な言葉や態度を,認めることが大切です。「ダンゴムシを自分で見つけてね,お父さんお母さん子どもの3人家族なの」「そうか,そんな風に思ったんだ,すごいね。3匹は確かに仲がいいね」と心から認めていくことです。
 このように,子どもを取り巻く感動と,子どもが自由な心の中で自ら見つけた感動を思いっきり認めていくということ,この2つのことが必要だろうと思うのです。
 2つ目の,見えない物が見える心の力です。これも結論から言うと,相手の心に成り切ろうとする力だと思います。気持ちを共感できるということです。
「黄色い花をがんばって咲かせたね。かわいい」 普通に読めば「何だ。当たり前のことで,何が相手の心に?」「がんばったというありきたりの言葉だけじゃあないの?」ともとれるかもしれません。しかし,この花の球根は,現実には,山の冬が5ヶ月以上も氷点下5度も10度も続く寒さの中で,それも雪に覆われた畑の中でじっと辛抱して春を待ち,雪解けと共に力を振り絞って畑の上に芽を出してきた。そして,小さいけれど黄色い花を咲かせている,と考えたらどうでしょうか?「(厳しい冬だったね。乗り切って)がんばって咲かせたね。本当にかわいい」という言葉には,厳しい環境の中で長い時間踏ん張ったね。辛かったね。えらかったね。本当にがんばったね。という球根の気持ちになって共感して出てきた言葉だと考えられます。花としみじみと語っている様子を横で見ていると,花と気持ちが通じ合っていると思えるのです。
 相手の心に成りきろう,共感できる心の力が身につけられるためには,どうしたらよいのでしょうか?
 「そんなことは簡単です」と言われそうです。そうです。好きになることが1番です。好きなら,その心の中まで考えるからです。恋人同士を考えたらよく分かります。相手の心の中を一生懸命に見ようと考えています。
 では,そんなに好きになれない場合はどうしましょうか? 
これも結論から言いますと,見えないところを想像させるということです。見えないけれど「どうなのだろう,どうなっているのだろう」と先生や大人が意識し,子どもとの会話の中で想像させていくことです。また,子どもの感動した言葉に「見えないところのことを感じ取ったから感動したのだよ。どうなっているのかな?・・のはなぜだろう?」と見えないところを想像させることが大切だろうと思います。
 例えば,氷山を見て「おおきいなあ」「何か動物がいるよ」と見えるものにばかりに意識を向けるのではなく,「あの氷の海に沈んでいるところはどうなっているのだろう?」「こんな寒いところで風邪を引かないのかなあ?」と目に見えないところに目を向けさせるのです。「チューリップが真っ赤に咲いたね。花びらが何枚かな?数えてみましょう」と目に見えるところばかりを意識させるのではなくて,「夜になると花はどうなるのだろうね?開いたままなのかなあ?」「チューリップさんは,土の中ではどんな風になっているのだろうね?」「秋にみんなで植えたよね。冬の間,どうしていたのだろう?何を考えていたのだろうね?」などと見えないところをいつも意識して,語りかけるということが大切だろうと思います。答えは簡単に言わない方が,子どもに問題意識を持たせられると思います。
 国語では行間を読むと言います。文字の底に流れている様子や心,言葉の裏に隠れている気持ちなどを豊かに想像することが国語の学習では大切です。「見えないものや見えないことを見えるようにする」ということは,教育の大きな役割ですし,教育そのものだろうと思います。
 3つ目の,感謝できる心の力です。3つの中で1番大切だと思います。実はすでにお話ししてきた2つの心の力と重なっているのです。上の2つの力を身につけていく途中であれば、この感謝できるということはできると思っています。
感謝するということは,「あなたのおかげさまです。おかげさまで今生きています。教えてもらっています。育ててもらっています」など,相手の存在や働きかけを温かく肯定的に捉えて,それを自分に返してもらっていると感じられた時,「あなたのおかげさまです。わたしはこのようにプラスとなっています。ありがとうございます」ということです。
 「綺麗に咲いてくれて(私を楽しませてくれて,癒してくれて)ありがとうございます」「お天道様,照ってくれて(お陰さまでチューリップも芽を出せました。冬の寒さを終えて春を迎えられました)ありがとうございます。どうぞ,綺麗に咲かせていただいたチューリップを見ていってください。家の庭で一休みしていってください」という気持ちでチューリップや太陽に感謝をしているのです。
 私は若い頃,山へよく登っていました。ある野宿をした日のことです。朝の3時ぐらいから寒くて寒くてガタガタ震えて眠るどころではありません。日の出まで何と長いのでしょうか。時計ばかり見ていますが,1分や5分の経つのが長いこと長いこと。
まだかな,まだかな? 永遠に続くのかなあと。そして,山の端から太陽が顔を見せました。光が何条にもなって降り注ぎました。見る見る光に包まれました。その時,温かさがテントと私とを包みました。思わず太陽を見て合掌し,「ありがとうございます。温かい。助かりました。助けてもらいました」と感謝したことがあります。雪のない時でさえこんな感じなのです。雪山だったらどんなだろうと思います。
 大相撲が少し人気を取り戻してきたそうです。相撲道というのだそうです。礼に始まって礼で終わるのです。心の中で「お願いします」と相手を尊重してお辞儀をします。戦い,勝ち負けが決まります。勝っても負けても,「ヤッター,勝ったー」「悔しい,残念」などと気持ちをむき出しには出しません。心の中では勝って嬉しいし,負けて悔しいのです。でも,何事も変わらなかったかのように,心の中で「ありがとうございました」と相手にお辞儀をします。あなたが相手をしてくれたから正々堂々と戦えました。ありがとうございました。そういうことなのです。買った負けた,お金になったならなかったの,もっとはるか先にまで道は続いているのです。だから相撲道なのです。日本の伝統的なものは,道という言葉がついていなくても,この道の精神があると思います。
 出会うものや出会うことは,私に色々なことを教えてくれている,心を癒してくれている,というものの見方をしていく,簡単に言うと生かされている自分のこの命ということを自覚していくことです。この大人の思いや言葉で,子どももそうなっていくのでしょう。
 以上,3つの心の力について皆さまと一緒に考えてきました。子どもが自分の人生を豊かにしていけるために,また私自身がもっと豊かな人生を歩むために,この老母の生き様を見習っていきたいと思っているところです。
 翔鸞幼稚園では,京都市立幼稚園はみんなそうですが,心ばかりを進めてはいません。形から入らなければならないことも多いです。「狭い歩道は一列で歩きます。車の通行の邪魔になり危ないからです」「市バスや電車にはサッサと乗り,中では静かにします。他のお客さんも乗っているからです」「先生や誰かが話をしている時は口を閉じます。そして聞きます」しなけれならないことは,何度も何度も丁寧に話したり振り返らせたり,そのあとフォローしたりして身につけさせるようにしています。
 今回も最後まで一緒に読んでいただき,そして最後まで一緒に考えていただきました。誠にありがとうございました。こころより御礼申し上げます。
 次回は,自分の心と会話ができる子を育てるについて,一緒に勉強していきたいと思います。

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