学校訪問
- 公開日
- 2011/08/20
- 更新日
- 2011/08/20
校長室から
堀川には,多くの方が見学や視察に来られます。多くの場合,副校長と教頭が対応していますが,進路部長や図書館司書や各教科の担当者に頼むこともあります。時々は私もお会いします。
来られた方とお話しすると,居ながらにして各地の様子が垣間見えます。それで「○○県の教育は」などというのは乱暴ですが,全国の様子を少しは知ることができて,とても参考になります。また,お話しする際には,自分たちの動きを対象化しなければなりませんから,普段よりも客観的に堀川を見ることができて,こちらの取り組みを紹介している最中に,それまで気づいていなかった課題を見つけたりすることがあります。堀川に来られた方が何かを得られるとしたら,実は堀川がもっと学んでいます。
さて,文部科学省担当の財務省主計官の訪問を受けたことがあります。学校教育関連予算に直接関与しているような錯覚に陥って,冷静を装いつつ必死に応答しました。
「一人の先生の授業は週に何時間ですか?」
「京都市の高校では18時間までとなっています」
「子どもたちが好きで,教育に情熱があって教員になった人が,週40時間のうち18時間しか授業をもたないのは少ないですね」
「授業には準備が必要ですし,教員は授業だけでなく他の仕事もしています」
「教員を増やすだけでなく,事務職員を増やして教員のいわば雑用を減らすということを文科省は言うんですが,そんなに雑用が多いんですか?」
「必ずしも雑用という言葉でひとくくりにできるものではありません。担任の仕事であるとか,教科の仕事であるとか,学校経営に関わる仕事もやっています」
「そういった仕事をすべての教員がしているのですか?」
「一人がすべてをするわけでなく分担をしています」
「その部分に工夫が必要ではないでしょうか。授業をいっぱい持つ人と校務に専念する人とに分けるとか。本当に必要な予算をつけるのは国の責任ですが,すべて税金ですから,無駄な使い方はできません」
「課題はいろいろあり,確かに工夫が求められます。逃げるわけではありませんが,一方で,学校の役割と家庭や社会の役割を見直すことも必要です。そういった全体の枠組みを構築する中で,学校の変革についても進める必要があると思います」
あとで文部科学省の知り合いに聞くと,この主計官は精力的にあちらこちらを訪問して学び,財政面から教育を支えようという姿勢をもっている方だということでした。笑顔を絶やさず,しかしものすごい速さで矢を放つ主計官に対して,ナベブタの盾で応戦するのは骨が折れました。自分は何かを守ろうとしている,しかし,いったい何を守ろうとしているのか,ということを思いました。
中国の西安市は京都市の姉妹都市の一つです。西安市と近郊の市の教育長さんたちが来られました。教室にご案内したときに,国語の授業で漢詩をやっていました。担当の教員が,読んでいただけないかと頼んだら,生徒たちの前で朗々と詠じてくださいました。押韻が理解できたというのを通り越して,心は西域に飛び,詩が音楽であることを体感しました。
そのあと会議室で応対していた際のことです。あなたは若そうだが退職まで何年あるかと尋ねられました。年数を答えると,「ほう,随分ある。すると教頭が校長になろうとしたらどうするのか」とのご質問。くだけた雰囲気で話が進んでいましたので,「それはクーデターを起こすしかありませんね」と答えました。中国語の通訳の方が笑いながら伝えると,教育長さんたちは真顔でうなずいていらっしゃいます。その様子にこちらがびっくりしました。「いやそれは教育委員会が決めることです」とあわてて言ったら,みなさんたっぷりの笑み。当然でしょうが,相手が上手でした。
アメリカ合衆国教育省のトニー・ミラー副長官が来られたこともあります。元文部事務次官の佐藤禎一氏が堀川のご卒業で,実にいろいろとお世話になっています。東京の会議でお会いした際に,「ミラーさんが高校を訪問したいということなので,母校にぜひと言っておきました。よろしくお願いします」と頼まれました。
奥様とご子息と随行員の6人で,ふらっと寄ったという感じで来られました。アトリウムで生徒たちにご挨拶いただきました。そのあと会議室で10数名の生徒たちとも話し合ってくださいました。重職にある方とは思えないフランクな対応でした。それにしても,生徒の英語は見事。私は必死。英語の教員に通訳を頼んでいましたが,私の日本語がまだるっこしいものですから,なかなか英訳しにくい。加えて私が口を挟むから余計にややこしい。それでもミラー副長官は真剣に聴き,話してくださいました。事情は異なっても教育課題はどこもよく似ている,というのは早計ですが,そのように感じました。
四条烏丸の稲盛財団に行かれるので,車を呼びましょうと言ったら,近いから歩いていくとのこと。玄関で見送る私たちに,何度も振り返って手を振っておられました。
堀川にいて幸いなことの一つは,様々な方にお会いできることです。高校だけでなく,小中学校,大学,企業,教育委員会,議会等の関係者や,ご紹介したように中央省庁や国外の方もいらっしゃいます。
お会いした方の多くから感じるのは,気さくで真面目で意欲的で行動的であるということ。そして,責任感の強さ。さらには,閉ざさず開いているという姿勢。
夏の学校閉鎖は今日まで。明日からまた生徒がやってきます。文化祭の準備も大詰めを迎えます。
2011.08.16 …… 荒瀬克己