どうぞよいお年を
- 公開日
- 2011/12/26
- 更新日
- 2011/12/26
校長室から
今回は週刊月曜日になりました。
年の瀬。雪が舞う,底冷えの。
いろいろなことを考えることになった,この年が行こうとしています。
こんなことをやった,こんなことができた,と言えればよいのですが,残念なことに,そうではない1年が過ぎようとしています。
講演会が続きました。12月17日には宇宙船地球号の山本敏晴さん。12月21日にはJAXAの白石紀子さん。写真や生徒の感想は,HPの「学校の様子」でご覧ください。
山本さんのお話でもっとも興味深かったのは,アフリカで医師(看護師)を育てるということ。自分がそこにいなければどうにもならないというのでは,本当の国際協力にはならない。次につなぐという強い意志に,雷に打たれたような衝撃を受けました。
白石さんのお話では,H-IIBロケットチームの150人に,1人たりとも必要のない人はいないということ。一緒に取り組むだれもが役割をもっている。そんなあたりまえで大切なことを忘れかけていたかもしれない,という思いになり,ちょっと慌てました。
さらには,H-IIAロケット6号機のこと。白石さんが初めて発射指揮のアシスタントをした6号機は,発射後に固体ロケットが分離せず,危機回避のため指令により破壊されました。徹底した原因究明。設計変更と全体計画の見直し。そして製造された7号機。
スタッフは,この7号機をRTF1号機と呼んだそうです。リターン・トゥ・フライト。失敗を乗り越えて,再び飛ばしたい。実用可能な,信頼性の高いロケットを開発する。それが実現されて,H-IIAロケットプロジェクトは解散し,民間移管へ。
「さびしかったけど,『もう開発の必要がない。運用が始まるんだ』と思いました」
最近の生徒との会話から。
進路の話をいろいろとしていて,
「先生は,十八歳のときに教師になろうと思ってたんですか?」
「いや,思ってはいなかった。単純な発想だけど,法学部に行って法曹になろうと思ってた。でも,入れなかったから,あきらめてしまったんやね,結局」
「いま十八歳に戻ったとしたら,やっぱり法学部を受けますか?」
「え? うーん,いや,受けないと思う。いまなら,哲学をやってみたいと思う。あれ,さっき君,哲学って言ってたよね」
哲学をしたいと思う十八歳。「君,本当にするのか」と思いながら,少しうらやましく感じました。
<探究>で『宮澤賢治の詩におけるローマ字表記の意味』という論文を書いた生徒。
「君は賢治の詩でどういったところが好き?」
「あの,『春と修羅』で,本当におれが見えるのか,というところが」
「君もそうか。あそこはいいね。小澤俊郎という,筑摩の校本賢治全集の編集をした先生から,賢治の詩はよくわからないけど,わかる所だけを読んでも,とってもいいんだと言われたことがある。気が楽になりましたよ。そうか,全部わからなくっていいんだって」
……
草地の黄金をすぎてくるもの
ことなくひとのかたちのもの
けらをまとひおれを見るその農夫
ほんたうにおれが見えるのか
まばゆい気圏の海のそこに
(かなしみは青々ふかく)
ZYPRESSEN しづかにゆすれ
鳥はまた青ぞらを截る
(まことのことばはここになく
修羅のなみだはつちにふる)
……
放送部の女子生徒四人が,昨日の日曜日にあった全国高校駅伝大会の開会式と閉会式の司会をしました。今日の毎日新聞に大きく紹介されて,きれいに並んで澄まし顔。
開会式では,「名前を間違えないのはもちろん,選手たちが『がんばろう』と気合が入るような声で読み上げたいと思います」。
閉会式では,「おめでとうという思いを込めて,笑顔で務めます」。
男子の最後に帰還したコザ高校の最終走者に,スタンドから大きな拍手。
結果は揺るぎない事実。されど,走り切ったすべての選手たちが当然受けるべきものは,あたたかい声援と心からの賞賛。
明日はまた東京です。中教審の高等学校教育部会。雪が少し心配ですが。
今年もまた,さまざまな方々から,そして生徒から,力をもらいました。
新しい年を,希望を失うことなく迎えたいと思います。
みなさん,どうぞよいお年を。
34号(2011.12.26)……荒瀬克己