【校長室】6月の終わりに
- 公開日
- 2025/07/01
- 更新日
- 2025/08/09
校長室から
6月が終わる。
中間考査は終わり、球技大会も幕を閉じた。
試験に向けて机に向かった日々と、体育館でボールを追いかけた時間。
流れゆく時の中に、確かな足跡が残された。
球技大会の日、かたおかアリーナ京都には朝から緊張感と高揚感があった。ラインの内と外。サーブ一つで空気が変わる。仲間の声、スパイクの音、崩れかけたラリーを拾う足の動き。得点時の歓声と取りこぼした後のため息。それらが交互に押し寄せては、静かに遠ざかっていった。
試合や閉会式の様子をドローンが記録した。
天井付近に浮かぶ小さな機体は、声を出さず、手を差し伸べず、ただ見ていた。だが、その眼は見逃してはいない。仲間の失敗を責めずにかばう後ろ姿。試合に出られずとも声を張る者。ベンチで黙って作戦を練る手。数字や勝敗に表れない真実が、そこにはあった。目立たぬ行動が、誰かの記憶にだけ残る。
令和3年夏の東京五輪を想い出す。
灼熱の国立競技場。陸上競技の競技役員を務めていた。COVID-19(新型コロナウイルス)の影響で、観客はいない。静寂の大スタジアム。トップアスリートたちが命を削るように走り、跳び、投げる。勝者と敗者の僅かな差は、眼には見えない。0.01秒。1センチ。あと一歩。
彼らは知っている。栄光は、積み重ねの果てにしか現れないということを。強い光りを放つのは、一瞬。そのために、何年にも及ぶ膨大な時間を費やす。
堀川高校の球技大会を振り返る。
声を枯らした者がいる。膝に手をついて立ち上がれなかった者がいる。それでも皆、最後には前を向いていた。やり切った表情で、閉会式を迎えた。積み重ねの先には、勝ち負けではない何かがあった。
7月に入る。
空の色が変わり、風が止まる季節である。
強烈な陽射し、立ち眩みのしそうなほどの陽炎。この季節にしか掴めないものがある。
必死になること、一生懸命になること。無駄と思えることにも手を伸ばす。
意味など、あとからついてくる。失敗なんか、ない。
未来は意外と近くにある。
今という時間の積み重ねの先に、一瞬の光芒が待っている。
さあ、夏に向かうぞ。
船越 康平