校長からの話〜人権啓発懇談会で〜
- 公開日
- 2010/02/19
- 更新日
- 2010/02/19
校長室から
1月のことですから,少し時間が経ってしまいましたが,人権啓発懇談会で,参加された保護者の方に,放送を通してお話したことを伝えておきたいと思います。
この日は参加人数が少なかったことがとても残念でした。2月の懇談会にはぜひ多数の方に参加して頂きたいと思っています。
校長からの話〜人権問題を考えるために〜
「人権の問題」について,私たち一人一人のこと,子どもたち一人一人にかかわることであるという前向きな気持ちでお話し合いをして頂けるよう,いくつかのポイントを述べたいと思います。
<表面に表れたことだけでは判断しない>
一つ目です。私自身も含めてのことですが,私たちは,何かの出来事や問題に出合った時,どうしてもそこに見えていることだけで判断しがちです。外見や外面だけで決め付けてしまうことが多いのではないでしょうか。しかし例えば,今,一人の子どもの言動に問題があった時,私たちは,その子の問題点だけを取り上げるのではなくて,「なぜその子はそうした言動をするのだろう。」「その原因は何だろう。」「子どものくらしの背景に何があるのだろう。」などと考えます。学校でも家庭でも,そして地域でもそうありたいものです。
もちろん,その子のふるまいが正しくない場合,当然厳しく叱らねばなりませんし,指導しなければならないのです。妥協する必要はありません。問題がなかったことにするのではない。それはそうなのですが,同時に,私たちは,問題の奥に何があるのか深く探ろうとする姿勢を大切にしようとします。
振り返ってみますと,日常のくらしの中でも「私がこうしたのには,こういう事情がある。どうして分かってもらえないのでしょう。」と嘆く自分がそこにいる場合がありますね。人権の問題を考えるポイントの一つは,「問題の背景を探ろうとする。」ことです。「子どもを見る眼」「人を見る眼」そして「社会を見る眼」とは何なのか,一緒に考えてみたいと思います。
<誤解や偏見を生まないために正しい事実を知ることが大切>
二つ目のポイントです。もう二十数年前のことです。担任していた6年生の社会科の授業で,「なぜ社会には,さまざまな差別が残っているのか。」という学習問題について,話し合いを進めていました。それまで歴史で学んだことなどをもとに話し合うのですが,これはなかなか難しい問題です。差別の種類によって異なる条件もあることでしょう。その時に,一人の女の子が「それは,大人から子どもへ,親から子へと,間違った知識が伝わるからです。」と発言しました。これは,今考えても,核心を突いた非常に重い発言であったと思います。私は担任でしたから,その発言が,その子の家庭の様子やくらしに根ざしたものであることが分かっていました。決して物分かりよく上手に述べているのではない。つまり,「誤った知識は,誤解や偏見を生んでしまい,それが積み重なって差別に繋がる。」ことを十二歳の子どもが見抜いている訳です。その発言をきっかけに,その後,学級の子どもたちは「差別と人権」について考えを深める話し合いを繰り広げて行きました。
子どもたちは日々学んでいます。私たち大人もまた学ばねばなりません。正しいことを知る努力を続けることによって,子どもたちと一緒に,私たち自身もまた豊かな心を育てることになるのではないでしょうか。まず,子どもたちが学校でどんなことを学んでいるかを知ってください。今日の授業参観で子どもたちはどんなことを学んだでしょうか。授業を通して学ぶ子どもの姿から,皆さんは何を感じられたでしょうか。ぜひ話し合ってみてください。
また,このように考えると,一人一人の子どもたちに『確かな学力』を育てることが,如何に大切なことかが分かってきます。「人権を大切にする。」「温もりのある人間関係を築く。」「豊かな心で生きる。」その土台にあるのが『確かな学力』だということもできるでしょう。
<「一人のこと」は「みんなのこと」へ〜すべての人にとって豊かな社会を〜>
最後に三つ目です。『ユニバーサルデザイン』という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。「できるだけ世の中の多くの人が利用可能であるようなデザインにすること」が基本コンセプトになっている言葉です。例えば,ある製品が,身体の不自由な方,障害がある方には使いにくいので,改良を加えたとします。するとその結果,その製品が,お年寄りや子ども,世の中のたくさんの人にとって,極めて使いやすいものになったということがあります。社会全体に還元する取組であったという訳です。
この事例のように,最初は,差別を受けている人,社会的に不利益を被っている人のために,一緒になって考え,何らかの手だてをうつことであっても,その結果が,社会全体を構成する一人一人に返ってくるのです。小学校や中学校など義務教育課程の子どもすべてに,教科書が無償で配られるのも,こうした流れで実現したものです。こうして「一人のこと」が「みんなのこと」になっていく。教室でさまざまな理由によって困っている子のことを考え,必要な手だてをうつことが,学級のすべての子どもにとっても活きること,有効なことになれば良いと思いながら,私たちは実践を続けています。