学校日記

Global CitizenshipⅡ~「アプリ設計」第3回:“たったひとり”からアプリの核をつくる~

公開日
2026/07/28
更新日
2026/07/28

学校の様子

 こんにちは、GC教育部です♪


 2年生の総合的な探究の時間「Global CitizenshipⅡ」のアプリ開発探究コースでは、「アプリ設計」の単元に取り組んでいます。


 前回の授業では、生成AIであるGemini、授業内では「むらこまレッド」と呼んでいる壁打ち相手を活用しながら、自分が関心をもっている不自由さや自由さ、それが誰に関係するものなのか、アプリによってどのような変化を起こしたいのかを考えていきました。


 今回のテーマは、「“たったひとり”からアプリの核をつくる」です。


 アプリを考えるとき、「高校生のためのアプリ」「観光客のためのアプリ」「保育士のためのアプリ」「高齢者のためのアプリ」というように、対象を広く考えることがあります。もちろん、それも大切な出発点です。しかし、それだけでは、どのような画面や機能が必要なのかは、まだはっきりしません。


 そこで今回の授業では、アプリが支えたい「たったひとり」を深く見つめることから始めました。


 「たったひとり」を考えることは、視野を狭くすることではありません。その人の生活や困りごとを深く見ることで、問題の構造が見えてきます。たとえば、「高校生。勉強が苦手。集中できない」という説明だけでは、必要なアプリはなかなか見えてきません。


 しかし、「部活後に疲れて帰宅し、夕食後に机に向かおうとするが、スマホを開くとSNSを見続けてしまい、“今日もできなかった”と自己嫌悪になる高校2年生」と考えると、必要な支援が少し具体的になります。


 この場合、必要なのは単に「勉強時間を増やすアプリ」ではないかもしれません。「最初の5分を始める」「スマホから離れるきっかけを作る」「小さな達成感を記録する」「自己嫌悪ではなく、次の日につなげる」といった設計が必要になるかもしれません。


 授業では、こうした考え方を理解するために、いくつかの有名な事例も確認しました。


 たとえば、OXO Good Gripsは、創業者が関節炎のために普通のピーラーを使いにくそうにしている妻の姿を見たことが出発点になったとされています。一人の使いにくさを深く見ることで、高齢者、手の力が弱い人、子ども、料理初心者など、多くの人にとって使いやすい道具へと広がっていきました。


 また、子ども用の歯ブラシの事例では、「子ども用だから小さくすればよい」という作り手の思い込みではなく、実際に子どもがどのように使うのかを見ることの大切さを学びました。子どもにとって大切だったのは、単に小さいことではなく、「握りやすいこと」でした。


 さらに、カーブカット効果についても考えました。歩道と車道の段差をなくすスロープは、もともと車いすを使う人の移動を支えるためのものですが、ベビーカーを押す人、スーツケースを持つ人、荷物を運ぶ人など、さまざまな人の自由も広げることにつながりました。


 これらの事例に共通しているのは、最初から「みんなに便利なもの」をぼんやり目指したのではなく、「この人が、この場面で困っている」という具体的な一人から出発していることです。


 その後、生徒たちは、自分のアプリが支えたい「たったひとり」をペルソナとして描き出していきました。


 ここでいうペルソナとは、単なるプロフィールではありません。名前や年齢、立場を書くことが目的なのではなく、その人がどのような生活をしていて、どの場面で困っていて、何があれば少し自由になるのかを考えるための人物像です。いわば、アプリの主人公であり、設計の出発点です。


 生徒たちは、名前・年齢・立場、家族構成や住んでいる場所、好きなことや苦手なこと、性格、普段の生活、困りごとが起こる場面、本当はどうなりたいのかなどを考えながら、ペルソナの原案を作成しました。


 活動の中では、「高校生向け、というだけでは広すぎることが分かった」「その人の一日を考えると、どこで困っているのかが見えやすくなった」「自分が作りたいアプリは、機能より先に相手の生活を考える必要があると感じた」といった気づきも見られました。


 その後、生徒たちは、作成したペルソナをもとに、Geminiの「むらこまグリーン」と対話しました。


 前回使った「むらこまレッド」がアプリの方向性を考える壁打ち相手だったのに対して、今回の「むらこまグリーン」は、ペルソナや根拠をさらに深めるための対話相手です。生徒たちは、前回までに考えてきた「自分が関心をもっている不自由さ/自由さ」「それは誰に関係するものなのか」「どのような場面で困っているのか」「アプリによってどのような変化を起こしたいのか」などを入力しながら、ペルソナをより具体的にしていきました。


 ここでも大切なのは、AIに正解を出してもらうことではありません。むらこまグリーンとの対話を通して、自分のペルソナに不足している情報は何か、どの場面をもっと具体的にすればよいのか、どのような根拠を調べる必要があるのかを見つけていきます。


 さらに今回の授業では、ペルソナをつくって終わるのではなく、アプリを支える根拠を探すことにも取り組みました。


 「この人はきっと困っているはずだ」という想像だけでは、アプリ設計の根拠としてはまだ十分ではありません。ペルソナはゴールではなく、仮説の出発点です。その仮説を確かめるために、論文や資料を調べ、その不自由さが本当にどのような背景をもっているのか、どのような支援が有効だと考えられているのかを探っていく必要があります。


 そのため、生徒たちはRefNaviを使い、関心のあるテーマに関連する論文を探し、登録する活動にも取り組みました。アプリをつくるためには、思いつきだけでなく、根拠に基づいて考えることが大切です。


 今回の授業は、「誰のためのアプリなのか」を、より深く、より具体的に考える時間となりました。


 便利そうな機能をたくさん並べるだけでは、その人の自由は広がらないかもしれません。大切なのは、たったひとりの生活を具体的に思い描き、その人がどの場面で立ち止まり、何があれば少し動き出せるのかを考えることです。


 “たったひとり”を深く見ることは、結果として、似た状況にいる他の人の自由を広げることにもつながっていきます。


 次回以降は、今回深めたペルソナや調べた根拠をもとに、アプリの機能や画面の設計へと進んでいきます。