学校日記

【卒業生】卒業式式辞

公開日
2025/03/14
更新日
2025/03/14

校長室から

円峰の木々が瑞々しさをたたえ、蟹ケ坂から仰ぎ見るこの学び舎に彩(いろどり)を与えてくれる頃となりました。
 今日、ご来賓としてPTA会長様をはじめ、ご来賓の皆様、そして多くの保護者の皆様のご臨席を賜り、第37回京都市立西賀茂中学校卒業証書授与式をここに挙行することができますこと、心よりお慶び申し上げますと共に、ご臨席の皆様に教職員一同厚く御礼申し上げます。
 卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。191名の卒業生が巣立っていくことに、心からのお祝いの気持ちとと共に、正直寂しい気持ちでいっぱいです。
 皆さんとの出会いは、昨年4月、グラウンドでの着任式、そして始業式でした。私も初めて西賀茂中学校の皆さんと顔を合わせ、新たに来られた教職員の一人として、これから始まる生活に大きな期待と、少し不安がありました。その不安を吹き飛ばしてくれたのが3年生でした。着任式での歓迎の言葉を聞き、「これからこの学校で頑張っていこう」と誓ったこと、そして、始業式で述べてくれた在校生へのメッセージに、西中生の心意気を感じたことを今も覚えています。ちなみに、始業式の時、私が皆さんにお話しした内容を覚えていますか?
 西賀茂中学校生活をより良いものにしていくために、三つのことを伝えました。
 一つ目、困ったことがあれば、必ず相談してください。そのとき、具体的に説明してもらえると、助けられることがはっきりしてきます。うまく説明ができないときにも、慌てずゆっくり話してみてください。
 二つ目、「なりたい自分」を一緒に探しましょう。夢や目標がある人もいれば、まだこれから探す人もいるでしょう。大切なのは、いろいろな学びを得たり、経験を積んだりする中で、自分を知ろうとすることです。「なりたい自分」を知るために、一緒に歩んでいきましょう。
 三つ目、誰かに何かを助けてもらったら、感謝の言葉「ありがとう」を伝えましょう。人と人とのつながりが、様々な場面で自分のことを支えてくれます。そして、人と人とのつながりは、「ありがとう」の言葉から生まれます。
 私から見て、卒業生の皆さんはこの1年を通して、この三つのことをしっかり実践してくれました。そして、この学び舎の中で、様々な「つながり」を生み出してくれました。
 修学旅行では、「エラーはみんなで助け合い、そのために自分勝手なミスをしない」を体現し、二泊三日の伊豆、東京での経験が皆さんを大きく成長させてくれました。バス車中で、マスコットキャラクター「にしちゅー」をめぐる他愛もない会話や、伊豆の海で釣竿を垂れるときの表情、海から上がってきた顔。東京ディズニーランドから帰ってきたときの顔や、東京都復興記念館での真摯に資料を見、会話したこと、今でも映像になって目に浮かびます。困ったときには一つ一つ相談しながら乗り越えたことで、皆さんが少し大人の表情になって帰ってきてくれたと感じていました。
 また、昨年度までは学年別開催だった体育大会を「全校開催にしたい」という体育委員長の公約を受け、生徒総会での提案と議決、それを受けての教職員での検討を経て、グラウンドに全校集まって体育大会を開催することができました。そこでも、体育大会の空気を楽しむ中に、自分の持つ力を最大限引き出して競技に臨む3年生の姿は、大きな達成感を生み出してくれました。
 さらに、合唱コンクールでは、最後のステージに込める各クラスの思いが詰まった歌声を聞かせてくれました。そして、生徒会長のよびかけで始まった全校合唱「ふるさと」、会長の「みなさん、歌いますので立ってください」の声に、「よっしゃ!」と勢いよく立ち上がっていた座席の皆さんの雰囲気、まさにコール&レスポンスそのものでした。全校合唱が素晴らしかったのは言うまでもありません。
 大きな行事での「つながり」がなぜ生まれるのか、それは日ごろの教室や学年での小さな「つながり」があってこそだと、私は確信しています。ただし、その「つながり」は、自然に生まれるものではありません。自らが困ったとき、だれかに助けを求めても手を差し延べてもらえないならば、困りを口にすることをためらうでしょう。一方で、だれかが困ったとき、自分に何ができるかわからないけれど、相手の気持ちを考えながら行動しようとすることは、周りに安心感を生み出します。上手くいかないこと、失敗することは今までもこれからも本当にたくさん経験することでしょう。そんな時、困っている人にふと寄り添いながら、声をかけながら歩みを進めようとしている姿を、3年生の中でいくつも見てきました。
 だからこそ、在校生はきっと皆さんの姿を見て、「つながり」を生み出すためには相手の気持ちに寄り添う姿勢を大切にする、そんな姿を、これから自らのものにしようと努力を重ねてくれることでしょう。そして、「なりたい自分」になるために、自分の夢や目標を人に語りながら、その実現のために努力を重ねられる西賀茂中学校を、皆さんから引き継いで創り上げてくれると信じています。改めて卒業生の皆さんに伝えます。在校生を導いてくれて、背中を見せてくれて「ありがとう」。
 しかし今、世界は「他人を受け入れることを困難に感じる時代、言い換えれば不寛容の時代」に入りつつあるように感じます。作家・あさのあつこさんは、日本経済新聞の2月28日の夕刊で「慣れてはならないもの」と題し、次のように述べています。
 「楽しく心躍るより、やりきれなさを強く感じるニュースが目立つようになって久しい。戦争、気候変動、災害、格差、分断、孤立……。目に入り耳に触れる単語の多くに胸がふさぐ。なのに、異国の地での戦争にも、逃げ惑う子どもの姿にも、被災地での老女の嘆きにも、いつしか慣れて、他人事としか考えていない自分がいるのだ。どれほどの悲惨も苦痛も嘆きも憤りも自分に降りかからなければ、胸のふさぎは薄れてしまうものなのか。だとしたら、あまりに情けない。」「慣れてはいけないのだ。この世界の理不尽にも不条理にも残酷にも慣れてはいけない。慣れた先には、胸がふさぐでは済まされない未来が待っている。」
 晴れやかな門出の日に、ふさわしくないお話かもしれません。自分たちにはどうしようもない遠い世界の話なのかもしれません。一方で、自分の想像力や共感力を高めることができれば、直接的に何かができなくても、これからの社会をより良いものにし、よりよく生きるために、私たちにできることは様々あると思います。そのためには、この状況を打破しよう、これまでの自分の常識を覆すような強さも必要である、そう私は信じています。
 そこで、私から皆さんに、私が生きる上で大切に心に留めているフレーズを送ります。オフィシャル髭ダンディズムの「日常」という曲の一節です。
「変わりないか 元気か あなたは今日も気にかける 良い日でも悪い日でもそれも同じみたいだ」「変わらない人たちに悩まされては癒される 強がれるこの強さが割と大事みたいだ 不細工な心ひとつ 日常を今日も生きる」
 小学校から中学校へ9年間の義務教育、この義務教育を終えるということは、社会へ踏み出すということ。ここからは自分の選択した道を歩んでいくことになります。毎日、いくつもの判断を積み重ねていくことでしょう。不細工な心ひとつ、不器用な自分でもいいので、昨日より今日、今日より明日へと、歩みを進めていってください。そして、自分の判断に自信が持てるよう、これからの人生を通じて学び続けてください。悩んだときは、これまで培った皆さんの「つながり」に癒されつつも、ぜひ強がってもらいたいと思います。ただし、癒してもらったなら「ありがとう」を伝えることを忘れないでくださいね。「なりたい自分になるために」。
 最後になりましたが、保護者の皆様、高いところからではございますが、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。長くも、そして振り返ってみればあっという間にも感じられる、義務教育の九年間だったと思います。保護者の皆様には、ここまでお子様を大切にお育てになってきたご努力に心より敬意を表しますとともに、様々な面で学校教育にご理解、ご協力を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。一方で、我々教職員もできる限りのことを取り組んでまいりましたが、まだまだ不十分なこともあったかと存じます。何卒ご寛恕いただけると幸甚です。皆様には、今後も地域の良き理解者として、本校の教育活動にさらなるご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。また、来賓の皆様、さらには地域の皆様には、西賀茂中学校生を温かく見守り、支えてくださったことに、改めて厚く御礼申し上げます。これから彼らが、この地域を支える人材になってくれると存じます。そのためにも、引き続き温かいご支援をよろしくお願いいたします。

 それでは、卒業生の皆さん、皆さんのご多幸を祈念すると共に、確かな一歩を踏み出してくれることを願い、式辞と致します。
                令和7年3月14日
                京都市立西賀茂中学校
                     校長 上畑 直久