学校日記

校長先生のお話〜12月終業〜

公開日
2010/12/28
更新日
2010/12/28

校長室から

 おはようございます。みなさんは今年一年を振り返ってみて、一生懸命頑張ったでしょうか。
 先月は頑張った人に与えられるノーベル賞について話をしました。「鈴木さんと根岸さん」が有機物をくっつける技術カップリングを開発してノーベル賞をもらわれたのでした。
 実は,もう一人ノーベル賞をもらわれるのではないかという方がおられました。山中伸弥さんといいます。残念ながらノーベル賞はもらわれませんでしたが,人類の科学や文化の発展に尽くした人に与えられる「文化功労者」や「京都賞」や「京都市民栄誉賞」など次々と表彰されました。しかもここから近い京都大学で研究されています。どんなことをして表彰されたのでしょう。
 IPS細胞を作ることに成功されたのです。IPS細胞とは何でしょう。今日はIPS細胞についてお話します。日本語で人工多能性幹細胞といいます。
 ここに一つの卵があります。みんなも,お母さんのおなかの中で一つの卵として生まれます。ここでは卵のことを細胞と呼びます。細胞はどんどん分裂しながら増えて体は大きくなります。みんなの体は細胞の集まりです。約60兆〜100兆の細胞の塊です。兆とは0が12個付きます。
(ボールをくっつけて人の形を作っていきます。)
 しかし、これでは,細胞の塊であって人の体とは言えません。骨は骨を作るような細胞でなくてはなりません。筋肉は筋肉をつくるような細胞でなくてはなりません。そして,手は手を形作るような細胞のくっつき方をしなくてはなりません。そこで,「こんなふうに増えていきなさい。」という命令が必要になってきます。命令を出すのが遺伝子(DNA)というものです。遺伝子は二本のひもが鎖の用につながっています。30億の文字情報が書かれています。
(核から1,8メートルのひもを2本取り出します。)
 遺伝子の命令をもらった最初の卵細胞はいろんな形に変化してふえていきます。つまり,命令されたとおりの細胞に分裂していきます。たとえば,骨や筋肉や内臓という風に形作られていきます。
(人形に顔を描いたり,削って手の形にしたりしていきます。)
 そして,いったん皮膚の細胞が形作られるとその細胞は分裂してまた皮膚の細胞になります。皮膚は毎日古い細胞が死んで新しい細胞ができています。みんなが垢と呼んでいるのは古い皮膚の細胞です。皮膚細胞は,分裂しながら増えていきますが,生まれる細胞は皮膚ばかりです。手から取った皮膚の細胞に,心臓になれという命令を出しても,心臓にはなれません。
 もし,心臓になれたら,心臓に病気を持つ人は自分の皮膚細胞から作った心臓を入れ替えることによって病気を治せることができるのですが・・・。
 こんな夢のような話が本当になりそうなのです。山中伸哉先生は,マウスの皮膚の細胞に4つの遺伝子を入れることによって,さまざまな組織や細胞に変化していくことができる最初の状態の細胞になることを発見したのです。この細胞をiPS細胞といいます。
 皆さんの好きなゲーム機でたとえて言うと,ゲームを進めてきて行き詰った時にリセットボタンを押すと元に戻るようなものです。
 この実験結果を聞いて,世界中の人々が大喜びしました。病気の原因解明や治療方法,新しい薬の開発もできるのですから。
 先日も,こんなニュースがありました。運動場でこけて膝をすりむいたとしましょう。血が出た時にほうっておくとどうなりますか。やがて固まってしまいます。これは,血の中の血小板が傷口にくっついて傷穴をふさいでくれるのです。その血小板をヒトIPS細胞から作りだすことに成功したのです。これによって,血小板が少なくなる病気の人にとってはうれしい報告となったのです。

 最後に,山中先生は,この研究成果を出すのに20年かかったと言われています。結果はすぐに出るものではありません。今年、頑張った人も頑張れなかった人も、来年の1月1日には、20年先の夢を見据えて1年の目標を立ててみましょう。