学校日記

(アーカイブ2016年8月31日) 過ぎゆく夏に

公開日
2017/05/02
更新日
2017/05/02

校長室ウェブログ


 昨年、着任して以来、美術の実習授業をよく見に行っています。小学校の時から「図画工作」が一番好きな科目で、高校時代の芸術科目は「美術」「工芸」を選択したという私にとって、美術の専門高校の実習授業は強く興味をひかれます。もちろん普通科高校に通っていた私が取り組んだ課題とはかけ離れた内容ですが、生徒が、目を輝かして真剣な眼差しで制作に取り組んでいる姿に心を動かされています。そして率直なところ自分も「やってみたい」という気持ちをひそかにもちながら過ごしてきました。

 基礎、基本をしっかり学ばず興味本位で「やってみたい」というのはいかがなものか、と思ってきましたが、夏季休暇中の中学生対象のオープンスクール「わくわくART!」で、楽しそうに体験学習に取り組む中学生の姿を見ていて、子ども時代の自分の気持ちがもちあがってきました。美術専門高校に勤めているのだから、体験しておくのはきっと“プラス”になると自分に妙な言い聞かせをして、専攻の教員に「やってみたい」気持ちを打ち明けました。

 そんな経過で8月のはじめ、染織専攻の教員にお願いして、手ぬぐいの型染めを体験させてもらいました。専攻教員制作の夏らしい柄の型を使って、染料を合わせるところから指導してもらいました。染料の見た目の色合いと実際に布に色を置いた色合いとは異なります。また刷毛で布に色を付けるのは、紙に絵の具で色を付けるのとは全く異なる感覚。色を定着させるための処理、糊を落とすため水ですすぐ感触、水の中で染めた色が揺らぐ姿、糊が落ちて白い絵柄があらわれる美しさ。染織を実体験した約2時間は感動そのものでした。

 体験をしながら、作品を制作するということは、布や染料、使う道具についてよく知ることが大切だと専攻の教員から教えてもらいました。自らの感性や創作力、表現力を自由に発揮する作品制作という場面であっても、まずは謙虚に画材や道具について学ばなければならない、よく見ること、気持ちをしっかり対象に向けることの大切さを、自分自身が制作をしながら実感しました。生徒が学んでいることからすれば、ほんの一部分をかじった程度ですが、制作に取り組む基本を体で学んだ気がしました。

 この夏、生徒はそれぞれ貴重な経験をしたことと思います。布を染めるこの経験は、私にとってとても貴重でした。作品制作ということのみならず、対象と向き合う、よく観察する、気持ちを注ぐ、目と心を対象から逸らさない、これまでの経験だけで“処理”せず新鮮な気持ちで取り組む、教育という場面にも通じることだと思っています。

 2016年8月31日    
                  校長  吉田 功