『東山を西に見て』
- 公開日
- 2010/05/26
- 更新日
- 2010/05/26
校長室から
「真剣な顔」
教師になった頃、日本全国の多くの中学校が“荒れ”ていました。私が赴任した学校にもやはりそういう子たちが少なからず在籍していました。教師という職業の理想と現実のギャップに苦しみながらも、子どもたちとの間の距離が詰まっていくことに遣り甲斐を感じながら毎日を送っていました。生徒と揉めたり、学級経営が上手くいかなくて嫌な気持になっても、「先生をしていてよかった!」と思わせてくれることもたくさん起こり、ようやく精神の均衡がとれていたのだろうと思います。
先日の修学旅行から帰った翌日の日曜日。初めて赴任した学校のその年の卒業生が、40歳になるというので同窓会を開催しました。私は当該の学年ではなかったのですが、部活動や生徒会活動を共にした子たち(40歳の人を指して言うのは失礼ですが…)の誘いもあって参加しました。25年の時が一人一人に深く刻まれています。当時激しくやり合ったメンバーも何人か参加していました。今となっては、笑いながら話せることを幸せに思います。
昨日、その学年のある女性の先生の言葉を思い出しました。
「私、テストの時の子どもらの顔を見てるの、好きやわぁー。普段あんなにヤンチャしてる子が、真剣な顔でテストに向かってるのを見てて、イヤーこの子、こんな表情するんや!これがこの子のホンマの顔やわって思たら、可愛いてしょうがなくなるねん!」
昨日から本校でも定期テスト。いつものように見回りに行った私は、最初の教室の様子にこの言葉を思い出さされ、急いで校長室にカメラをとりに戻りました。“真剣な顔”は実にいいです。部活動の試合の場面など、ほかにもこんな表情の見られることはあるでしょうが、皆がそろって静かに“真剣な顔”でいる場面は極めて少ないと思われます。思わず若い先生に言いました。
「テストに向き合ってるときの子どもら一人一人の表情をよく見ときや。新たな発見があるかもしれんで。子どもらが一層可愛らしく見えてくるしな。」
“真剣な顔”は美しくもあります。昨日は他にもこの美しい顔を見つけました。男性の用務員さんが、自転車置き場の屋根を広げる工事をされている際の顔と、校門付近の花の世話をされている女性の用務員さんの顔です。誰かが頼んだ訳ではありません。校内の様子を見て、自主的に活動されているのです。
なるほど学校では子どもが主人公。しかし、養護の先生や事務員さん、給食の配膳員さん、スクールカウンセラー、地域や学生のボランティアさんなど、主人公を支える脇役は、先生の他にもたくさんいます。
因みに担任の先生、明日にでも校門付近のパンジーの花を一輪摘んで教卓に置いてみてほしいと思います。誰かがその花に気づいたら、すかさずこの話をしてやってほしいのです。自分たちを陰で支える“真剣な顔”のあることに気付かせることは、大切な大切な教育だと思うからです。