K君との交流
- 公開日
- 2013/06/30
- 更新日
- 2013/06/30
園長室より
幼稚園に勤めて2年目。おそらく,小学校にいたらこのような場面に出会うことはなかっただろうと思うことがたくさんあります。私にとっては心が温かくなるような出来事でもあり,子どもを育てることについて何かしら参考になることもあるのではないかと考え,書いておきたいと思うようになってきました。
先日,砂場の寒冷紗をとめているロープが切れたので,倉庫の屋根の上にあがって寒冷紗を再び張り直していました。周辺に誰もいないし,今なら大丈夫かと思って人知れず登ったつもりでしたが…。めざとく倉庫の屋根の上にいる私に気づいた男の子が近寄ってきて,びっくりしたような顔をして下から見上げています。
「園長先生,どうしてそこにのぼったん?」
とたずねてきました。
「ほら,この黒い日除けがはずれてしまったから,また,とめているんやで。」
と言いました。向こうの方からお部屋にもどりますよという先生の声がしています。しかし,その男の子はその場から立ち去らず納得できない表情で再び
「どうして登ったん?」
と同じことをたずねてきます。私は,焼けるように暑い屋根の上の作業を手早く終わろうとしていたのですが,あまりにも真剣にその男の子が聞いてくるので,おかしくてたまりません。そうか,屋根を登っているわけをたずねているのではなく,屋根の上に上がる方法をたずねているのだとわかりました。そこで
「いや,きみのいるところからビューンと飛んであがったんやで。」
と言いました。もう園庭にはほとんど誰もいなくなってしまいました。私のよけいな一言がさらに男の子の好奇心に火をつけてしまいました。
「どうやって,降りるの?」
と男の子は続けて聞いてきます。こうなったら後にひけない?
「いやそりゃあ,おんなじようにビューンとここから飛び降りる。」
と私が思いつきを言うと,
「えーっ!」
と男の子はさすがにびっくりしたようです。そして,最もおそれていた一言を…。
「やってみて。ぼくも上にあがりたい。」
と言います。私は,
「いや,ここはね危ないから大人になってからでないと登れないんだよ。ま,降りるのも危ないからね。」
と言いました。そこでやっと男の子は
「わかった。ぼくも大人になったら園長先生と一緒に上にのぼるわ。一緒にのぼろな。」
と言いました。私も上から
「おう,大人になったらな。一緒に登ろう!登ろう!」
なんて言ってしまいました。そして,やっと男の子は輝くような笑顔で部屋にもどってくれました。
屋根の上に上がることを奨励するつもりもありません。安全第一です。もう少しましな夢を幼い子どもにもたせてあげればよいのではと思いますが,園長と子どもとのほのぼのとした交流であったということでご理解いただけたらと思います。