学校日記

生徒インタビュー@校長室Vol.6後編「まだ何者でもない焦燥感みたいなものこそがパンク」(3年1組湯原立也さん)

公開日
2026/08/04
更新日
2026/08/04

校長室より

――また、いい表現を……。「ティーンなんで」。そうだよ。ティーンの24時間はそんなにちっぽけなのかって。その多感な時期に、どれだけ豊かな経験するかであってほしいと僕は思ってるんで。学校内で出会うことも学外で経験することも、いろんなことをひっくるめてね。そう考えると、湯原さんがこれだけでっかく「青春」のスペースをとってくれたのは……、非常に嬉しいことだね、僕にとって(しみじみ)。中身が細分化されてないのがまた、いいよね! 分節されてない、マグマのような「青春」50%!
湯 みんな考えてんのは青春かな。そんな気がしますね。

――そうであってほしいよ。それから、三つに分けたら音楽・青春・受験になる、あなたにとっての音楽のでかさっていうのかな。音楽を青春の中に含めるんじゃなくて、別枠でこれだけの割合を取っているというね。カルチャーって言ったけど、音楽以外にも興味あるの?
湯 そうですね、音楽を軸に結構いろんなものに触れたりはしてるんですけど。例えばアメリカの西海岸あたりだと、パンクロックとスケート文化の関わりがすごい密接なんですよね。それでまあ、友達からスケートボード借りて、やってみたりしたんですけど。向いてないっす。

――向いてない?
湯 向いてはない。運動はあんまできない。

――わははははは。そうかそうか。
湯 ファッションも、関わりが強いので言ったらVansとかだと思うんですけど、僕はブランド自体にはあんまり興味ないんで。知ってはいるんですけど、基本、そういうとこにこだわりがなくて。

――パンクはジャンルというよりアティテュードだって言ってたけど、あなたはファッションにこだわりはないと。あなたの考えるパンクの姿勢とか思想とかってどんなもの?
湯 難しいですね……。立ち向かうというか、反発精神。ちょっとステレオタイプな気もしますけども。

――ああ、なるほど?
湯 反発っていうのは、学校とか大人とか政治とか、そんな大したもんじゃないにしても、やっぱり自分自身にとって納得がいかないこととか、自分の中だけの悩みでもいいんですよ。そういうものに立ち向かう糧として、やっぱりパンクっていう精神が大事かなって思うんです。

――いいこと言うなあ……。仮想敵国みたいなものは必ずしもなくていいわけだ、政治とか学校とか大人とか。自分の中での悶々とした思いみたいな、そういう理解でいいのかな?
湯 まあそうですね。UKロックとかは、すごい政治的な側面もあったりするんですけど、それだけじゃないなって。問題って、国際的なこととか政治的なことだけじゃなくて、やっぱり自分の中に……、あるものがみんな大きいと思うんですよ。そういうものに立ち向かっていくことだと思ってて。そういう意味でもやっぱり、ザ・ソフトパンクスのソフトという言葉が大事な意味を持ってるかなと思います。

――みんなが持ってる問題って、どういうものなんだろうな。
湯 恋愛とかもあると思いますし、やっぱり受験もそうやと思うんですよね。自分の中のできないことをやろうっていう気持ちとか、そういう「精神のパンク」っていうのはどこにもあるんかなって思う。それを持って、という感じですね。すごい概念的なことなんで難しいんですよ、言葉にするのは。

――でも伝わってるよ。中学2年生のあなたが出会ったエレカシ、そしてサンボマスターに感謝だな。
湯 はい。パンクって古臭い感じがするんですけど、逆に一周回って、今の人たちに新鮮に感じたっていうか。多分、未来の計画とか、やりたいこと持ってる人ってほんの一握りで、いろんな悩みとか、何していいかわからない焦燥感とか、どっかにあると思うんですよ。それでやっぱり響いてくれたのかなっていう感じはします。

――ああ、なるほど! やっぱりあなたは、ちゃんと言葉にできてるよ。
湯 パンク=若さっていう人が結構いるのも、そういうことかなって。まだ何者でもない焦燥感みたいなのが、パンクにすごく合っているというか、乗っかる。

――そう考えたら、あなたは50歳になっても全力でパンクでいられるかな。
湯 どうですかねえ。形は確実に変わっていくというか、変わっていかないといけないと思いますね。50代になってもパンク一筋って人がいたら、まあ芯は通ってますけど。若さから何も変わってない(笑)。

―わははははは。それはちょっと恥ずかしいよね。
湯 形を変えてパンクっていうのは持っておきたいですけど。

――そうだよね。でも、甲本ヒロトなんかもそうなんちゃうの?
湯 甲本ヒロトはTHE BLUE HEARTSとかTHE HIGH-LOWS、ザ・クロマニヨンズという順でバンドをやっていってるんですけど、昔のバンドの歌は歌わないんですよ、絶対に。それは昔の曲は昔の精神で作った曲だから。常に新しい自分としてやってるんですよね、彼は。そういう意味でかっこいいんじゃないかなと思います。形を変えて年齢ごとにパンクをしていってる。

――それやね。ティーンの頃と形を変えながら、いつまでもパンクで。将来は何しようと思ってるの?
湯 正直なところ、やっぱりバンドをやりたい、そのためのモラトリアムの期間というか。そういう意味で大学には行っといた方がいいかなっていう現実的な感じなんですけども。バンドをやるための期間。

――ああ、なるほど。でも、あなたぐらい感受性が高いと、単にモラトリアムを過ごす環境として大学を選ぶのはもったいない気がするな。紫高(むらこう)を選ぶ時に、あなたが受け容れられそうだと思ったように、どの大学なら魅力的な学生に出会えそうかとかさ。あなたなら大学4年間もすごく豊かにできると思うんだよね。バンドはもちろん続けるさ、それは。それはもちろん続けるけど、そのためだけに4年間過ごせる場所って考えるのは、ちょっとあなたにとってもったいない気がする。
湯 なるほど。そうですねえ……。

――せっかくなら、強い影響を与え合える人と出会って濃い大学生活を送ってほしいな。そのまま歌で食っていこうみたいな思いもある?
湯 そうですね。やっていけたらいいとは思いますけど、ただ、パンクってすごくサブカルチャー寄りっていうか、すごいマイナーで廃れそうなカルチャーでもあるので、食べていけるかと言ったら、ちょっと厳しいかなみたいな感じはあるんですよね。

――そうか。でもまあ、アティテュードだから別に職業にしなくてもいいんだよな。あなたがどんな職業に就いても、パンクっていうものを自分のブレない軸として持っている職業人になってほしいね。パンク職業人。なんか考えてる職業あるの?
湯 難しいですね。痛いところ突かれちゃって。

――痛いところ(笑)。
湯 あはははは。なかなか、考えてない部分を浮き彫りにされてる。いろいろ訊かれるとわかりますね、自分の至らない部分みたいなものが。

――わははは、いや、いいんだよ、高校の頃オレだって考えてなかったよ、ぜんっぜん。ホンットに。あなたにとって大事なことを突き詰めて考えていれば、その他のことは後回しでもいいのよ。全部100%でなくていいから。この円グラフをでかく占めているものに全力であればね。
湯 未来のこともちゃんと計画立ててやっていければすごく理想的やし、でも自分はやっぱ難しい。この学校の人たちはすごく計画がありますよね。そういう意味では、やりたいことがしっかりしてる。

――してるねえ。それはそれでいいことですよ。でも、そういうタイプじゃないっていうのもいいことでね。人生において早いとか遅いとか関係ねえって構えてることが大事、そういうタイプの人は。僕もそういうタイプだけどね。全部逆算で、この職業を目指すならこの大学のこの学部で学んでってできる人は、それも素晴らしいけど、それが苦手なタイプもいるし。
湯 はははははは。僕はどっちかというと苦手なタイプなんで。

――それなら、いくつになってもやり直そうと思ったら職業も変えられるし、サバイブできるぞっていうマインドを持つこと。そのためにも、その時その時の目の前のことに全力でいることだよね。
湯 そういう意味で、受験もちゃんと頑張って、やりたいことが見つかった時の幅を広げられるように。

――その通り。あと案外ね、もう大学卒業で学びが終了っていう時代でもないのでね。最終学歴より最新学習歴って言う人もいるくらいで、一生学びを深めたり、資格を取ったりできるからさ。僕の弟も新潟で暮らしてるけど、縄文土器づくりを習い始めたと思ったら、50歳にして今、狩猟免許を取ってるよ。熊害ニュースに触発されて。
湯 いいですね。

――いつからでも学べる。スイッチ入った時に全力でそこに振ると。
湯 希望は大きくですけども、計画は空っぽ。空っぽだからこそ、パンクっていう心持ちはずっと持っておきたいなっていう。一本何か柱になる精神を持っていきたいなって思う。そういう意味でパンクはずっとやりたいって感じですね。

――そんな湯原さんに選ばれる紫野だったっていうことを、これからも大切にしたいね。あなたみたいな中学生がいたら、紫高(むらこう)行きたいなって思ってもらえるような学校でありたいな、ずっと。
湯 はい。あのー、へへへ、いや……大丈夫です。

――そんなわけで、湯原さんから紫野高校に、アドバイスとかメッセージある?
湯 それは生徒たちにですか?

――あ! 両方聞きたいね。学校に対して、こういう学校でいるといいんじゃないっていうアドバイスとかメッセージ。あとウチの生徒にも。
湯 学校に対して。なんか……、いいんですか、そんなん?

――いい、いい。そういうことが聞きたい。
湯 やっぱり全ての人を受け容れるというか、いろんな精神も特徴も受け容れていってほしいなっていうのは思います。今もそうなんでしょうけど。だからこそ僕は楽しいですし、いろんなものを得られますし、これからも全ての人を受け容れて、こんな感じで続いていけば、紫野高校はすごい特別なものであり続けるかなと思います。

――わかった! 肝に銘じるよ、ありがとう。
湯 なんか、偉そうじゃないですか?

――ううん、全然全然。
湯 生徒には、そうですね、「一歩踏み出すGlobal Citizen」って、これまでインタビューに登場した人たちも本当にそれを体現してるというか、立派に人のためや自己実現のために羽ばたく人も多いと思うんですけど、そういう大義名分がなくても、やっぱり自分らしさを持って、小さなことでも自分のことに突き進んでいくのがいいかなって思います。

――おお……。いい励ましのメッセージだよ。ありがとう。
湯 僕はホームページに載るほど立派なことは形として残してないと思うんで、そういう意味ではこれに出るかもすごい悩んだんですけど、でもやっぱりそういう人もいるからこそ、学校ってコミュニティだと。

――そうだよ!
湯 はい。だから、そうですね……、自信持ってみんなやっていけたらなと思います。

――ありがとう。湯原さんに依頼した理由はまさにそういうことなんだよ。「一歩踏み出すGlobal Citizen」は悪くない教育目標だと僕自身も思ってるけど、それが生徒を縛っちゃうというか、ある種の型になるのは本意じゃなくて、全力で青春を送る姿にはいろんな在り方があるぞ、と。それがこのインタビューから伝われば大成功だと思うんだよね。……でも、下手くそでもいいから英語はやった方がいいよ。
湯 へへへへ、そうですか。

――わははは。せっかくパンクにそれだけの思いを持ってるんだから、日本の友達と語るように、海外の人とも語れるようにさ。別にネイティブのように流暢じゃなくてもいいんですよ。世界言語として、我々日本語訛りで構わないので。西海岸のパンクにも興味を持ったわけでしょ? 実際にそこの人たちと語れたら、より一層ね。
湯 そうですね。逆になんか、いろいろ得られました。英語やったほうがいいとか、自分に必要なものが。

――あなたの将来を楽しみにしてるよ。
湯 まあ、そうですね、はい。「パンクとは型破りだ」みたいになったら、それもまた型にはまってる感じがするじゃないですか。型破りであろうっていう気持ちに囚われちゃう。そういうのもダメやと思います、やっぱり。柔軟に考えを持っておきたいなっていう感じですね。

――なるほど! 難しいね。すると、やっぱりバンド名のザ・ソフトパンクスっていいね!
湯 はい。今、柔軟って意味が乗っかりました。ふふふふふ。いい感じですかね。

――いい感じ。すげえいい感じ!
湯 ホームページにいい感じに載りますか?

――載るよ! いやー、いい話聞けたな。ありがとう!
湯 はい、ありがとうございます。

【写真1枚目:慎重に言葉を選びながら語る湯原さん】
【写真2枚目:中庭の七夕ライブで熱演するザ・ソフトパンクス】
■記事及び写真は生徒本人の了承を得て掲載しています。