新年度のご挨拶
- 公開日
- 2026/04/09
- 更新日
- 2026/04/09
校長室より
保護者の皆様、卒業生の皆様、地域の皆様、その他関係機関の皆様、平素は本校教育に多大なるご協力を賜り、大変ありがとうございます。
本日4月9日、紫野高等学校の新年度が始動いたしました。
その初日に、一人の生徒が校長室を訪ねてくれました。約1年前、彼はとあることに取り組んでおり、何度か相談に来てくれていました。長らく話す機会がもてなかったが、その報告をしたいと。
「一言でいうと…、瓦解しました」
「瓦解? そういうときは、“発展的解消”って言うんだ」
「なんですか、それ?」
「教員もよく使うんだけどね、何かを継続するのを断念するとき、これまでの経験を生かして形を変えて再出発する気持ちはあるんだぞ、という決意表明。……というか強がりというか言い訳というか……」
「……。今日はそのことをお詫びに来ました」
「お詫び? 君からぼくに?」
「はい」
「要らない、要らない、要らない! 失敗するから学ぶんだよ。お詫びする必要全くない」
「今回の件で、3つのことを理解しまして」
「でしょ? そうだろう、そうでなくてはいけない」
彼は、今回の件で得た学びを3つ、整理して説明してくれました。
つい先日、私はアントレプレナーシップ教育では全米屈指のBabson Collegeの准教授・山川恭弘先生の講演会に参加したところでした。Babsonでは1年次の必修科目でグループに分かれ、全員が実際に起業に取り組みますが、山川先生の経験上、失敗しないグループは皆無だそうです。だから、学生が成功するか失敗するかは眼中になく、失敗から何を学んだかをプレゼンテーションさせて、それを評価するんだとか。1年の締め括りの授業で学生が山川先生の前で成果(というか失敗)報告すると、山川先生が「Oh, so you failed?」と応じる。すると教室中の学生が一斉に「How lucky you are!!!」と叫ぶ。そこから、失敗から得た学びのプレゼンテーションが始まるのが恒例の儀式なんだそうです。
「…で、3つの教訓を得たということは、君は全てを周りのせいにして、もう何もやらねえ!って不貞腐れてるわけじゃないんだろ?」
「ええ。それで今、ぼくがやろうとしているのは…」
まさか山川先生の講演会から2週間足らずで、本校生徒にBabson体験させてもらえるとは、さすがに予想していませんでした。というより、その程度は「当然」のことと予想しておくべきだったのかも知れません。元国連事務次長で本校学術顧問の明石康先生は、本校パンフレットに次のような言葉を寄せてくださっています。
――この高校から海外に飛躍できる若者たちが続々と出てきても、私は驚かないことだろうし、それが当然のようにも思われる。
対話を尊重せず、力で異質なものをねじ伏せ、消し去ることが横行するこの世界情勢の中、校歌に「新しき世は この地に興る」と謳う本校が目指すのは「一歩踏み出すGlobal Citizen」。そこで、Babson Collegeのキャッチコピーに触発され、私も令和8年度の本校キーフレーズを、本日の始業式で生徒に示しました。
How do you change the world?
これが今シーズンのわが校を牽引する言葉です。Can youでも、Do you want toでもない。世界は変えられるのが前提であって、「どうやって?」が私たちの問いの出発点です。世界、変えられるけど、君はどうやって変えるの?
我々教員も、各単元の学びによって「世界を変えるために、生徒がどう変わるの?」という問いを自らに発しつつ、教育活動に取り組んでいきたいと思います。そして、本校生徒が世界を変えることを、明石先生のように「当然」のことと信じたいと思います。
令和8年4月9日 京都市立紫野高等学校長 景山晋之介
【写真は昨年末、明石康先生の東京の事務所を訪問されていただいたときのものです。】