第2回卒業式 式辞
- 公開日
- 2025/02/28
- 更新日
- 2025/02/28
校長室ウェブログ
冬の名残が感じられる中にも、少しずつ春の気配が感じられるこの佳き日に、令和六年度京都市立美術工芸高等学校第二回卒業式を、このように盛大に挙行できることは、卒業生の皆さんはもとより、教職員一同にとってもこの上ない喜びです。
本日は、京都市教育委員会をはじめ、日頃より本校をご支援いただいている関係者の皆様、そして多くの保護者の皆様にご臨席を賜り、心より感謝申し上げます。卒業生の新たな門出をともに祝福できることを、大変うれしく思います。
ただいま、卒業証書を受け取った九十二名の卒業生の皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。皆さんは、入学以来たゆまぬ努力を重ね、美術工芸の専門高校で三年間の学びを全うし、この晴れの日を迎えたことを、心よりお祝い申し上げます。
思い起こせば、皆さんは旧銅駝校舎で入学式を迎え、一年間「ドウダリアン」として過ごしたのち、二年生からの二年間をこの新校舎で学びました。入学当初はコロナ禍での教育活動の制限が続いており、年度末には校舎移転がありました。こうした大きな変化の連続の中、皆さんは柔軟に対応し、充実した学校生活を送ってくれたと、私は確信しています。
二年前の四月八日、この体育館で本校の開校式を挙行した際、皆さんに新しい美工に期待することを文字に書いてもらい、ビデオメッセージとして流しましたが、覚えていますか? その中には、「良い意味で校舎を汚していきたい」「花見できるね」「いっぱい笑う」「お掃除がんばる」「廊下で全力リレー」など、具体的な願いを書いた方が多くいました。どうでしょう、それらは達成できましたか。
一方で、「夢を広げる」「自分らしく全力で楽しむ」「新風吹き込め!」「美術高校に新しい風を巻き起こしたい」「新たな気持ちでたくさん挑戦したい」という言葉もありました。これらの言葉を目にしたとき、私たち教職員もとても嬉しく、身の引き締まる思いでした。教職員一同、この二年間、まずは生徒にとって、そして保護者の方や地域、京都市にとって意義ある学校とは何かを深く考え、皆さんと協力しながら日々の教育活動に取り組んできました。その中で、皆さんが美工生として自立し、自ら前に進む力を身につけ、これらの言葉の一部でも実現できたのであれば、もう私から申し上げることは何もありません。
皆さんは、新たな美工で昨年度卒業した一期生の意思を受け継ぎながら、新たな文化を築き、最上級生として後輩たちを優しく導き、新しい学校生活の基盤を築いてくれました。その努力に深く感謝し、この卒業式を迎えたことを心から祝福します。
これからの社会は、予測が難しく、変化の激しい時代です。そんな時代だからこそ、私が皆さんに大切にしてほしいと思うのが「教養」です。
教養とは、単なる知識の蓄積ではなく、他者や世界との繋がりを深く理解する力です。それは、皆さんが作品制作や仲間との対話を通じて自然に身につけてきたものです。目には見えなくても、これからの人生で、困難に直面したときに支えとなる「生きる力」になるでしょう。
哲学者であり元京都市立芸術大学学長の鷲田清一さんは、著書の中で「教養とは、他者の声を受け止め、異なる価値観を理解し、対話を通じて自分自身を磨き続ける力である」と述べています。また、彼は教養を「生きる力」と表現し、それは単なる知識の蓄積ではなく、人と世界の繋がりを感じ取る感受性であるとも語っています。そして、その基盤となるのが「身体性」、つまり自分の五感を使って、世界にどう触れ、どう感じるかという能力です。
皆さんがこの三年間で積み重ねてきた全ての学びは、まさにこの「教養」を育む土台となるものでした。特に興味関心が深かった作品制作を通じては、自分自身と向き合い、世界への感受性を育み、仲間との協働作業を通じて多様な意見を尊重する力を培ってきたのではないでしょうか。それこそが、これからの時代に不可欠な「教養」そのものであり、その経験は、これからの皆さんの人生において、きっと大きな支えとなるはずです。
教養とは、すぐに成果が目に見えるものではありません。それはじっくり時間をかけ、一つ一つ丁寧に積み上げていくものです。鷲田さんは「教養とは急がず、一つ一つの時間を深く味わうこと」とも述べています。皆さんもどうか、速さや効率が求められる現代社会の中で、あえて立ち止まり、考え続け、問い続ける姿勢を大切にしてください。そして、この学校での学びを通して得た感性をもとに、自分だけの人生という作品を創り上げてください。教養を育むことで、皆さんの人生そのものが美しいアートとして輝くでしょう。そして、このことを表すような言葉をポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルが残しています。
「人生そのものが最高のアートだ。」
皆さんの人生は、誰にも真似できない唯一無二の作品です。この言葉には、日々の暮らしや経験そのものを芸術として楽しみながら、自分自身の手で自由に創造していく喜びが込められています。皆さんのこれからの人生は、誰にも模倣できない、世界でたった一つの作品となります。どんな色を選び、どんな形を描くのかは皆さん次第です。そのキャンバスに、自由で鮮やかな物語を描き続けてください。
卒業生の皆さん、どうか教養を携えた新たな旅路を進んでください。私たち教職員一同、これからの皆さんの活躍を心から応援しています。
令和七年二月二十八日
京都市立美術工芸高等学校長
名和野 新吾