令和6年度前期始業式 校長メッセージ
- 公開日
- 2024/04/08
- 更新日
- 2024/04/08
校長室ウェブログ
生徒の皆さん、こんにちは。
本日の午前中に、美術工芸高校として第2回目の入学式を行い、92名の新入生を迎えました。また教職員も新しく着任された教職員10名を迎え、新たな気持ちで始業式を迎えています。
3月に卒業生を送り出し寂しくなっていた校内は、本日から新入生を迎え、また活気あふれる学校となりました。4月は新しい出会いが多くなる時期です。また自分の立ち位置も変わる時でもあります。
その変化を皆さんの顔から伺うことができます。新しいスタートを切る時は、誰しも緊張し、不安なものです。特に1年生はそうでしょう。でも安心してください。美工に集う仲間には、他者を尊重し、助け合うことができる優しい人がたくさんいます。そんな先輩がきっとその不安を取り除いてくれるはずです。
さて始業式に当たり、皆さんに「想像する力」を大切に育んでほしいという願いを込めてお話をします。
まず、ここにいる2年生が昨年、1年後期に「情報 l 」という授業で行った取り組みを紹介します。その授業は「情報デザイン」について学ぶものでした。3〜4人のグループで、京都駅の案内表示を頼りに目的地までたどり着けるかを英語圏の方、高齢者、車いすの方、視覚障害のある方などを想定し、実際に京都駅でのフィールドワークで検証するものです。
その成果発表会には、私も参加させていただきました。各グループともよく調べて検証し、課題や改善点を提示するなど素晴らしい発表を行なっていました。聞いていた私もその発表された内容について「本当にその通りだ」と強く思いました。その中で、車椅子の方を想定したグループがいくつかあり、具体例として「車いすが通るにはこの入り口の幅は少し狭い。」などの分析結果を発表していました。
この成果発表会を通じて、私は一級建築士でアクセシビリティ研究所を主宰されている川内美彦(かわうちよしひこ)さんの著書「尊厳なきバリアフリー "心・やさしさ・思いやり"に異議あり!」という一冊の本に出会ったことを思い出しました。アクセシビリティとは、「利用しやすさ」「近づきやすさ」などの意味です。
19歳から車椅子を使用されている川内さんは、だれにも使いやすく、安全な建物やまちづくりにおけるアクセシビリティやユニバーサル・デザインについて発言され、障害のある人の社会への関わりについて「人権」や「尊厳」の視点で分析し、平等な社会参加を権利として確立していく活動を展開されています。
その本の中で「日本の先を行く国々では、アクセシビリティ整備は、その不十分さのために社会に出られない人を無くして、平等に社会に参加する権利を実現するために行われている。そして、その延長上にユニバーサル・デザインもある。一方、わが国では何のために整備するのかの認識が決定的に不足しており、ハード整備そのものが目的となってしまっている 。」と記されています。
形だけを追い求めても、本当に使用する人の身になって考え、我が事として捉え、施設整備やものづくりができていない部分がある日本であることは紛れもない事実です。皆さんはどう思われますか。
私たち美工が行なっている教育活動は、予測が不可能な社会の中で、皆さんが好きな創作活動を通してこれからの社会で必要な力をつけてほしいと考えたプログラムを実施しています。ただしこれまでもお話をしてきたように、ただ単にモノ作りをするためだけのスキルを身につけるだけの学校にはしていません。それでは皆さんはここで何を学ぶべきなのでしょう。
その一つの答えが本校のスクールメッセージに謳われている2つのソウゾウではないでしょうか。このソウゾウには、イマジネーションとクリエーションの二つがあり、それは勿論、作品づくりに直結しているのもですが、イマジネーションの「想像する力」は、あらゆる社会の中で必要な力であり、社会包摂を実現するためにも大きな力を発揮します。先程紹介した「情報 l 」の授業のことでも必要な力となっていますよね。
少し話は変わりますが、皆さんは美術の授業でデッサンを習います。その力はデッサン力を身につけるため、大学受験のためだけに鍛えているのではないと私は信じています。物事の真実や本質を見抜くために行っている行為です。目に見える表面的な事実だけを切り取るだけではなく、「観察力」を使って自分の置かれている環境や状況を把握して、分析し、そこから生まれてきた「何か」を掴み取り、表現へ向かうことができるのが、皆さんの強みです。
私自身も長年作家として培ってきた「観察力」が、教育者になった今でも仕事に生きています。その「何か」を掴み取ってから表現する間に必要な力が、イマジネーションの「想像する力」です。人だけがこの限りない想像力のたくましさを持っています。いくら生成AIが進化しても、ゼロから何も生み出すことはできず、人の気持ちを理解することも今はできません。
「美」を愛する人は、想像力に長け、モノにも人に対して優しさを持ち合わせている人であると、私は昔から信じています。美工で学ぶ皆さんも、この想像する力や他者を思いやる力を持っています。多様性を認め合いながら、この力がより豊かになるように日々の学びを大切にして欲しいと願っています。
ここにいる教職員は、そのサポートすることに尽力し、生徒の皆さんと共に歩んでいきます。今でも私は素晴らしい学校であり素晴らしい生徒たちであると思っていますが、より高みを目指して、これからも共に作り上げていきましょう。
これで私からのメッセージを終わります。
令和6年4月8日
校長 名和野新吾