第43回入学式 式辞
- 公開日
- 2023/04/10
- 更新日
- 2023/04/10
校長室ウェブログ
新緑が輝きを増し、すがすがしい春の風が吹き抜けていく今日の佳き日に、京都市教育委員会をはじめ、PTA副会長様、平素より本校にご支援をいただいております美工交友会、京都パレスライオンズクラブのご来賓の皆様、そして、多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、令和5年度 京都市立美術工芸高等学校、第1回入学式を挙行できますことは、この上ない喜びであり、本校教職員を代表いたしまして、心よりお礼申し上げます。
ただいま、93名の新入生の入学を許可いたしました。まずは新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員一同、皆さんを大切にお迎えしたいと思います。
保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。これからの3年間、教職員一同、力を尽くしてお子様の成長を支援してまいります。ご理解、ご協力を賜わりますようお願い申し上げます。
本校は1880年、京都御苑内にわが国最初の公立の美術学校「京都府画学校」として創立されました。そしてこの4月1日、新天地であるこの場所に移転、「京都市立美術工芸高等学校」と校名を改称しました。本校は美術工芸科単独の高校として143年を迎えた長い歴史と深い伝統をもつ学校であり、本校を卒業された諸先輩方は、美術工芸界、産業界ほか、各方面で活躍されています。皆さんは、晴れてこの歴史と伝統のある美術工芸高等学校として最初の入学生となり、京都市立美術工芸高等学校の3期生として、この良き伝統を引き継ぐと共に、新しい歴史を刻んでいくことになります。
皆さんには学校説明会等で本校の学校グランドビジョンについてお伝えしてきましたが、私たち教職員と教育委員会は、これからの予測困難な社会で生き抜くための教育に何が必要不可欠かを検討し、「CAREER PRODUCE」や「BIKO steAm」といった新しい教育活動を策定し、実践することにしました。皆さんが現地点で持っている様々な興味・関心をより高め、確実な力になるよう導いていくためのものです。
さて入学にあたり、新入学生の皆さんに2つのお話をさせていただきます。
1つ目は「新しい出会いに挑戦しよう」ということです。
これまでの習慣や先入観から自らを解放し、新しい環境や状況へ恐れずに向う必要性についてです。皆さん一人ひとりが持っている若々しい精神と感性を、新しい出会いで磨かれることを願っています。
とはいえ実際は大変な努力が必要です。ここで校長として立っております私自身も、かつては新しいことに臆病で消極的な青年でした。芸術とは無縁の、田んぼや畑に囲まれた田舎で育ちました。芸術の都・京都に出てきたときはカルチャーショックの連続でした。自分は学校では一番美術ができていたのに、それよりも上手い人がごく当たり前に大勢います。まさに強烈な新しい出会いです。最初は不安やコンプレックスだらけになり、自分の殻に閉じこもろうとしていた私が、そのなかで学んだのは「恐れているものにこそ大いなる可能性がある」ということでした。新しいことや知らないことへの恐れは、誰もが感じることです。ただそこで怖がって行動しなければ何も変わらず、後悔することだけが残ることを学びました。若い感性のなかで学んだことすべてが、皆さんの糧となるのです。新しい挑戦をすればするほど、失敗も多くあるでしょう。もし万が一にも皆さんが新しい環境に挫けそうになったら、そのときは私たち教職員がサポートします。安心して自分の未知の可能性へ、思いきり突き進んで欲しいと願っています。
2つ目は、自己表現をするためにもしっかりとした語彙力や文章力を身につけて欲しいとのお願いです。造形作品だけではなく言葉による表現も同時に追求することで、皆さんの精神力や思考力・表現力が鍛えられます。現代社会においては、ものづくりに加え、文章を書いて言葉で造形作品を解説するなど、様々なコミュニケーションツールを使うことが評価に繋がる現状にあります。加えて、自分は芸術系だからなどと限定せずに、科学者のような明晰な観察能力、考古学者のような発見の努力にもぜひチャレンジしてください。
最後に、仏教の禅の教えを記した哲学者である「鈴木大拙」の残した言葉、「外は広く、内は深い」を贈りたいと思います。
これまで皆さんは、高校入学を大きな目標として頑張ってこられました。18歳成人を迎えることになる高校時代は、新しい人生のステージに向けて出発となります。皆さんの「自己発見」と「自己表現」に向けての本格的な旅立ちであると私は思っています。これまで自分でも気が付かなかった、思いもかけなかった自分の能力や適性を発見することになるでしょう。鈴木大拙の言葉「外は広く、内は深い」とは、自分自身の心の内を探っていくといつまで行っても果てがない。また、自分自身の外を見ると果てしなく広く、どこまで行ってもまた果てがない。自分自身の中も外も同様に深くて広い。人間存在の絶対的真理を探究し続けた大拙がいわんとしたことは、「独りよがりになることなく、また自らを失うことなく、真理探究に励みなさい」ということとされています。皆さんには無限の可能性があります。ぜひとも「外は広く、内は深い」という言葉を噛みしめながら、実り多い学校生活を送ってください。
皆さんの力と可能性を大いに期待し、式辞といたします。
令和5年4月10日
京都市立美術工芸高等学校 校長 名和野 新吾