学校日記

2年生を対象に井上章一先生講演会を行いました!

公開日
2015/02/01
更新日
2015/02/01

学校の様子

 1月29日(木)15時20分から,本校7階大講義室において,国際日本文化研究センター副所長の井上章一教授をお迎えし,特別講演会を行いました。
 井上先生には,一昨年にも,当時の1年生(現3年生・10期生)を対象に「海をこえた日本」と題して御講演いただいております。今回の演題は「ブラジルで考えたこと」。ブラジル,リオデジャネイロに滞在された折の,日本人との文化や民族性の違いに気付かれた様々な逸話や経験を中心にお話し下さいました。
 冒頭,「つかみ」ということで,ブラジルの禿(ハゲ)事情についてお話になりました。短期滞在されていた時に耳にした「女はみんなハゲがすき」(本当の題名は「我らハゲ仲間」というサンバ曲だそうです。)にまつわるエピソードから,禿げた人がそれを隠すこともないブラジルの状況と,国民のほとんどが鬘(かつら)の会社名や毛生え薬の会社名を知っている日本の状況を比較して,現代日本はハゲには不幸な国・文化だと思いを馳せ,そのことを文章にしたけれども,後に長期滞在された時にいろいろわかったことがあって,「少しの滞在でわかった気になってはいけない」と,笑い満載のハゲ談義の締めくくりにおっしゃいました。
 次に,ブラジルの話題(高校には職員室・クラブ活動・運動会・遠足等がない,大学の学長選挙は学生も投票でき,候補者が学内で演説をする,議会総選挙の投票率は100%。行かないと罰金があるから。また,字が書けない人のために投票は押しボタン式。投票日直前には候補者が「何番」「何番」と押しボタンの番号を連呼している・・等)を紹介しつつ,井上先生が実際に経験・遭遇された御経験談を踏まえて,次のように述べられました。「ブラジルでは,自分には能力がある,自分が優れている,と自己主張をする態度こそが普通で,日本式の謙虚なふるまいを見せると,ともすれば,卑怯でずるいと彼らには映ります。」・・・美徳とされるものが国によって異なることは,民族性や文化,風土の違いと言ってしまえばその通りですが,文化的背景を異にする人々それぞれの「常識」を理解・尊重しながら,誤解を排した形で接していくためにはどうすれば良いかを考える契機となる,大変示唆に富む内容でした。
 また,ブラジルの「キョート」の話題についてもお話し下さいました。リオデジャネイロで出身地を聞かれ,「京都から来ました」と答えた井上先生の言葉に,現地の人から等しく笑いが生じたとのこと。実は,リオの害虫駆除の会社名が「キョート」で,「KIOTO」と書かれたトラックが街中を走っているそうです。(ちなみに,リオのもう一つの駆除会社は「カナザワ」で,イギリス・ロンドンのアリ駆除のスプレーは「NIPPON」です。)
 なお,「アムステルダム」は宝石店,「コペンハーゲン」はチョコレート店だそうで,そういった事例から,<世界の人々の日本や日本人に対する認識はどのようなものなのか>についてお話が広がっていきました。

 生徒たちは,その独特のユーモアを交えた語り口調に絶えず笑いの渦に巻き込まれながらも,1年生の3月に行った海外フィールドワークとそのまとめ,2年生8月に15人で行った「トップリーダー研修」等の経験を踏まえながら,“短期滞在ではその国のうわべだけしか見えず,長く滞在し,その国の人たちに深く接してみて初めてわかることも多いこと”,そして“世界には様々なものの見方・感じ方・考え方があること”,“一つの側面から考えているだけでは見落とすものが多く,歴史的な経緯も含めて,しっかりとした理解を深めることが大切であること”などを感じていたようです。

 生徒の感想の一部です。

・「日本人の謙虚さが卑怯に見える」というのは驚きでした。文化によって考え方も大きく異なり,国が違えば「当たり前」が違うということがよく分かりました。
・私たちも他の国に対して勝手にイメージを作ってしまっているのではないかと感じました。長く滞在しないとその国の文化はわからないのに,行かないままメディアの情報だけである国のイメージを決めてしまっていてはもったいないと思います。
・日本人は「華」がない民族,という表現,しっくりきました。自分が海外に出たら,日本らしい,世界に認められる「華」を発信していきたいです。
・つかみどころのない演題でしたが,まんまと話に引き込まれました。たしかにこのタイトルしか付けようがないかもしれません。
・人を惹きつける巧みな話し方でした。メモを全然取っていないのに,しっかりと内容が頭に残っています。先生のように,自分の考えをわかりやすく面白く伝えられるようになりたいと思いました。

 以上ごく一部のみ御紹介しましたが,パワーポイントやレジュメを利用した講演とはまた一味違った,興味深い話題と巧みな分析が満載の,聴衆の様子に応じて臨機応変に進めつつも,最終的にはあるテーマにつながっているという先生の御講演スタイルに生徒たちは感銘を受けていました。そして,様々なものに興味を持って自分の力で追究していくことの大切さや面白さを今まで以上に理解したようです。

 今回の御講演を契機に,まずは自らの文化や価値観について理解を深めるとともに,国内・国外を問わず,さまざまな人や文化との真の交流・相互理解をすることができるように,思い込みを排し,歴史的・地理的な視点を含め,異文化理解に努めていってほしいと思います。そして,実際の交流を行う際には,じっくり腰を据えて,心と心でつながる付き合いを深めていくように心掛けてくれればと願っています。
 井上先生,お忙しい中御講演下さり,ありがとうございました!