「無駄は大事や」=3%を求めて=
- 公開日
- 2010/04/06
- 更新日
- 2010/04/06
校長室から
平成20年度から麻疹(はしか)予防の無料接種が平成24年度までの5年間、実施されることになりました。無料接種の対象はその5年間の各年度の中学1年生と高校3年生です。予防接種が無かった時代は、多くの子供が麻疹を患ったものでした。私もその一人です。当時は誰しもが罹(かか)る病気として、あまりたいそうに扱っていなかったように思います。幼少時に罹ると軽度の症状ですむというぐらいで、麻疹に罹れば「これで、麻疹には、もうかからんわ」と家人に言われて片付けられていました。麻疹に罹れば免疫(抗体)ができてそれ以降はもう麻疹に罹らなくて済むからです。この免疫をつくる体内の「T細胞」と呼ばれる細胞について本で読んだことがあります。その内容についてちょっと述べますので我慢して読んでください。
免疫をつくるT細胞は体内でやたら多くつくられるようです。このやたらと多くつくられたT細胞を胸腺(肋骨の後ろ側にある器官)が「資格検査」をします。その結果、本当に抗体として役立つもの以外は胸腺が抹殺します。その抗体として役立つのは、多くつくられた中のほんの3%しかなく、残りの97%は抹殺されるというのです。それなら、はじめからその優秀な3%のT細胞だけをつくれば良いというようなものですが、それができないのです。つまり97%の無駄の上に良質な3%の生産が成り立っているからです。無駄を多くしないと良質なT細胞が確保できないという仕組みになっています。すべてを効率的に、と考えてもそうは現実にはいかないということです。
野球の守備練習にノックは欠かせません。「百本ノック」では足腰がふらつく程に高校球児はノックを受けています。考えれば、1試合でどれほどの守備機会があるのでしょう。一つのポジションで3〜4回ほどでしょうか。ボールが3〜4回しか飛んで来ないのに百本ノックを受ける。これは1回の守備機会を無難にミスなくこなすために、百本の無駄を繰り返すのです。つまり良質な守備が百本のノックから生まれるという事なのです。
さて、私たちが夢を目標に向かって物事を計画し努力するとき、「こんな事ばかりして何になるのかな?」と立ち止まることはないでしょうか。無駄と思われるものから良質な成果物が生まれることを思い起こして下さい。97%の無駄を無駄と考えて70や80%に抑えてしまうと、成果物の良質さは落ちるであろうことは予想されます。野球で言えば、百本ノックという練習を避けては守備の上達が見込めないのと同じです。
長くなりましたが、誰しもが夢を求め、一つの成果を出したいと願っている事と思います。勉強で良い成績を取りたい、クラブで優秀な成績を獲得したい等、その夢や目標を抱いていると思います。その目標の達成には97%の無駄な努力の支えが必要です。皆さんは97%の努力をどう捉えるでしょうか。97%の「無駄」にどこまで時間や体力、知力を注ぎこめるでしょうか?最近の即席主義では気の遠くなる話ですが、精度の高い3%を求めるにはワンタッチで事が足りるような便利主義だけでは叶わないように思います。かつて私の知人が言いました。「無駄は大事や」と。
=校長室だより 第1号からの転載です=