立春
- 公開日
- 2010/02/04
- 更新日
- 2010/02/04
校長室から
今日は立春である。いよいよ春が始まる。3年生の春も待ち遠しい。
やはり春という言葉を聞くと,芭蕉の『おくのほそ道』を思い出す。「月日は百代の……」である。そのちょうど中頃に,「去年の秋,江上の破屋に蜘蛛の古巣をはらひて,やや年も暮れ,春立てる霞の空に白河の関超えんと,……」とある。人生を旅にたとえて,決死の思いで旅立つ芭蕉の姿が思い出される。それは,「住めるかたは人に譲り」とあるように,今まで住んでいた深川の芭蕉庵を人に渡して,もう帰れないかもしれないと思いで,旅に出るのである。それに比べて今の旅は,新幹線でディーズニーランドへひとっ飛びである。点から点への移動が旅である今と,始まりから終わりまで旅程そのものがすべて旅である昔との違いであろう。そうした中で,人生を考え,自分を考え,人を思う芭蕉の目がきらっと光る。
現代の慌ただしい中にあって,そうした人生を考え,自分を考え,人を思うとはどのような時だろうか。わたしは,こうした中にあって,『おくのほそ道』などの書物を読むことで,そのことが実現できるように思う。立春を待ち遠しく思っていた芭蕉の気持ちをこの時季に読むことで,その気持ちにぐっと近づくように思う。本は季節を問わず読むことができるが,その中身を考えて,敢えて時季を選んで読んでみることで,なお一層の想像力が増し,違った視点での読みができるものと考える。そんな読書の楽しみ方もあるように思う。