学校日記

ちょっといいはなし 9

公開日
2012/02/10
更新日
2012/02/10

学校の様子

ちょっといいはなし9   

空の上でのお話です。


後輩にとても笑顔のきれいな子がいました。
 愛らしい口元、口角はいつもきゅっと上がっていて、彼女の笑顔はそばにいる人を和ませてくれます。
 沖縄に一泊して羽田に帰るフライトでのことです。
 羽田に到着し、お客様が降機なさるのをお見送りしている祭、
「あなたの笑顔、とびっきり素敵だったわ」
と、その後輩に一人の女性のお客様が声をかけてくださいました。
 飛行機という客室の空間だからなのでしょうか。キャビンアテンダント(CA)の表情や立ち振る舞いを受け止め、コメントをくださるお客様は少なくありません。
「ありがとうございます。素敵な一日をお過ごしくださいませ」
 後輩はうれしそうに微笑み、お礼の言葉かけをしてお客様を見送りました。

「お客様からお褒めの言葉を頂戴していましたね。本当に今日の笑顔はとびっきり素敵だったわ」
降りるための片付けをしながら、私も感じていたことを口にしました。にこにこ顔でサービスしている彼女がとても印象的だったのです。
「ありがとうございます。うれしいです」
と微笑んだ彼女でしたが、そのあとに驚きの言葉を続けました。
「実は、今朝、父の病状が急変して、危篤との連絡がきたんです。クルーの皆さんにご迷惑はかけられないので黙っていたのですが。先輩だけには伝えようと思ったものの口にすると泣いてしまいそうで、結局、到着するまで言えなくて・・・・・。父のことを考えると、悲しい顔になってしまいそうで、今日はいつもよりもっともっと笑顔を心がけていたんです。でも・・・」
 そこまで一気に話したとたん、とうとう堪えていた涙があふれてきてしまいました。
「そうだったの。つらかったでしょう。気がつかなくてごめんなさい」
 不安定な精神状態のはずなのに、そんなことは微塵も出さず、最高の笑顔でフライトを終えた後輩の強い精神力とプロ意識に思わず胸が熱くなりました。
 涙をこらえるのがやっとだった私は、気の利いた励ましの言葉もかけられないまま、「さあ、早くお父様のところに」と送り出すのが精一杯でした。
 機内という舞台で立派にパフォーマンスをし終えて降機していく、彼女の後ろ姿には、凜とした力強さがありました。