学校日記

ちょっといいはなし5

公開日
2012/01/26
更新日
2012/01/26

学校の様子

〜A航空会社客室乗務員(CA)のお話より〜

 娘と妻と三人で福岡に帰る日。 
お医者様の判断により、往路便と同様、普通に座席に座るのではなく、ストレッチャー旅客として、ベッドに寝たまま搭乗することになりました。ベージュ色のカーテンで仕切られているので、一般のお客様はいつもとは違うと思っても、そこにベッドがあって、病人が寝たまま飛行機に乗っているなどと想像もつかないはずです。 小学校四年生の娘は心臓病を患っており、今回、東京で手術をしていただいたのですが、経過は順調とはいかず、この日は完治しないまま福岡に戻ることになりました。
 私たちは、ベッドの装着時、準備に時間を要するため、最初に搭乗させてもらいました。
 二回目とはいえ、まだまだ慣れない娘は、不安と緊張から顔がこわばっています。
 私もそうでした。
そんな私たちを、たくさんのキャビンアテンダント(CA)さんが「こんにちは」「ご搭乗ありがとうございます」「大丈夫ですよ」と温かく迎えてくださり、安心して搭乗することができました。
娘はすぐに客室後方に運ばれ、担架からストレッチャーに移されました。胸元にいくつものベルトが装着されていきます。
 妻と私は、通路を挟んで隣に座りました。
すぐに私どもを担当して下さるCAさんが、ご挨拶にいらっしゃり、「本日担当させていただきます○○です。どうかよろしくお願いいたします。何でもお気軽にお声をおかけくださいね。おつらくないですか?」
 などやさしく笑顔で話しかけてくれました。
さらに、ご自分の小学校時代の笑い話などをしてくださり、娘の緊張を取り除いてくれました。
長時間の移動で疲れたのでしょう。ほかのお客様の搭乗が終わり、飛行機が動き出す頃には、娘はスウスウと寝息をたてて眠っていました。
上空で、飲み物のサービスが終わった頃、先程のCAさんが声をかけてくださいました。
 娘がいろいろとお話しているうちに、手術のことや、娘が飛行機に乗るのを楽しみにしていたこと、実は今日が娘の10歳の誕生日であることなども思わず口にしていました。
しばらくして、娘が目を覚ましました。
すると、担当のCAさんと一緒に二人のCAさんがいらして、「ハッピーバースデートウーユー」と小声で歌い始めてくれたのです。
それだけではありません。「おめでとうございます」と、手作りのキャンディバスケットとクルー(乗務員)の方々が書いてくださった励ましのメッセージ入りの絵葉書をもってきてくださいました。
娘は突然の出来事にびっくりしながらも、うれしそうに微笑んでいます。
久しぶりに見た娘の笑顔でした。
CAさんたちがバースデーソングの1番を歌い終わった、と思ったら、また、ハッピーバースデートウーユー」が始まりました。それもカーテンの外で・・・。
「え・・・どうしたの?」
 私たち家族、そしてCAさんまでもが驚き、顔を見合わせました。
カーテンを少し開けてみると、さらに驚きました。近くにお座りの女性のお客様方が歌ってくれていたのです、娘のために。
さっき話していたのが聞こえていたのでしょう。
大合唱ではありませんでしたが、その歌声は、客室に響き渡りました。
気づくと男性の声も混じっていました。多くの人の歌声がカーテン越しに聞こえてきます。
とても穏やかな幸せな気持ちになりました。
手術や入院生活の疲れも忘れてしまえるような、素敵な歌声でした。
娘の誕生日をこんなにも多くの方にお祝いしていただくなんて・・・。
大変ありがたいと思う気持ちと、娘の不憫を思う気持ちで胸がいっぱいになり、涙があふれ出てしまいました。
娘の目にも涙があふれていました。
「よかったな。こんなに多くの人にお祝いしてもらって、幸せだね」
と娘に声をかけると、
「うん。こんなにたくさんの人にお祝いしてもらったのは初めて」
とうれしそうに答えました。
 カーテンに仕切られ、ベッドに寝ている娘の姿は見えないのに歌ってくださった皆様の好意、心から「ありがとうございます」と頭を下げ続けました。
人って温かいな。世の中捨てたものではないな。
皆様に大きな勇気と温かさをいただきました。
カーテン越しに聞こえてくる皆さんの歌声に気づき、「私に?」と尋ねた娘の顔は今でも忘れられません。
これからも前途多難ですが、家族三人、力を合わせて生きていきます。