ちょっといいはなし 4
- 公開日
- 2012/01/23
- 更新日
- 2012/01/23
学校の様子
〜空の上のおはなし 2〜
「機内で、姿勢を正したまま、かなり緊張している一人の青年を見かけました。
スーツをビシッと決めて、ネクタイもきっちり結び、両手はグッと握られています。
肩に力が入っているとすぐにわかりました。
飛行機が苦手な方がよくそうなさいますので、何かあってはと、様子を窺っていました。
恐怖心からリラックスできなかったり、閉所恐怖症の方だったりすると、その緊張から体がこわばり、時に具合が悪くなってしまうこともあるからです。
「お客様、大丈夫ですか。あと30分で函館に到着いたします。出張でいらっしゃいますか」
と言葉をかけたのですが、「あ。はい」との返事のみ。
不安になり、表情を窺ったのですが、脂汗をかいているわけでもなければ、体調が悪そうににも見えません。どうやらただ単に緊張しているようです。
ふと足元を見ると、前の座席の下にしっかりと包装されたお酒の箱のような物が置いてありました。どなたかへのお土産のようにも見えます。そこで、
「これから大事な商談でもあるのですか」
と、もう一歩踏み込んで伺ってみました。すると、
「はい。いいえ、いや、そうなんです。実は、これから彼女のご両親に結婚の挨拶に行くところで、そのお土産なんです。今日初めてご両親にお会いするんで、緊張と不安でいっぱいで・・・」
「まあ、それはおめでとうございます。素敵ですね。きっと大丈夫ですよ。自信をもってください。自信がないように見えると、相手のご両親も不安になってしまいますから、この人なら娘を託せると思ってもらえるようにしっかりと振る舞ってくださいね。」
と言うと、こわばったままの顔に笑みを浮かべながら、頷いてくださいました。
「もしよろしかったら、感じがよいと思っていただけるコツをお伝えいたしましょうか」とお勧めしてみました。
「あ、はい、お願いします。」
というわけで、即席のレッスンが始まりました。
「信頼していただけるよう、誠実さをアピールすることを忘れないでくださいね。 あとは、自分のことばかり話すのではなく、ご両親のお話を熱心に傾聴することに集中しましょう」
など、まずは姿勢から、そして表情、話し方・・・、今回の大事な旅でお役立ていただけるようなことを、思いつく限り、熱っぽくお話させていただきました。
周りが空席ばかりだったので、お客様も一生懸命練習されていました。そして最後には、
「おかげで様でだいぶ緊張が解けました。レッスンを受けて自信もつきました。ありがとうございます。このままの自分をぶつけてみます」
と、力強いお言葉をいただきました。
この時の笑顔、そして話し方は、先程までと打って変わって魅力的になっていました。 私もうれしくなり、自然と笑顔になっていました。
お客様が降りられる際、
「お幸せに!頑張って下さい!」
「あなたなら大丈夫」
など、キャビンアテンダント数人で応援メッセージを書いた絵はがきをお渡ししました。
未来のお父様の好物のお酒を大事そうにしっかり抱えながら、「お守りにします!」
と絵はがきをうれしそうに受け取り、降りていかれたお客様の背中に、私どもキャビンアテンダントも心の底からエールを送ったのでした。」
この青年の気持ちがわかる方、保護者の中にもたくさんおいでになるのではないですか。