ちょっといい話 2
- 公開日
- 2012/01/17
- 更新日
- 2012/01/17
学校の様子
今日は空の上の出来事、A航空会社のキャビンアテンダントさんのお話です。
「満席の松山便に乗務した時の出来事です。
ベルト着用のサインが消えて、飲み物サービスを開始したときのこと、眠たくなったのか、赤ちゃんが、突然、大きな声で泣き始めました。
松山便はビジネスパーソンの方が多く乗られます。この日も、夕方の便ということもあって、仕事を終えて缶ビールを片手にほっと一息ついているお客様や、完全に眠りについているお客様など、機内はすっかりおくつろぎモード。その雰囲気が赤ちゃんの泣き声で一変したのです。
最初は座席であやしていた、まだお若いであろうお母様もさすがにいたたまれなくなったのでしょう、少しでもほかの方々から泣き声も遠ざけようと、客室後方の空きスペースに移動され、子守歌を歌ったり、あやしたり、それはそれは懸命に汗を流しながら赤ちゃんをなだめようとなさっていました。
「お騒がせしております」
「赤ちゃんが眠いようですね」
と言葉をかけながら飲み物サービスを終了させた後、私も駆けつけました。
ところが、子守歌を歌っても、「いないいないばあ」をしても、泣きやみません。
少し風邪気味とのことだったので、
「気圧の関係で耳が痛くて泣いているのかもしれません。ぬるめのミルクをお持ちいたしましょうか」
などと提案して飲ませようとしたのですが、いっさい受け付けてくれません。
「いったい何をやっているんだ。静かにさせろ。うるさい」と、声に出して言う人はいませんでしたが、いい加減にしてほしいという険悪なムードがキャビン(機内)全体に漂っていました。
「ご迷惑をおかけいたします。申し訳ありません」
と私たち客室乗務員もお詫びを申しあげながら、なんとかできないものかしらと困り果てていました。
その時です。
60代のご婦人が化粧室に立たれたのか、近寄っていらっしゃいました。
そして「ちょっと抱っこさせてね」と言うと、慣れた手つきで受け取り、あかちゃんの頬を自分の胸にぎゅっと押しつけ、子守歌を歌い始めたのです。
「ねーんねーんころーりーよ、おこーろーりーよー」
2、3分経ったでしょうか。
赤ちゃんはまだ泣き続けていましたが、周りの方の表情が変わってきました。
「うるさいな」とにらむような目で何度も振り返ってこちらを見ていた方も、イライラして貧乏ゆすりをしていた方も、低い声で歌うおばあちゃんの子守歌に聴き入っているようです。
険悪なムードが漂っていた客室が和やかな雰囲気に包まれ、私もいつしか童心に返っていました。きっと多くのお客様がそうだったのではないか、と思います。
ふと気がつくと、赤ちゃんはすやすや眠っていました。
お母様と私は安堵し、顔を見合わせ、笑みを浮かべました
そんな私たちに、ご婦人は、
「いいかい。こうやって自分の心臓の音を赤ちゃんに聞かせるの。胎児だった時に聞いた音だから赤ちゃんが安心するのよ。抱いている人の心が赤ちゃんに伝わるの。だからね、こういう時は、まずゆったり自分の心を落ち着かせることが大切なのよ」
そう言って、お席に戻って行かれました。その小さな背中は、凜としていて、頼りがいがあり、やさしさが満ちあふれていました。
「ありがとうございます」
私は何度も心の中でお礼を言いました。」
機内をやさしさが満たしているようです。
生徒の皆さん是非読んで下さい。
私はこの話を聞いて、最近公開された映画を思い出しました。
「阪急電車」といいます。