学校日記

給食週間によせて 〜ランプへの想い〜

公開日
2019/01/26
更新日
2019/01/26

校長室から

◆作家の水上勉氏がエッセーの中で自身の幼少の頃を振り返って書いています。彼は若狭の極貧の家庭に生まれ育ちました。そのため,家には電灯がなく,たった一つのランプを使って家族は夜を過ごしていたそうです。ひとつしかないランプは,ある時は玄関,ある時は仕事場,またある時は台所へ行き来しました。ランプを吊るして移動させるための針金が家中に張り巡らされ,ランプの行き来のたびに金属の擦れた音が鳴り響いたそうです。彼は擦れた金属音を聞くたびに,幼少の貧しかった頃を思い出したそうです。

◆朝のニュースで旅の特集をしていました。テーマは「ランプの宿」。能登半島や青森・岐阜の山奥に点在しています。宿の売りはもちろんランプ。それも徹底していて,夜になると一切電灯を使わずにランプだけで過ごします。ランプの小さく赤い炎が背後の漆黒の闇をより強調し幻想的な旅情を誘うのです。暗くて不自由な分,料金は安いかというと特にそういうこともありません。むしろ,都会では決して味わうことのできないこの体験を求め,週末になると多くのリピーターがやってくるといいます。

◆食に関わる青少年の問題に「こ食」があります。「こ食」とは,孤食(一人で)・個食(一人ずつ別メニューで)・子食(子どもだけで)・固食(いつも決まったメニューで)・小食(少食)等の食事の食べ方を示しています。毎日家族そろって夕食を摂る比率は年々低下し,親と一緒に食事をしていない子どもは,小学生で2割,中学生で4割超になります。
この「こ食」という言葉は20年以上前から使われていますが,最近は,一人の方が煩わしさがなくて良いという気持ちに変化してきています。「こ食」で育った子どもが親となった今,どのような食の環境がこれから広がっていくのでしょうか。

◆今や外食産業が栄え,コンビニに行けば食べたいメニューを好きなだけ選ぶことができます。しかも24時間いつでも利用できます。一人で食事をすれば聞きたくない話を聞くこともなく,相手を気遣ったり慰めたりする必要もありません。しかしその食事を作ってくれた人の顔は見えてきません。「私」というもの,「個」というものを追求した一つの姿かもしれません。

◆水上さんの家族は夕食時にはどうしていたでしょう?きっとひとつしかないランプの下で,家族そろって食事をとったにちがいありません。貧しさゆえのことです。しかし,そこには家族の顔がありました。今日の出来事,楽しかったこと,悔しかったこと,一人一人の日常を知る会話がそこにはあったはずです。食事は粗末だったかもしれませんが,家族みんなで顔を見合わせて過ごす一時でした。

◆ランプが象徴するものはいったい何でしょう。「豊かさ」?それとも「貧しさ」?「豊かさ」とはいったい何でしょう?そして「貧しさ」とはいったい何なのでしょうか?給食週間を迎えるにあたり,まず私たち大人が考えてみたいと思います。