最新更新日:2024/06/12 | |
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〜95歳のおばあちゃまからの贈り物〜
ある日のことでした。
「校長先生いらっしゃいますか・・」 その電話の声は北門近くにお住まいの95歳になられるおばあちゃまでした。おばあちゃまは,この年齢でもう自分は長くは生きられないであろうからとご自宅の整理をしておられるとのことでした。 私は,数年下鴨中学校で働いておりますのでそのおばあちゃまのご自宅を知っていました。教頭先生と二人で午後の昼下がりにそのご自宅にお邪魔しました。 おばあちゃまは,下鴨中学校の生徒の皆さんの役に立つことはないだろうかといつも考えて下さっています。そして,昨年は年代ものの,木箱に入った百人一首をお使い下さいと頂戴致しました。国語の時間に,各学年の先生方に見せてもらって下さい。とても素敵な筆遣いで歴史的仮名遣いも良く読み取れる素敵な札です。 教頭先生とお邪魔した日に,「ごんぎつね」の絵本と客間に飾ってあった一枚の額縁に入った絵を『これを生徒さん達に・・・』とおっしゃいました。私達は,大切にされてきた品物を頂戴するわけにはいかないと一度はお断りしました。しかしながら,おばあちゃまは,『この絵は青蓮院のクスノキの絵なのです。生命力のみなぎるこの姿を生徒さん達に観てもらいたいんです。私がこの絵から力をもらってここまで生きてきた。大地に根付くクスノキの絵を観て,これからの下鴨中学校の生徒さん達に頑張ってもらいたい・・・』そう言ったおばあちゃまを拝顔しているうちに,私は即座に『そういうことでしたら,おばあちゃま,学校に飾らせていただきます』と答えていました。 おばあちゃまは,目頭を幼い子どもがそうするように,手の甲で拭きながら,『嬉しい・・・この絵が下鴨中学校に残る・・・』と号泣しながらおっしゃいました。 今,その絵は校長室にあります。3年生の公立高校中期選抜を終えて,現在の全校生徒が揃う間におばあちゃまの想いを伝えたいと思います。そして,ずっと校内に飾りたいと考えています。ごんぎつねの絵本は,図書室に特別に配架させていただきます。 クスノキは,長命で様々な用途に重宝される常緑高木です。 福山雅治氏が2014年に作った歌『クスノキ』を思い出します。なぜ,彼がそれを歌にしたのかは,調べてみて下さい。そして,考えてみて下さい。 −粟津様,下鴨中学校の生徒達の為にお心を頂戴し,本当にありがとうございました。大切に校内に飾らせていただきます。− 下鴨中学校 校長 西村 周 |
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