ちょっといい話—99—
- 公開日
- 2012/11/17
- 更新日
- 2012/11/17
学校の様子
冷たい雨が降り続く土曜日ですが、心温まる「ちょっといいお話」を・・・。
わずか1分たらずの出来事が、10年間も心を温め続けているといういいお話です(「涙が出るほどいい話」(河出書房新社・刊)より)。
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『赤城おろしの坂道で』
赤城おろしが砂ぼこりをあげて吹きつける11月の寒い日のこと。
車椅子の私は買い物に出た帰り道、途中の上り坂まで来ました。歩いて上るならなんともない、わずか五メートルほどの坂なのですが、車椅子で上るのは大変なのです。
息をととのえて私は坂を上りはじめました。折からの強い向かい風とで、思ったよりも前に進みません。泣きたい気持ちでひとこぎ、ひとこぎ、今にも止まってしまいそうなスピードで坂の中ほどまで来た時でした。急に車椅子が軽くなったのです。
誰かが押してくれているのがすぐにわかりました。ありがたいのと嬉しさがこみあげてくるのを感じながら、私も力いっぱい車椅子をこぎました。
坂を上りきり後ろを向くと、そこには小学五年生くらいの女の子が立っていたのです。
「ありがとう」
と言うと、女の子はチョコンと頭を下げて坂道をおりて行きました。何にも言わず、黙って私の車椅子を押してくれた女の子の後ろ姿を見送りながら、私の心の中は何とも言えぬ感激でいっぱいになり、とても気持ちの良い涙が流れてきたのです。
10年ほど前のたった1分たらずの出来事でしたが、私にとってこれからもずっと忘れることのできない、とても大切な思い出なのです。