学校日記

染み付く

公開日
2010/02/18
更新日
2010/02/18

校長室から

 15日,月曜日の夜,JR高円寺駅で転落した女性をレールの間に寝かせて,救助した青年の話があったが,人権学習で言ったこと,そのもののようで大変気になった。
 例としては,老人にバスの席を譲る話で,人権学習を行うことで,やはりしなければならないという気持ちというか,勇気付けられることで,その気を再度起こさせられるということを書いたが,まさにそのものズバリであったように思う。助けた青年は,無我夢中であって,危険であるとか怖いとかいうことは全然思いもしなかったが,ただ列車の迫りくる音で,初めてその怖さを覚えたと言っていた。線路内で落ちた人を見て,早く助けなければという行動になったということだ。そこには考える余地などなかった。ただただ助けなければという思いだけが先行したのである。理屈でなく行動が起こるということ自体,体に染みついた人権感覚なのである。本当のものである。もしも……はないが,あの場面で女性が亡くなっていたら,この青年の前途はどうなっただろうと考えてみると,本当によかったなと心から思うばかりである。人って捨てたものじゃないと思えることに接するとき,本当に勇気が湧いてくる。
 ふと,昔,教科書に載っていた吉野弘の「夕焼け」という詩と田宮虎彦の『沖縄の手記から』を思い出した。詩は,老人に席を譲る話であるが,最後の方で,やさしい心の持ち主ゆえに,他人のつらさを自分のつらさのように感じ,席を譲れなかったしんどさとして,やさしい心に責められながら,美しい夕焼けも見ることもなく,どこまでゆけるだろう,と吉野弘は娘を思いやるのである。『沖縄の手記から』は,沖縄戦で,負傷兵を見捨てることができずに壕にとどまる看護婦当間キヨの生き方の話である。一度静かに味わって欲しい。