第13回卒業式 3月15日(火)
- 公開日
- 2022/03/18
- 更新日
- 2022/03/18
行事
京都大原学院の9年生10名が母校を巣立っていきました。
仲間との絆を大切に,これまで学院生みんなをリードしてくれた9年生。いつも通りの卒業式を行うことは叶いませんでしたが,心温まる素敵な卒業式でした。
直接伝えることができないのでと,三千院のご門主やPTA会長から祝辞をお手紙でいただきました。卒業生一人ひとりの心に届きました。ありがとうございました。
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【式辞】
3月に入ってすぐ、私は9年生を校長室に招いて、作文を書いてもらいました。その中の1枚のこの行が、私にはまるで浮かびあがってくるように見えました。
「普通の卒業式がしたいです」
私たちはコロナ禍を生きてもう3年目に入ります。マスクをしない《普通》の生活とはどういうものだったのか、忘れそうになることもあります。
《今までの普通》と比べることはあきらめて、コロナにあわせた《新しい普通》のなかで、今の状況に適応しながら《新しい普通》を生きていきましょう、と社会全体へ呼びかけられ、それもやむを得ないことと思わされそうな中で、ただ、素顔と素顔で話したい。距離を気にせず友達と接近したい。大声で歌を歌いたい。この一文には、当たり前で根源的で切実な願いがこめられています。私は胸の詰まるような思いになりました。
しかし、9年生10人の作文を1枚1枚読んでいくと、そんな状況に簡単には負けなかった豊かな学校生活の思い出と、したたかで元気に生きようとする感性と生命力があふれていました。
「コロナが収束したら何がしたい?」と問いかけました。
するとYHくんは、「マスクを取って思いっきり運動してみんなで笑いたい」と答えました。
《9年間で一番美しい・きれいだと思ったこと》はなんですか。と聞きました。大原の美しさについてもいくつも書かれていました。
HHさんは「お昼に友だちと散歩していた時、何気ない、いつもと変わらない大原の様子がきれいだと思った」と書き、
KHくんは「大原の人は知らない人でも『お帰り』と言ってくれること、大原の、特に雨上がりの空気」と答えました。
KSさんは「大原の豊かな自然です。もともと都会生まれで、空気がきれいではなかったけれど、大原に来て空気や自然もきれいで体調もよくなりました」とふりかえりました。
MMさんは「日が差し込んだ誰もいない教室」「部活の何気ない練習の日に、いいプレーができた時」と書きました。
「移動教室までの友だちとの移動時間」というKHくんのコメントからは、一緒に廊下を歩くだけで楽しい、彼らの姿が鮮やかに目に浮かびました。日常の小さな生活の1コマが、人生に大きな輝きを与える大切なものであること、そしてそのことが豊かな思い出として心に積み重なっていく。そのことがよく分かりました。
MKくんは「長崎の語り部さんが送って下さった手紙が一番美しいというか、心動かされました」といいました。90歳の語り部さんの、平和のために自分の経験を伝えなければ、という気迫を感じとったのだと思いました。
URくんはここに「藤井先生」と書きました。「自分の経験をもとに、僕たちに生きる上で大事なこと、誠実、グレーゾーンなど、いろいろなことを教えてくれた」といいます。担任の先生との確かな信頼を感じました。
《学院生に向けて》のメッセージでは、
OSさんは同級生だけでなく、「沢山の後輩たちが一人の友だちとして私と関わってくれたおかげで、毎日が楽しい学校生活を送ることができました。本当にありがとう。」と感謝します。
MKくんは「自分のことをほどよく好きで、ほどよく嫌いでいて下さい。自分のことを好きな気持ちは前向きさを作ります。自分のことを嫌いな気持ちは自分の課題に向き合う気持ちを作ります。どちらかに偏るのでなく、2つがいいバランスを作ることで、次へ進む一歩となると僕は思います」と語りました。
YHくんは端的に一言、「因果応報」と書きました。後輩のみなさん、「因果応報」自分のしたことは、ちゃんと自分に返ってくるよ。難しい言葉一語でそう諭しました。
みなさんの日常の姿を思い浮かべながら作文を読みました。みなさんがご家族をはじめとする大原の里の人々と自然に見守られ、豊かな学校生活がおくれたこと、すてきなことをたくさん学んだこと、そしてこれからの自分の大切な基礎をしっかりと身につけたことが、よくわかりました。教師としてこれ以上の幸せはありません。
さて、保護者の皆様、本日はお子様のご卒業、おめでとうございます。教職員を代表して、心よりお喜びを申し上げます。
あわせまして、来賓としてお越しいただきました、学校運営協議会理事長、京都大原学院PTA会長、本日はお忙しい中、ご臨席を賜り、まことにありがとうございます。心より御礼申し上げます。
本日、お子様達は、京都大原学院での義務教育9年間の学びを終え、新たな世界へと巣立って行かれます。今、卒業式に臨む子どもたちの、見事に成長した姿を目の前にして、これまでの子育ての歩みを思い返し、万感の思いがこみ上げていらっしゃるのではないかと存じます。私たち教職員にとっても、お子様達との9年間は、充実したすばらしい時間でした。
1年生のある児童が、つい最近、おうちの方に「9年生には、感謝、感謝、感謝やねん」といったそうです。また、9年生は、私への色紙に「いつも1年生と笑顔で接している校長先生は、9年生から見ていても、とても安心できる場所を作っているようでした。」と書いてくれました。8歳上のお兄さん・お姉さんを感謝の気持ちと共に見上げるあこがれの目。8歳下の妹弟が楽しそうにしている姿を喜びながら見守る優しいまなざし。お互いが確かに通い合っていることがしみじみとよく分かる、9年間の小中一貫教育のすばらしさが凝縮されたこのエピソードの符合に、私は静かに感動しています。
私は今年、地域と保護者が共同して守ってきた、歴史ある京都大原学院に赴任してきました。大原での1年をなんとか終えようとする今、卒業生のそうした言葉や、9年生を送るための準備にいそしむ学院生たちの温かい姿を目の当たりにして、9つの学年の交流やつながりの多様さ、そして美しさと、それを育んできた学院の取組と、それを大きく包み込む大原の在り方、確かさに、新たにやってきたものとして驚きと感激の思いでいっぱいです。
9年間、皆様のご協力やご理解のもと、いっしょに子どもたちとの日々の教育活動に邁進できたことを誇りに思います。そして心より感謝致します。本当にありがとうございました。
この後、旅立ちにあたっての子どもたちの最後の対話がここではじまります。どうぞ、その美しいやりとりをご覧いただき、全身で感じ、受けとめていただけたらと思います。
さて、地球の裏側、ヨーロッパでは、まさに今このとき、隣りの大国から理不尽に攻め入られて、戦火の中を逃げ惑うたくさんの子どもたちの姿があります。コロナによる3年にわたる健康の危険と不自由の我慢の上に、突然始まった戦闘の中で命の危険にさらされ、寒さの中を、砲弾をかいくぐって避難せざるをえない人たち・・・。一刻も早い戦闘の終結をと、長崎で平和宣言を読み上げてきた私たちは、心からそう願います。
卒業生のみなさん、「思いやりは想像力」です。思いやりの心と、様々なことに対して素直な好奇心をもち、その解決方法を探求する心を忘れずに、「なぜ、どうして」と、「はてなのアンテナ」をいっぱい立てて、新しい世界を歩んでいって下さい。世界は、あなたが問いを発信すれば、だれかがきっと答えてくれる、そういう場所であると、私は確信してます。その応答が、広く豊かであればあるほど、あなたたちの自分なりの考えという木の幹は、太く、たくましく、確かなものへと育っていくでしょう。
新しい景色と、新しい道と、新しい街と、新しい仲間と、新しい学問と、そして新しい自分と。
たくさんの出会いに満ちた毎日になりますよう、心からお祈りして、私の式辞と致します。
卒業、おめでとうございます。
令和4年3月15日
京都大原学院
校長 瀧本祐一郎