学校日記

応急手当

公開日
2016/01/17
更新日
2016/01/17

校長室の窓から

 前にもお話ししましたが,私は高校野球ファンです。もちろん野球に限らずすべてのスポーツを見るのもするのも好きなのですが…。今年の夏に甲子園で実際に見た,忘れられない光景のお話です。

その日は京都の高校が出場するとあって,いつもより応援に力が入りました。一進一退の好ゲームです。京都の高校がチャンスを迎えています。確かイニングは6回か7回。2アウトでランナーが2・3塁の好機に,バッターがフライを打ち上げました。内野手と外野手のちょうど真ん中あたり,捕球できるかどうか微妙な位置に飛んでいきます。観客は総立ちで打球の行方を追いました。
内野手と外野手はどちらも捕球しようとして全力疾走。その結果,内野手が見事に打球を捕りました。しかし,同時に外野手と激突してしまったのです。2塁の塁審も捕球したかどうかを見極めるため,2人の方向に走りました。内野手は激突した後,倒れたままです。観客も固唾をのんで見守っています。
「アウト!」審判の声が響きます。倒れたものの,ボールはしっかりとグラブの中におさめたままだったのです。割れんばかりの拍手が球場に広がりました。
しかし,ぶつかった選手は立ち上がれません。外野手の方は痛む足を押さえながら立ち上がりましたが,内野手はうずくまったままです。
 そのとき,一人の選手が患部を冷やすためのコールドスプレーを持って倒れた選手に駆け寄りました。そして一生懸命手当てをします。誰もが同じチームの仲間だなと思いました。ところが違ったのです。誰よりも先に駆け寄り,手当てをしたのは京都の高校の選手,つまり敵チームの3塁コーチを務めていた選手だったのです。

 手当の甲斐あって,やがて倒れていた選手は立ち上がり,手当てをしてくれた選手に声をかけてベンチに帰って行きました。手当てをした選手も,笑顔でベンチに戻ります。球場内には,先ほどのファインプレーの時以上に大きな温かい拍手がいつまでも続きました。