最新更新日:2024/09/19 | |
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「平野文庫」閲覧のため,大学の先生が来校されました。
本校図書館の貴重書「平野文庫」閲覧のため,7月7・8日の2日間の日程で,東北大学名誉教授吉田忠先生が仙台から来校されました。
吉田先生は科学史が御専門で,江戸時代,西洋科学を記したオランダ語の書物がどのように翻訳され理解されてきたかの調査研究の一環として,本校所蔵資料の中に他所に存在しない貴重な稿本・写本があることから,閲覧のためお越しになりました。 作業を終えられた吉田先生は,「蘭学関係の資料をこれだけ所蔵している高校は,オランダ語の書物を藩政時代の藩校などから引き継いだ学校が他に二,三あるくらいでほとんどなく,素晴らしい。鈴木博先生(昭和42年当時の本校教諭)が中心となって作られた目録・解題も立派である。」とおっしゃっていました。 調査なさった書物には,例えば江戸時代に一番読まれた物理学の本もあります。刊本自体は割と現存しているのですが,書き込みのある本はなかなかないそうです。本校蔵書には旧蔵者である村松立斎のおびただしい書き込みがあり,これによって当時どのような理解・受容をしていたのかが分かり,科学史研究の上で貴重であるとのことでした。他にも,全国で3〜4部は現存するが,写本であるために,異同を調査するとまた何かわかることが出てくる可能性がある,というものなども調査なさっていました。 高い見識で書物を蒐集された先輩がおられたこと,そしてそれを母校に寄贈して下さったこと,それを分類整理・目録解題するという膨大な作業を行った当時の図書館担当の先生方の努力,そのお蔭で学問研究にも役立てていること,これまでの経過の不思議さと有難さに畏敬と感謝の念を禁じえません。今後とも,貴重書「平野文庫」をしっかりと襲蔵していきたいと思います。 ◎本校図書館「平野文庫」について 本校図書館には,江戸後期から明治初期にかけての,いわゆる洋学関係文献が二百数十部・約600冊襲蔵されており,分野は語学・地理風俗・歴史・理科・医薬・兵学・政治経済・新聞の各方面にわたっていて,中には極めて稀覯のものも含まれています。 本校は明治19年(1886年)に創立された京都府商業学校の後身で(今年の入学生エンタープライジング科12期生は,通算128期生ということになります),第1回卒業生を明治23年に出した後,明治34年に京都市に移管されて京都市立商業学校となり,明治42年には京都市立第一商業学校と改称し(大宮五辻に第二商業学校が出来たため),戦後は西京高→西京商高→西京高と改称して現在に至っています。 この貴重文献は,第1回卒業生の平野広太郎氏が昭和3年5月に寄贈されたものであり,一般図書とは別置して大切に保存してきました。 平野氏は貿易業をやめられた後,神奈川県大磯に居を構えてから学問研究に進まれ,洋学関係文献以外にも仏教・文学・物理学・数学などの内外の文献を多種多様に蒐集され,蔵書を「湖南文庫」と称しておられました。たまたま卒業後初めて同窓大会に出席された折,その盛況に感激のあまり,当時の校長に,本校教育の一層の振興発展のために所蔵図書の一部門(洋学関係)を母校に寄贈するとの篤志を述べられました。これが現在の平野文庫として現在も受け継がれているわけです。 [写真] 1枚目 右 Kruid Kunde(森田千庵写本)表紙 左 ドドネウスの蘭訳植物書からの本草名集(森田千庵写本) 2枚目 1枚目左の一部を拡大したもの |
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