最新更新日:2024/09/24 | |
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FOUNTAIN(校長室だより)No.8
京都市立桂坂小学校 山本 泉
前回は,「しかる教育とほめる教育」についてのお話で「しかる教育」について書きました。 今回は,「ほめる教育」について考えてみたいと思います。前回,「しかる」ということは「子どもをより良い方向に導く方法・手段」と述べましたが,「ほめる」ということも,やはり同じでなくてはなりません。それでは,どんな風に「ほめる」ことを「ほめる教育」と言うのでしょうか。 【ほめる教育】 [なし遂げた結果以上に努力しようとした意欲をほめる] 子どもが努力して良い結果が出た場合,親だったら大抵ほめると思います。しかし,良い結果が出なかった場合はどうでしょうか。まさか冷たく「残念」の一言でその努力を切り捨ててしまうことはないでしょうが,優しく慰めるにしても,なかなかうまく声かけがしにくいものではないでしょうか。 でも,そういう風に場合によって変えようとすることではなく,結果如何にかかわらず,やろうとした意欲をほめることが大切だということです。 [子どものいいところを見つけ出すよう心がける] ほめて育てるためには,常に子どもの「いいところ」を見つける努力が必要です。いいところが無い?そんなことは絶対ありません。いいところばっかり?それもちょっと危ないですが…。 例えば子どもが悪いこと(間違ったこと)をした場合,普通は「しかる」言葉を使ってしまいます。しかし「ほめる教育」ではそんな時でも決して「しかる」言葉を使わないといいます。一連の子どもの行為の中で,よかった所を沢山見つけ出してほめてやるのです。そして最後に「良くなかった所はどこだった?」と尋ね,自分の口から悪かったところを言わせるようにすると,子どもが今度からしないようにしようと心に刻むことができるそうです。 [うわべだけでなく,心からほめる] 親が子どもをほめる時,自分の価値観に照らし合わせて,その規準を満たした場合について高く評価してほめるということが普通だと思いますが,多くの場合その価値観が子どもとの間でズレがあり,子どもがほめてほしいと思っている絶好のタイミングをはずしてしまうことがあるようです。ですから,いつも(忙しい時でも)子どもに対してアンテナを向けておくことや,自分の価値観を超えてほめることも大切なことだといわれます。 しかし,自分の価値観に合わないことをほめるときには注意が必要です。うわべだけでほめると,子どもは必ず察知します。ほめるときには,どんな場合でも本気でほめないと教育効果がマイナスになることもあるということです。 [言葉でほめるだけでは足りないときもある] 大人でも子どもでもほめられるとうれしいものです。そして,またほめられるよう努力しようという意欲も湧いてきます。しかし,子どもの場合それだけでは足りないこともあります。親が子どものしたことを「すばらしい」と思っていることがすでに子どもに伝わっているときなどは,今さら言葉に出してその思いを台無しにするよりも,抱きしめたり頭をなでたり(子どもの年齢にもよりますが),場合によっては黙って肩をポンと叩いたりするだけの方が感動が大きく伝わることもあるということです。 さて,「ほめる教育」というものはこれだけではありませんが,少しは共感していただけることがあったでしょうか?「親のほめ言葉は子どもの心の栄養」などといいます。何にしても一番大事なことは親が子どものことを本当に誇りに思っていることだと思います。 人間は,その人が何を持っているかで価値が決まるわけではありません。その人が,その人であるというありのままの状態で認められ,愛されることがその人の価値であるということです。親に愛され,自分の存在に誇りを持つことにより自分自身を愛し大切にする。そして,自分を愛し大切にできるからこそ,人をも愛し大切にすることができるようになるのだと思います。 FOUNTAIN(校長室だより)No.7
京都市立桂坂小学校 山本 泉
子育て,あるいは教育の場においては,子どもを「しかる」「ほめる」はつきものです。子育てに関する書籍などによく,「しかる」ことと「ほめる」こと,どちらが教育にとってよいのかというような内容の記載があります。このことについては諸説があり,そのうちのどの理論が正しいのかということは一概にはいえないようです。 従って,これから述べる内容も,一つの考え方として受け止めていただければと思います。以前,ある研修会で「しかる教育とほめる教育」というテーマで研修が進められたことを思い出しました。その内容について少しお話したいと思います。 −しかる教育とほめる教育− 最近の教育現場では,「しかる」ことより「ほめる」ことのほうが,子どもを伸ばす良い教育だとされるのが主流なようです。確かに我々は,子どもに限らず人から良く言われたい(ほめられたい)もので,そのことが励みになり,さらに努力して長所を伸ばすようなことが多々あります。 しかし,ほめられてばかりいては間違ったことを直したり,欠点を克服したりすることはできないようにも思えます。つまり,しかることとほめることはどちらも教育にとって必要なことであって,如何にうまく「しかる」か,如何にうまく「ほめる」かが大事だということになります。 なんだ,そんなの当たり前じゃないか!とは思われるかもしれません。しかし,実際には多くの人はこの両方をうまく使いこなせるほど器用ではないようです。うまく「しかる」,うまく「ほめる」という両方に精通するということは結構むずかしいことだといえます。そこで,せめてどちらかだけでも…,という消極的な考えからではありませんが,「しかる教育」か「ほめる教育」どちらか一方でも,うまく使いこなせれば十分に教育効果が得られるはずだということで,それぞれのあり方について研究が進められています。 【しかる教育】−子どもを伸ばす心くばり,とは− ・どちらが「しかる」でしょうか? ア.声をあらだてて欠点をとがめる。とがめ,いましめる。 イ.いかる。腹を立てる。 広辞苑ではアが「しかる」で,イは「怒る」の意味だそうですが,イにも「しかる」という意訳が載っていて,実は言葉の意味の上では,「しかる」も「怒る」も共通するところがあるということです。(関西弁では,子どもは「叱られた」ことを「怒られた」と言いますね)つまり,どちらも相手に対して,自分の感情をぶつけていく行為には違いがないわけです。(一般に,感情的な行為が「怒る」で,冷静な行為が「しかる」という考え方もありますが,必ずしも当てはまらないそうです。) さて,「しかる」ということを教育用語として一般に定義すると,「子どもの行為や考えをより望ましいものへと改める大人による評価活動,支援活動」ということになるそうですが,端的に言えば「子どもをより良い方向に導く方法・手段」ということですから,そのねらいは「ほめる」ということと同じだということになります。「しかる教育」とは,つまるところやはりその「しかり方」が大切だということです。では,私たち大人はどんなことに注意して,どんな風に「しかる」とよいのでしょうか…。 [ここに注意して] ア.しかったら必ずフォローし,決してしかりっぱなしにしない。 イ.子どもの心をしかるのではなく,行為をしかる。人格を否定するようなしかり方は絶対にしない。 ウ.ついでのようなしかり方はせず,そのことにのみ本気でしかる。 エ.さわやかにしかる。いつまでも長々としからない。 オ.あれこれとまとめてしかったりせず,一つの事だけしかる。また,過去のことを持ち出してしかったり しない。 カ.自分が目撃した行為以外のことでしかる場合は,事実を確認してからしかる。 以上の通りですが,これはあくまでも原則的なことですから,どんな場面でも,また誰に対しても通用するということではありません。しかし,できるだけ上記のことに注意しつつ,個に応じてしかること,そして,しかられた子が納得することは大切だと思います。また,いつも声を荒げてしかるのではなく,時には黙って子どもの目を見つめるだけで「しかる」効果があることもあります。 それでは次に,何をしかるべきなのかを考えてみましょう。何でもかんでもしかるのではなく,これにもいくつか注意しておくことがあると思います。 [これをしかる] ア.自分や他人の身に危険があるような行為をしたとき。 イ.人の体の欠陥をばかにしたり,人を差別するような言動をとったりしたとき。 ウ.自分より弱者に対して暴力をふるったとき。 エ.人の邪魔をしたり,自分のわがままを相手に押しつけたりするなど,自己中心的な言動をとったとき。 オ.自分の行為をごまかしたり,人をおとしいれたりするような嘘をついたとき。 これらもやはり一例に過ぎませんが,学校では同じことをしたのにある先生にはしかられてある先生にはしかられなかった,ということができるだけ起こらないよう努めています。(そうなっていないことがあれば,お詫びしなければなりませんが…。)それぞれのご家庭でも,親として,あるいは家族として「これだけは絶対に許さない」ということを前もって決めておき,子どもにもそのことを話しておくことが大切だと思います。また,同じことをしているのに,日によってしかられたりしかられなかったり,その時の気分でしかられたりでは子どもが不信感を持ち,そのうちまともに受け止めなくなります。兄弟・姉妹と比較するような言葉もしかるときには禁句です。 しかられたことを,子どもが素直に受け入れることができるような,そして,今度からしないように気をつけようと思うような,そんなしかり方ができればいいですね。 次回は,「ほめる教育」について考えてみたいと思います。 |
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