「ピグマリオン効果」について
- 公開日
- 2015/09/01
- 更新日
- 2015/09/01
校長室から
京都市立日野小学校 山本 泉
夏休みが終わって一週間がたちました。生活習慣が乱れていたと思われる子ども達も,ようやく学校モードの生活リズムを取り戻したようです。
8月はお休みさせていただきましたが,再び校長のつぶやきにお付き合いいただけたら幸いです。このコーナーでは子育てに関わることを主なテーマとして書かせていただいています。
子育ての中の一つとして,わが子が勉強のできる子になってほしいと願うのはすべての親に共通することだと思いますし,今までにも「校長室から」の中でそのことに何度か触れてきました。そして,勉強ができるようになるためには,まず頭のいい子であってほしいというのも同様の願いですので,いろいろなアプローチから知的発達について述べてきました。
子どもの頭がよくなるとか,能力向上に関しては,これまでに多種多様の方法論や事例が挙げられているのですが,今回また一つ,簡単な例を挙げたいと思います。それは,心理学者のローゼンソールという人が行った有名な実験に関わってのお話です。
教師が,5人に1人の割合で任意に児童を選び,その子らの成績が向上すると宣言して,教師自身もできる限りそれを信じ込むようにしました。すると,しばらくして,本当にその児童らの学力が上がってきたそうです。ローゼンソールはこの現象を「ピグマリオン効果」と名付けました。聞いたことがある方もいらっしゃるかも知れません。
ピグマリオンとは,ギリシャ神話に出てくるキプロス王の名で,神話によると彼は彫刻の美女をほんものの人間のように愛し,ついにはこの彫刻を,生きている美女だと信じ込み始めました。そして,これを見た神が,彼を憐れんで,彫刻に生命を与えて人間にしてくれたということです。
つまり,このピグマリオンのように,最初は決して自分が思っているような相手でなくても,こうなるはずだと心から信じてそのように振舞うと,相手も自分の期待どおりに変わってくるという不思議な作用が人間にはあるということです。
これは,人間というのは人と人とに関わりの中で生きており,自分の価値を認められたり信じて期待されたりすると,その思いにこたえようとする力が働くからでしょう。
この例からもわかるように,子どもに勉強する気を起させ,子どもの成績を上げようと思ったら,「うちの子はできるようになる」と信じ込むことです。すると,心の中にある言葉が,口に出さなくても無意識の暗示となって子どもに伝わり,できていないことをうるさく言わなくても,進んで学習に向かうようになります。
子どもが進んで学習するような習慣づけ,わからないこと,できないことをいい加減にしないようなしつけは,口うるさい世話やきより,こうした親の無言の「信じ込み」「思い込み」によってこそ自然になされていくという一例です。