手先を使うことと脳の発達について(1)
- 公開日
- 2015/05/08
- 更新日
- 2015/05/08
校長室から
京都市立日野小学校 山本 泉
現行の学習指導要領が施行されてから5年目を迎えました。学習指導要領は10年ごとに更新されますから,これからまた次の新学習指導要領が作られていくはずです。学校で教える学習内容も時代の変化とともに変わっていくことになります。
しかし,子どもの能力が大きく変わっているわけではありませんから,基本的に,発達年齢に適応している指導内容はほとんど変わらないはずです。これは私の考えですが,例えば,手先を細かく使うようなものの指導は今まで通り小学校中学年(3・4年生)のままだろうと思います。これは,実は重要な意味があることだからです。今回は,手先を使うことと頭脳の発達についてお話したいと思います。
よく「手は第二の頭である」といわれますが,手こそ頭の発達を最も象徴的に表しているものといえます。つまり,手の動きが活発な子どもほど,頭の働きも活発だということであり,手先が器用な子ほど頭がよいということです。
そう考えれば,手先,指先を使うような機会を積極的に与えることが,子どもの知的発達に欠かせないというのはいうまでもありません。もちろんそれは早ければ早いほどよいということですが,あまりに低年齢だと経験不足によりまだできないこともたくさんあるため,大きな効果は期待できないかも知れません。
手先を使うことが脳の発達に最も大きく影響するのは小学校中学年くらいといわれます。小学校中学年というのは10歳前後の子どもですが,このくらいの発達年齢では思考力が著しく発達します。思考言語(母語)が確立し,抽象思考ができるようになってきます。また,ある程度生活経験も豊富になり,手先を使っていろいろなことができるようにもなります。従って,この時期を逃さず手先を使わせるように指導内容が組み立てられているわけです。
例えば,彫刻刀を使う指導をするのもこの時期です。危険な刃物を正しく安全に使うことを覚えさせます。筆を使って字を書かせる(毛筆習字)のもやはり小学校中学年からです。いろいろと発達年齢に適した指導内容が用意されているわけです。
一方,理科で上皿天秤を使うことも,天秤を釣り合わせるという細かく難しい操作をさせることに意味があったのですが,アルコールランプにマッチで火をつける操作とともに,なくなりつつあります。時代の変化により消えていかざるを得ないものがあるのも事実です。
しかし,手先を使うことと脳の発達の関係は変わりません。また,手先を使うことが脳を刺激するというのは小学校中学年に限ったことではないのですから,それより低い年齢でも,あるいはもっと大きくなってからでもできるだけ手先を使う機会を増やすほうがよいわけです。(私くらいの年齢では老化の防止になります。)
つまり,年齢に応じて手先を使う作業を取り入れることが大事だということです。
次回は,手先を使うにはどんなことをすればよいかについて,もう少し具体的な例をあげながら,その効用についてお話ししたいと思います。