朝,教室を回っていると,あるクラスの合唱コンクールの楽譜の表紙に,写真のように「あとじゃできねんだよなあ いまのことはいましかできぬ」と書かれていた。机に置かれていたのは一部だけゆえに,外がどうかはわかない。
人は弱いものである。試験勉強をしなければと思うと,そのためにはということで,急に部屋を片付けなければと掃除をしだしたり,本が気になりだしたりして,ついつい読んでしまったりと,そこから逃れたいと思うのか,逃避的な部分があるように思う。今やらねばならないことに向き合えるのは,本当に芯の強い人だと思う。
でも,そんなことをいっていても始まらない。やらなければならないことはやらなければならない。その気持ちをどう持てるかである。ここでは「あとじゃできねんだよなあ」がそれに当たるだろう。
言い換えれば,「今しかない」である。合唱コンクールでいえば,1,2年生なら,来年もあり,3年生なら,来年はないと考えられるが,1,2年生とて,コンクールそのものが100%あるとは限らないし,それより何より,今のメンバーでの合唱はない。極端にいえば,クラス替えがなければあると思うかもしれないが,それとて,1年生ではない2年生という年齢になっているし,2年生は3年生になっている。単に学年が違うだけではない。1年間の間に,考え方や思いも変わってくるものであるとするならば,やはり「今しかない」のである。
このことを別の表現で表すならば,「一期一会」ということだろうか。茶道に由来する言葉であるが,これからも何度も会うことはあったとしても,その時の人とは変わってしまっていて,今の人とは,二度と会えないというくらいだろう。ゆえに,一生に一度だけの機会,生涯に一度限りであること,という意味で表されている。つまり,一生に一度しかないと考えて,そのことに集中する、専念するということなのである。
合唱はクラスの皆でつくる創造的な営みである。そのことを以て,クラスそのものであるともいえるだろう。ゆえに,「あとじゃできねんだよなあ いまのことはいましかできぬ」が生きてくるように思う。ゆえに,皆でつくる創造的な営みを,皆で楽しんで欲しいとも願っている。