京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/06/13
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6月3日(月)MBS放送 よんちゃんTV「ミルクボーイのおかんの代わりに学校行ってみました」(17:30頃)で本校が紹介されました! 「探究道場」第1回申込受付中。令和6年6月14日(金)17:00までです!

筋書きのないドラマ

うららかな春の日曜日,本校硬式野球部が春の大会に挑みました。試合会場は,森や畑に囲まれた自然豊かな場所にある高校のグラウンド。光を浴びる新緑が見渡す限りに広がっている。新鮮で美しい。残念ながら,新型コロナの影響により学校関係者以外は会場には入れない,いわば,無観客の中での試合でした。

10数名で構成される本校野球部。平日は校内の限られた場所でトレーニングをしたり,近隣のグラウンドを使用させていただいたりしながら,練習に取り組んでいる。週末は,広い嵯峨野グラウンドで思いっきり打って投げて走ったり,他校との試合に挑んだりしている。少ない人数ながら自分たちでのチーム作りを大切にして,目標を持ち,意欲を高めあい,工夫しながら汗を流している。

正午すぎ,気温が上昇し汗ばむ陽気の中,試合開始が告げられる。後攻の堀川ナイン。まずは守りから。気合いを入れて勢いよく全力疾走で自分の守備位置に向かう。

初回。相手の選手がかっ飛ばす。選手は少し委縮してしまったか,なかなかアウトを重ねられない。監督がその様子を察してか,人一倍大きな声で活気づける。「みんな,大丈夫やからな。」「やるべきことをやろう。」「下を向かずに前を見て。」

ピッチャーは2年生。時にワンバウンドしながらも低めを意識して力強く投げ込む。キャッチャーは3年生。それでいいんだと言わんばかりに,捕球後には力強くピッチャーに返球する。その軽快なテンポから,お互いに対する信頼感が伝わってくる。

4点のリードを許した4回裏,堀川に大きなチャンスがやってくる。先頭打者のヒット,そして盗塁。さらにヒットが続き,0アウト1,3塁。次の打者がレフトフェンス直撃2塁打で2点。反撃開始。ベンチの全員が声を枯らして盛り上がる。四球を選び1,2塁。次の選手には送りバントのサイン。少し身体が硬くなったか,なかなか決められない。グラウンドのあちこちから「楽しんでいこうぜ」といった声。バッティングに切り替えると,うまく合わせてセンター前ヒット。満塁。ここぞとばかりに,監督が塁上にいる選手たちを引き締める。「しっかり前を見るんだぞ!」「自分で判断するんだぞ!」

まだ続く。センターオーバー2塁打で2点追加。同点。勢いに乗る選手たちに気の緩みはない。挑む雰囲気を自分たちで創り出している。緊迫する場面場面を夢中になって楽しんでいる。

0アウト2,3塁。四球で満塁。ライト前ヒットで1点追加。ついに逆転。うれしさを爆発させる選手たち。なおも0アウト満塁。三振で1アウト。それでも,仲間たちはかすれた声を振り絞る。「ナイススイング!」レフト前ヒットでさらに1点追加。その後は三振,ショートゴロで3アウト。合計6点の逆転劇。選手たち全員で生み出したビッグイニング。

攻守交替。外野の守備に着く選手たちの会話が聞こえてきた。「さっき,何点取ったっけ?」「6点ちゃうかなぁ。」目の前の1を追い続けた2人の様子がうかがえる。

このまま優勢に試合を運ぶためには堅守で乗り切りたい。しかしピンチが訪れる。2アウト2,3塁。それでもなんとか三振で凌ぎ,0点に抑える。軽快に足を弾ませながらベンチに戻る選手たちが頼もしい。「ナイスピッチング,ナイスキャッチ,ナイスラン!」すべてのプレーを称え励ます。「自分たちにもできるんだ。」という自信,「失敗を恐れず前に出よう。」という勇気に満ちている。

私は知らなかったのだが,高校野球では試合中5回終了後に1度だけ,選手たちがグラウンド整備をするそうだ。両チームの選手が入り混じりながら,黙々とトンボを引く。約10分間,それまで声援に沸いていたグラウンドが静寂に包まれる。最後には,それぞれのチームが交互に,礼儀正しくその場に直立し「ありがとうございました。」感謝の気持ちを素直に表す,すがすがしい瞬間。

試合再開。6回表にはホームランで同点に追いつかれる。それでも意地を見せる選手たち。2アウトからの深いショートゴロ。懸命に飛びついて,なんとかキャッチ。厳しい体勢から足を踏ん張り,渾身の送球。少し逸れたワンバウンドのボールを1塁選手が全身をめいっぱい伸ばして捕球する。アウト。選手たちの戦いはまだまだこれからだ。

その裏の攻撃。隙があれば次の塁を狙う機敏な動きをみせ,1点を取る。再び7対6とリード。このまま最後まで粘ってほしい。

7回表の守備。ピッチャーに疲れがみえる。球数がかさんでいる。暑さも堪える。満塁のピンチを迎えると,ベンチからタイムがかかる。内野の選手がピッチャーのもとに駆け寄る。ピッチャー交代。ここまで本当によく投げた。外野の選手も遠くから労いの声をあげる。次には,ショートを守っていた選手がマウンドに立つ。投球練習で見せるストレートが走っている。みんなの期待を背負って終盤に挑む。

相手の打線に火がつく。怒涛の攻撃を浴びる。次々に点を失ってしまう。「1つ1つを大事に。」「ボールを待つんじゃない!自分から呼び込むんだぞ!」「打たれてもいい。思い切っていけ。」監督も選手とともに戦っている。ベンチにいるマネージャーの少し高い声がグラウンドに一層響き渡る。内野の連携によって,両チームを通じて初めてのダブルプレーを決め,この回を閉める。選手たちには笑顔があふれている。

8回にも得点を許し,規定によりコールドゲームとなり試合終了。9回まであと1回,選手たちが最後にどこまでできるのか,何を残してくれるのかを見たかったのが正直な気持ち。両チーム選手が整列し,互いに礼を交わす。審判の方々へも。最後までやり遂げる姿がまぶしい。


負けはしたものの,見応えのある試合だった。表情豊かに盛り上がる瞬間もあれば,ハラハラする緊迫のシーンもあった。絆固く果敢に挑む場面にも心を動かされた。2時間半ほどのドラマの中に散りばめられた1アウトの難しさ,1スイングの重み,1プレーの悔しさ,1点の喜び。そういったものを生徒たちはリアルに体感していたのだろう。一皮むけた生徒たちの次に期待したい。

生徒たちは自分自身のドラマを創り,ストーリーを描く。映像や本の中だけにあるものではない。話題性の高い人に限られるものでもない。あらゆる部活動や学校生活の中で,生徒たちは目の前の何かを夢中になって追いかけている。そういった1人1人を応援していきたいと思います。

橋詰 忍
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