最新更新日:2024/09/25 | |
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校長室から 10月号
校長室から 〜小学校3年生で「友情」を感じた出来事〜
私の小学校時代の出来事です。 小学校に入学してから2年の間,私は引っ込み思案で自分から進んで人と関わることなどほとんどありませんでした。休み時間になっても,誰と遊ぶこともなく教室の隅に「ぽつん」と座っている目立たない子でした。 ある時,友達のT君が僕の家に遊びに来て「このビー玉大きくてかっこいい。僕にちょうだい。」と言いました。ところが,その次に「僕にそれをくれへんかったら一緒に遊んだらへんで。」と言われました。その時,心の中で「断ったら遊んでもらえへん・・。ここで断って,冷たい仕打ち受けんのもいややなあ。」と思い,その大切なビー玉をあげてしまったことがありました。 そんな僕が3年生になった時に,組替えがあり,新しい仲間との関わりがスタートしました。このクラスは,教室の隅に一人ぼっちでいることを許さない元気なクラスでした。「お前も仲間に入れ」と誘われます。特にその中心にいたのが,O君でした。O君たちと小雨の降る中で一緒にサッカーをしたり,鬼ごっこをしたりしていました。だんだん気が合って,私の家で遊んだ後,O君が僕の家に泊まっていくこともありました。 ある日の掃除時間のことです。「服の後ろにうんこついているで。」とある女の子に言われました。「どれどれ,見せて。」とどんどん人が寄ってきます。その時です。O君がやってきて,「これちがうで。絵の具がついているんや。心配するな。」と言いました。確かに,1・2時間目は,図工科の時間で絵の具を使ったのです。それで茶色の絵具がついていたということで,その場はおさまりました。 しかし,家に帰って母と祖母から同じことを言われました。そこについていたのは,絵の具ではありませんでした。 後で考えると,O君はきっとあの場で,もしそれを認めてしまうと「吉川が窮地に陥る。」と思い,救いの手を差し伸べてくれたのでしょう。そのことがわかり,より一層,O君との友情は深まりました。そして僕も,自分の気持ちが少しずつ出せるようになってきました。 「いじめ」はする側とされる側の問題だけでなく,見て見ぬふりをする周りにも問題があるといわれます。僕はこの時O君に窮地を救われたけど「うんこをつけた○○クン」とからかわれていたかもしれません。周りの存在が,温かいまなざしをもっているかが大切です。 「善意のある第三者のまなざし」をもった集団を育てていくことが大切だと思います。そのためには,一人一人を大切に思う温かい学級風土を,一歩一歩つくることが重要に思います。 私たちは一人では生きていけません。人と人とのつながりの中で暮らしています。人間関係の中で暮らしていれば,たとえどんなに相手ともめたとしても,結局,最後は相手とコミュニケーションを図り修復するしかありません。それは大人の世界であっても,子どもの世界であっても一緒です。「口にすれば、たった一秒で終わる『ありがとう。』『ごめんなさい。』を大切にして欲しいです。」たった一言が人を傷つけ,たった一言が人の心を温める。 子どもたちは,成長の過程での様々な経験を通して,表現の仕方を学んでいきます。 その前提として,人とのつながりを大切に,感謝の気持ちや素直な気持ちを感じることができる子どもたちになって欲しいと思います。 |
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