最新更新日:2024/09/20 | |
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子と親私の机は……。 2010年の秋に,「内外教育」という教育関係の情報誌のコラムに書いた文章です。 ……………………… 「かわいい子には旅をさせよ」と考える親はどれほどいるだろう。また、「若いうちの苦労は買ってでもせよ」と思う大人はどうだろう。 抜け道はよくないが,近道を探す若者がいるのはいまに始まったことではない。かつてはそれを戒めるのが親や大人の役目であった。しかしいまは,簡便に快適にそして少しでも早く、というのが親子共通の願いになってさえいるのではないかと感じる。これは,私の思い込みだろうか。 苦労や失敗や挫折はしないほうがよい。いまの子どもたちはそういうことに耐えられない。そのように考える人もいる。よって,できる限り安心できる道を選ぶほうが無難だ、となる。 面倒なことも避けた方がよい、手っ取り早く簡単な方法があれば少々お金がかかっても手に入れるほうがよい、と考える人もいる。 このようにして、親や大人は子どもたちに様々なものを与えてきた。手軽に、悩まずに、失敗のないように。答えも、先回りして用意してきた。 総務省統計局の資料によると,平成20年の若年無業者(15〜34歳)は約64万人,フリーターは170万人に上り,また,厚生労働省の調査によれば,就職後3年以内に離職する率が中学校卒で7割,高等学校卒で5割,大学等卒で4割になるという。これらの原因は単純ではないだろうが,この数字には驚く。このような状況について,中教審キャリア教育・職業教育特別部会は審議経過報告(平成21年7月)において,「次代を担うべき若者が,社会的・職業的に十分自立できておらず,将来に夢や希望を持ちにくくなっている」と指摘している。なぜこういうことになるのか。 子どもたちに問題が生じているとしたら,直接か間接かは別にして,すべての大人に責任がある。子どもたちは,育てられたように育つものだ。悪意をもって子どもを育てる人はなかろう。しかし,善意が,よかれと思ってすることが,本当にそれでよいのか。大人の責任として考えねばならない。 ……………………… 海外研修に行った13期生の保護者の方からメールをいただきました。 ……………………… 太平洋の向こう、親から数千キロも隔てた場所へ、かつて無いほどの時間を離れて過ごす息子には、命に危険のないぎりぎりのところで留まるくらいの、ヒヤリとするくらいまでの経験をしてきてほしいとまで願う、今や、ライオンの親心です。 私が近くにいたのでは、絶対に彼は成長しない。 いつも寸でのところで助けてしまう自分にも腹が立ちますし(笑) 「振り子」のトミーのようにまではいかないまでも、堀川高校で真剣に人や物事に取り組み、そこでしか、その時間でしか、その出会いでしか成しえない奇跡に触れてほしいと思います。 私が願えば願うほど、くるりと踵を返し反対を向いてしまう息子に、私の存在こそが彼の成長を阻んでいるのではないかと自己嫌悪にさえ陥る毎日です。 「振り子」の答辞を読んで、トミーが過ごした堀川での3年間が、どれほど有意義で価値のある時間であったかが、まったくトミーを知らない私にもじんじん伝わってきて、読みながら涙がこみ上げてきました。 青年が、置かれた環境の中で、困難と闘い、苦労し、助けを受け、学びながら糧を得て、ぐんぐんと空に向かって伸びていこうとするエネルギッシュな姿は、きらきらと眩しく、たくましく、周囲に感動と元気を与えますね。 その成長をご覧になる先生たちのお幸せを羨ましく思います。 主のいない子供部屋は少し寒いと感じました。 読みかけの本、整理されていないプリント、ファイル、教科書・・・ どれもみな、大きくなって帰ってくる主を期待して待っています。 誰よりも、私が。心から・・・。 ……………………… 「その成長をご覧になる先生たちのお幸せ」を忘れないで,新しい仕事に立ち向かおうと思っています。 44号(2012.03.29)……荒瀬克己 |
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