京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/05/18
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中学3年生対象「実技講習会」(6/8開催)の申込は、来週24日(金)17時までとなっています。参加希望の方は、本校ホームページのトップ画面左側のカテゴリ「中学生のみなさんへ」をクリック!そこから申し込みをしてください。

アートと遺産:京都から世界への架け橋


2023年時点での世界遺産総数(文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種類がある)は1199件、その内京都には16社寺1城の計17件あります。その世界遺産を決めているのはユネスコ、つまり国際連合教育科学文化機関であり、年に1回開催されるユネスコの政府間委員会で採択されています。

2024年、登録30周年を迎える世界遺産「古都京都の文化財」を擁する京都市は、2017年に地球環境問題の一つとして文化観光の質の向上を盛り込んだ「京都宣言」を採択するなど、世界遺産を有する都市として弛みない先進的な取り組みを続けています。このシンポジウムは、そのような京都の地で、世界遺産という制度が文化遺産保護に果たしてきた功績を辿るとともに、その発展の中で日本が果たしてきた、あるいは今後果たすべき役割についてあらためて考え、世界遺産のこれまでとこれからを見つめる機会にするためのものでした。

このシンポジウムに参加をして、私自身、再確認したことがありました。その中の一つを紹介します。私はこれまで文化芸術に携わる人として、また校長として、皆さんに機会があるたびに、多様性を認め、他者との対話を通じながら影響を受け、クリエイティビティやイノベーションを起こしていってほしいと伝えてきました。私自身も職場で、或いは様々な場において他者との対話を大切にして、できる限り他者の考えを聞き、また自分の考えを深めていくということに努めています。しかし他者の意見を耳にすることや受け入れることは容易ではないですが、できるだけ相手に対する時は先入観や感情は横に置いて、白紙の状態で対話をするようにしています。すると今まで見えていなかったことが見えてきたり、違うアイデアが浮かんでくることが多々あるのです。皆さんもそんな経験をしたことはたくさんあるでしょう。

このシンポジウムの中で、エルネスト・オットーネ(ユネスコ文化担当事務局長補)氏は、遺産の保存や保全を考える時、多様な考え方が必要であると語っていました。それは、欧米中心の国からの発案で1972年に採択された世界遺産条約は1990年代に入り、それまでの優品主義を改めて多様性を尊重する方向に舵を切ろうとしていました。そのような状況の中、1992年の日本の加盟(条約批准)と1994年の奈良で行われた国際会議での「オーセンティシティに関する奈良ドキュメント」は、保存に関わる人で知らない人はいないぐらいの影響力を持つことになるのです。それまで多くの世界遺産は欧米を中心に登録をされていましたが、これ以降欧米以外の国にも光が当たることになったのです。そこには欧米至上主義の考えかただけでない考え方が入ることによって、新たな見解が生まれ、制度の見直しにつながったのです。グローバル社会を迎えた今、グローバルな視点とローカルな視点の両方の見方・考え方が必要不可欠な世界となっています。私たちは日本の中でも非常に稀で貴重な文化を持つ京都(近郊含む)に住んでいます。その京都は、日本の文化を代表するような重要な文化財があります。そして、日本をはじめ世界各地の文化の情報も多く手に入れることができます。15歳からの多感な時期に、美術工芸を専門に学ぶ皆さんはにとっては、この京都はとても素晴らしい環境が揃っており、感性を磨く場としては最高な土地です。そしてグローカルな考え方を身につけるためには最高のところです。だからこそ、多様性を認め合うため、自分たちが住む京都をもっと知り、自分のアイデンティティをしっかり知ることが、これからの社会において重要なアイテムになること間違いありません。

オットーネ氏も語っていましたが、日本はユネスコにおいて非常に大きな役割を担っています(分担金も日本が国連加盟国中、米国及び中国に次ぎ第3位であり、2022年においては2億3080万ドルを負担(勿論、私たち日本国民の税金から支払われているのです)しています)。世界遺産の保存・修復などに大きな影響を与えている国の一つなのです。日本はもっと世界の中で存在感を示しても良いはずなのではないでしょうか。私たちは自信を持って、類い稀な日本の文化遺産を守り、かつ文化芸術を継承し、また新たな文化や芸術を生み出していくべきです。そして、皆さんには文化による世界平和の実現を希求した京都市の「世界文化自由都市宣言」の実現に向けて高い理想を持った青年になってほしいと願うばかりです。

 2024年1月22日
                       校長  名和野新吾

未来を紡ぐ遺産:若者と日本の役割

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先週の土曜日、京都大学で「世界文化遺産の50年:日本の貢献のこれまでとこれから」というテーマで文化遺産国際協力コンソーシアム主催のシンポジウムが開催されました。文化庁の知り合いから案内を受け、文化遺産や自然遺産に興味がある私は、この機会を逃さずに参加を決めました。新しい世界との出会いはいつもワクワクするものです。シンポジウムに参加して、これまでの考え方や見方が変わり始め、新しい景色が見えるようになりました。人、旅、本との出会いが自己変革のきっかけになると言われていますが、このシンポジウムもそんな経験の一つでした。

在校生の皆さんも、この感性豊かな時期に、今まで興味はあるけれど躊躇して踏み入れなかった世界や知らない世界へ一歩踏み出してみませんか。そんなきっかけになればと思うと同時に、私のこの貴重な体験を、皆さんと共有したくて校長ブログに書きました。興味のある方は、ぜひ校長ブログを読んでみてください。

校長ブログ → こちら

新年を迎えて(校長メッセージ)

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「生徒の皆さんへ」

新年明けましておめでとうございます。

新年にあたり、私が大好きな谷川俊太郎さんの「朝」という詩を皆さんに贈ります。

「朝」

また朝が来て僕は生きていた
夜の間の夢をすっかり忘れてぼくは見た
柿の木の裸の枝が風にゆれ
首輪のない犬が陽だまりに寝そべってるのを

百年前ぼくはここにいなかった
百年後ぼくはここにいないだろう
あたり前の所のようでいて
地上はきっと思いがけない場所なんだ

いつだったか子宮の中で
ぼくは小さな小さな卵だった
それから小さな小さな魚になって
それから小さな小さな鳥になって

それからやっとぼくは人間になった
十ヶ月を何千億年もかかって生きて
そんなこともぼくら復習しなきゃ
今まで予習ばっかりしすぎたから

今朝一滴の水のすきとおった冷たさが
ぼくに人間とは何かを教える
魚たちと鳥たちとそして
僕を殺すかもしれないけものとすら
その水をわかちあいたい

     谷川俊太郎〈詩集「空に小鳥がいなくなった日」所収〉

 誰にでも夜が明けて、朝が来るものです。それは当たり前なことですが、誰しも同じ朝を迎えているわけではありません。世界に目を向け、自分を取り巻く世界を思えばこの意味がわかってもらえるのではないでしょうか。また、時間軸で考えるならば、1日は24時間あり、1年は365日ありますが、大きな歴史の流れからみれば、本当にちっぽけな一瞬でしかないのかもしれません。何も目的を持たず日々をぼんやり過ごしていたら、いつの間にか1年が過ぎて、その繰り返しでいつか老いてしまいます。普段は意識していないけれど、生きていること自体が決して当たり前のことではなく、存在自体が奇跡だと考えて過ごしてみてはいかがでしょう。

 私はこの詩に、悠久の宇宙と、生物の世界と、そして人間の歴史を感じます。それは大いなる不思議に満ちています。元旦の夜が明けた朝、見た目には普段の朝と変わりはないのですが、私は特別な心地がしました。新年を迎え、皆さんは何か特別に新しくなったような気持になりましたか。

 皆さんには、ぜひ1日1日を大切にして過ごしてほしい。そして自分の思い描いた未来に向けて歩んでほしいと心から願っています。パナソニック(旧松下電器産業)グループ創業者である松下幸之助氏は「道」というタイトルの詩(一部抜粋)で「自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。 どんな道かは知らないが、ほかの人には歩めない。 自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがいのないこの道。 広い時もある。せまい時もある。のぼりもあればくだりもある。 坦々とした時もあれば、かきわけかきわけ汗する時もある」。また、こう続けています。「この道が果たしてよいのか悪いのか、思案にあまる時もあろう。 なぐさめを求めたくなる時もあろう。 しかし、所詮はこの道しかないのではないか。」と。これは決してあきらめて運命を受け入れるということではなく、自分だけに与えられた道を進み続けなさいということです。続けて氏は、「他人の道に心をうばわれ、思案にくれて立ちすくんでいても、道はすこしもひらけない。道をひらくためには、まず歩まねばならぬ、心を定め、懸命に歩まねばならぬ」と述べています。心を決めて歩みをつづけることで、自分に与えられた道を自ら開いていくことであると示してくれています。

 この詩を読むと思わず私は自分の心が引き締まるような気がします。年齢が幾つになっても自分を信じて、少しでもよいから昨日の自分よりは良くなっていたいと考えています。中でも私が特に好きな言葉は「自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道。」という一文です。他人と自分を比べるのではなく、自分の道を一歩ずつ自分のペースで進んでいこうと思えます。ただ、進むためにはしっかりした情報収集(知識含む)や分析ができてはじめて進むべき道が見えてくるものです。常に自身の言動を振り返りながら、自分にとっていいことだと思えることのみを取り入れ、歩んでいきたいと思っています。

 皆さんが新たな気持ちで新年を迎え、自分の目標に向かってチャレンジし続けて生き生きと学校生活を送ることができることを願っています。本年もよろしくお願いいたします。


 2024年(令和6年)1月5日
                       校長 名和野 新吾

新年のご挨拶

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 新年明けましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 新年の挨拶の前に、この度の能登半島地震で被災された方に、心よりお見舞い申し上げます。

 元日の夕方に飛び込んできた能登半島地震のニュースには、私自身大変ショックを受けました。その後、地震被害の詳細をニュースで見聞きする度に、東日本大震災や熊本地震などの災害発生後に本校が行なった災害支援活動の取り組みの中で、現地の方から直接災害時のお話を聞かせていただいたことを思い出し、今回の地震被害に遭われた方のことを考えると心が痛む思いです。自然災害は本当に人の都合などを問わず起こることをまざまざ見せつけられました。改めて私たち自身が常日頃からどのような心構えでいなければならないか、痛感したところです。これからも在校生には危機管理について啓発を続け、いつどのような事態が起こっても自身で考え、的確な行動が取れるように育成していきたいと考えています。また、このような事態が起こった時に、一人ひとりが我が事として捉え、何か支援できることはないかを考え、行動できる人であってほしいと思います。

 さて、新年に当たりご挨拶申し上げます。
 本校は昨年4月に崇仁地域に移転し、美工として再出発をしました。移転にあたって策定した美術工芸高等学校グランドビジョン(ホームページ右側下のリンク「美術工芸高等学校グランドビジョン」を検索)を達成するため、在校する生徒のことを第1に考えて教職員一同邁進していくつもです。
 そのビジョンの中に、教育構想策定の背景として「予測困難な社会が到来している」と題して「グローバル化や技術革新により、私たちを取り巻く環境は急速に変化し続けており、人口問題や気候変動、パンデミッ クや国際社会の不安定化など、私たちが向き合わねばならない問題も複雑化・多様化しています。」と記しています。これからの社会では「グローカル」の視点からアプローチする力が求められています。これは、「グローバル」と「ローカル」を掛け合わせた造語で、「国境を越えた地球規模の視野と、草の根の地域視点双方で問題を捉えていこうとする考え方」(大辞林 第三版より)を指します。本校のグランドビジョンを策定してから2年が経とうとしていますが、世界では未だに戦争や紛争、人権侵害、貧困などの問題が解決せずに続いています。国連が2030年までの目標に掲げたSDGsの達成に向け、全世界で努力はしているものの、なかなかその達成への道筋が見えてきません。また、国内においても様々な課題が山積しています。これらの解決達成を図ることや最適解に導くことを国家に頼っていては、実現不可能なのかもしれません。しかし、私たち一人ひとりが我が事として捉え、人任せにせず「グローカル」な視点を持って取り組めば大きく世界は変わると私は信じています。そして世界中で暮らしている人が昨日より今日が少しでも幸せになったと実感できる世界になることを願っています。

 本校は生徒一人ひとりが主役となるような学校づくりを、在校生と共にこれまで同様推し進めていきます。
 今後も本校の教育活動にご理解いただき、皆様のご支援ご協力をお願いいたします。

 2024年1月5日
                       校長 名和野 新吾


 ■校長メッセージ「生徒の皆さんへ」→ こちら

年の瀬を迎えて


 2023年も年の瀬を迎え、あと数日で新年を迎えます。

 本年は本校にとって大きな変わり目となる年でした。新校舎への移転を機に校名を「京都市立美術工芸高等学校」と改称、美工として再出発いたしました。新しい校舎での学校生活や教育活動も、移転当初は様々な場面で戸惑いもありましたが、今は生徒も教員も最大限に施設・設備を活用し、新しい教育活動にも積極的に取り組んでいます。そんな姿を見ていると私自身とても嬉しく頼もしく感じます。

 日本の社会状況も本年に入り大きく変わりました。コロナによるパンデミックの騒動が起きてから4年が経ち、5月には政府から感染症法上の5類への移行が発表され、各方面で日常を取り戻す動きが感じられた一年となりました。もちろん罹患され、今でも心身共に辛い思いをされた方がいらっしゃいますし、この4年間に大きく人生を変えられてしまった方がいたことも忘れてはならないことです。また世界に目を移すと、ウクライナやパレスチナにおける戦争や紛争が、現在も続いています。本校生徒には、そのような方々の喜び悲しみに思いを寄せることができる人間であってほしいと心からそう願っています。

 さて、生徒の皆さん一人ひとりにとっては、どのような1年だったのでしょうか? 嬉しかったこと、頑張ったこと、やり遂げたこと、足りなかったこと、悔しかったこと…年末のこの時期に、これまでの自分自身を振り返り、1年間の収穫や課題を心にしっかり留めておいてください。そして、来るべき2024年の決意や抱負を考えてみてください。また、具体的に年度内までに何をすべきか、何に取り組むべきかを明確にし、ノートに書き留めるなど万全の準備を整えておきましょう。 新年が明けると今年度も残りわずか、年度当初の目標を達成するための期間は少ししか残っていません。

 最後に、生徒の皆さん、保護者の皆様、また日頃から学校を支えてくださっている多くの関係者の皆様、この一年の本校の教育活動への多大なご理解ご協力に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。来年もより一層のご支援を心よりお願い申し上げます。

 2023年12月26日
                      校長  名和野 新吾

美工同窓会の皆様へ


 ご挨拶

 本日は同窓会総会がこのように盛大に開催されましたことに、心よりお喜び申し上げるとともに、美工同窓会の皆様には、平素より本校の発展のために物心両面から温かいご支援とご協力をいただいておりますことを厚く御礼申し上げます。

 さて本校は、本年4月に京都駅東部エリアに移転し、校名を「京都市立美術工芸高等学校」に改称、また新校章を制定、美工が創立して初めての校歌も作成いたしました。今回の移転は、移転先が京都の玄関口に位置し,京都市立芸術大学と隣接するなどの恵まれた環境を最大限に生かし,時代を先導する新たな美術工芸高校として更なる飛躍が期待されています。 「京都にある美術専門高校であること」そして,「京都に美術専門高校があること」の、両意義を踏まえ,美工が新しい地にしっかりと根付き,未来に向けて成長し続け,その存在が人々に力を与え,50年後, 100年後も,愛され続ける学校であることを目指しております。

 世の中は予測不可能な「わからない」ことで溢れていますが、その「わからなさ」と向き合い,挑み続け, 新たな問いや答えを導き出していくうえにおいて、美術を学ぶことには大きな意義があります。美術の知識や技能を学ぶことは勿論のこと、美術専門教育を軸に教科・科目等を横断した教育の展開や,大学・産業・地域・海外の教育機関などと連携した教育活動を推進し,美術を通して広く社会に貢献できる創造性豊かな自立した青年の育成につなげていく教育を実現することは美工だからこその使命であります。

 結びに、今年創立143年目を迎えた本校が、これまでのよき伝統を踏襲しつつ、何代にも渡る卒業生と在校生が一つになり、「美工」という旗のもと、今後も充実した伝統を未来に繋いでいくために教職員一同心を合わせて邁進して参りますので、同窓会の皆様には尚一層のご支援ご協力をお願い申し上げます。

 令和5年12月9日

                     京都市立美術工芸高等学校
                       校長  名和野 新吾

後期始業式 校長メッセージ

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(後期始業式)

後期が始まるにあたり、皆さんにメッセージを送ります。

まずは「美工作品展」いかがでしたか。4500名を超える方にご来場いただき、皆さんの作品を見ていただきました。そして多くの方に褒めていただきました。また、本校の教育に対し、温かい激励もいただきました。来場者アンケートのコメントを少し紹介します。
展示作品への感想には、「若いエネルギーをもの凄く感じました。」「日本の未来を担う芸術家の作品が見られて光栄に感じました。」「高校生の作品とは思えない素晴らしい技術力・発想力に感動しました。鋭い視点と感性で作られた作品の数々に圧倒されました。」というコメントなどがありました。また、本校生徒の対応には、「受付の方がとても丁寧でした。」「笑顔で対応してくれました。」というコメントなどをいただきました。
皆さんの作品は、自分の手を離れ、見ていただいた人に感動を与えました。一人ひとり作品展を通じて考えたこと、感じたことに違いはあれど、今後皆さんの大きな糧となることでしょう。1年生は美工作品展から何を学び取りましたか。皆さんの美工作品展は2年後に迫っています。また、2年生の皆さんもあと1年しかありません。今日からどんな姿勢で学習や創作活動に向き合いますか。その全てが作品に集約されることを理解しておいてください。

さて、美工作品展が終わり、高校生活の区切りである後期が始まるこの日に、皆さんに伝えたいことがあります。4月下旬、皆さんを対象に意識調査をしたことを覚えていますか。その中で、「うまくいくかわからないことにも積極的に取り組むか」という問いがあり、が、「取り組む」「どちらかいうと取り組む」という回答が、本校生徒はどの学年も全国平均より10ポイント以上も高く出ていました。このことは、本校生徒は困難があっても挫けず最後までやり抜く力をつけることができるということに他ならず、実際に美工作品展やその他の取り組みを見ていれば、一目瞭然にその力があることがわかります。
その「やり抜く力」こそ、これからの社会で必要かつ重要な力の一つです。よく私は中学生やその保護者の方に、「やはり美術を極めていこうとすると、才能がいるんですよね。」「デザイナーになりたいのですが、私には才能がないと思うのですが。」などと尋ねられます。その度に「才能があっても、努力を惜しまず、やり抜く力がなければ、才能がない人にも負けてしまいます。」と答えています。勿論、生まれ持った才能と言われるものはあります。しかし、才能だけで花開くことはないといってもいいでしょう。
2015年に出版されたペンシルバニア大学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏の著書「やり抜く力」には、「成功者の共通点にグリット(やり抜く力)が見られる」という理論が展開されています。成功を収めるには、「才能やIQ(知能指数)や学歴ではなく、個人のやり抜く力こそが、社会的に成功を収める最も重要な要素である」と提唱しています。グリットは生まれ持った能力ではなく、いつからでも身に付けることができるもの。また知識や才能がなくても、グリットを強く意識して実践に生かすことができれば、物事を成功に導くことができます。
そのグリットは、4つの要素が必要だとされており、「困難なことに立ち向かう」「失敗しても諦めずに続ける」「自分で目標を見据える」「最後までやり遂げる」といったものです。
人はよく、「あの人が成功しているのは才能があるからだ。自分には才能がないから無理だ。」と決めつけてしまいがちですが、その思考を捨て成長思考にすることで、「自分もできる。出来なくても諦めないことが大切だ」と思えます。

3年生はこれから自分の進路実現のため、様々なハードルを乗り越えていかなければなりません。また、その他の生徒の皆さんも、それぞれの目標に向かって努力し、試行錯誤を繰り返していくことでしょう。その時、この学校で培ったこの「グリッド」は大きな力を発揮することになります。

最後に、よくご存知のウォルト・ディズニーの言葉をお伝えします。
「夢を求め続ける勇気さえあれば、すべての夢は必ず実現できる。いつだって忘れないでほしい。すべて一匹のねずみから始まったということを。」
「人々はよく私に成功の秘訣を知っているんじゃないかとか、どうやったら夢を実現できるかとか聞いてくるが、私の答えは、努力して実現するだけ、というものだ。」
なぜ、彼からこんな言葉が出てきたか。彼には、壮絶な挫折の繰り返しがありました。
何度失敗し、挫折しても、「子どもに夢を」という情熱を持ちながら粘り強くやり抜いた結果、ディズニーは成功を掴むことができました。
彼をはじめとする目標を達成した人の多くの条件は、「情熱を維持し、粘り強く続ける力」です。才能ではなく、自らの目標を叶えるためにあらゆる行動を「やり抜く力」なのです。皆さんにも熱い情熱を感じます。もう条件は揃っています。
だからこそ、自分の夢ややりたいことをかなえる為、自分を信じてとことん力の限り突き進んでください。やれば必ず結果はついてきます。

卒業式や終業式を迎える日、成長した皆さんの姿に出会えることを期待して始業式のメッセージとします。
 
令和5年(2023)10月12日
                        校長 名和野新吾

前期終業式にあたってー校長メッセージー


生徒の皆さん、おはようございます。
前期の終わりに当たり、また美工作品展を前に、皆さんにミッセージを送りたいと思います。

本校はこの4月にこの地に移転し、ようやく半年が経ちました。この間、大きく環境が変わる中、登下校をはじめ、様々な学習、文化祭や美工作品展に向けた行事、地域との連携などの取り組みに、ストレスフルな日々を送ってきたのではないかと思いますが、皆さんは環境に慣れる努力を惜しまず、よく頑張ってくれました。まずは皆さんに感謝の言葉を送りたいと思います。ありがとう。

10月1日、京都市立芸術大学と本校のオープニングセレモニーが京都芸大のホールで開催され、私を含めた管理職と、生徒代表として生徒会執行部の3名が出席をしてきました。式典では、音楽学部の学生による記念演奏などもあり、盛大に催されました。また京都芸大では2日の月曜日から授業が始まっています。1500名を超える学生と教職員の方が、この崇仁地域に集まることになり、更に大きく環境が変わります。先週、担任より配布した「京都市立芸術大学移転・開学における注意」のプリントに書いていることをしっかり守り、何か困ったことなどがあれば、遠慮せず近くの先生に伝えてください。

さて、昨日、美工作品展の搬入が終わりましたが、皆さんにこの場を借りて、お伝えしたいことがあります。1年生の生徒の皆さんにはお伝えしましたが、この場で改めて説明させていただきます。

移転を機に新しい教育活動へと転換をしていく中で、美工作品展についても新しいあり方に改革を図りました。具体的には、京都市京セラ美術館での展示は、今年度入学の1年生からは3年次のみに作品を展示することになります。したがって、今年度の展示は2・3年生のみ、来年度は3年生のみとなります。理由は、美工における様々な学びを、新設備の活用や地域社会との連携等、新しい観点からより効果的なものとするべく見直し、それに合わせて最適なタイミングで成果を発表できるようにするということ。また、美工作品展自体の自由度を高め、美工での学びの集大成を発表する場として生徒の皆さんが多様な試みを実践できるようにするためです。これからも、生徒の皆さんがより良い学びを得られるよう、日々の教育活動に合わせて美工作品展も進化を続けます。美工作品展のあり方が変わっても、生徒の皆さんのため、そして保護者や市民の方などご来場いただくすべての方に向け、学校として一丸となり素晴らしい作品展を開催していくことに変わりありません。皆さんの理解と協力をお願いします。

本日も終業式の後、2・3年生は美工作品展の展示と続きや合評会が行われます。作品を構想から完成まで1年間をかけて制作した人、いくつかの課題に挑戦し、その中から納得いく作品を展示する人、作りたい作品が思い通りいかず、納得いかないまま展示しなければならない人など、様々な思いの中でこの日を迎えたことでしょう。試行錯誤を重ねながら精一杯作品制作に取り組んできたと思います。実力を出し切った人も、今回は出しきれなかった人も、この間、制作に取り組んできたその姿勢や精神力はとても素晴らしく、称賛に値するものです。しかし、ここで終わらないのがクリエーターです。もうすでに、次の作品構想に入っている人がいるのではないでしょうか。それが創造者たるものです。しっかりとこの美工作品展の期間中、自分の作品と向き合い、感じて、考えて、次なる表現に向かう準備をしてください。1年生の皆さんは、先輩たちの制作した作品やギャラリートークで語られる言葉から、そのクリエーターたる姿勢や意気込みを、体全体で感じてください。京都市京セラ美術館での作品展は、すでに2年後に迫っています。

最後に、皆さんにお願いがあります。皆さんは好きな美術を心ゆくまで堪能しています。それができるのはもちろん皆さんの「好き」という思いが、大きな原動力となっていますが、思いだけではものづくりはできません。制作する環境を作り出してくれる友達、先輩・後輩、そして保護者の方、先生方をはじめ多くの方が皆さんを支援してくれました。周りのすべての方への感謝の気持ちを忘れないでください。好きなことがやれることは幸せなことです。今日家に帰ったら、家族の方に感謝の気持ちを言葉にして伝えませんか。そして、多くの市民の方々も多数来場してくださる伝統ある美工作品展。主催者はあなた方です。皆さんの一人ひとりが、作品展を開催できること、そして観覧していただけることに感謝し、礼儀を尽くすことが大切です。そしてこの作品展を立派に成功させましょう。

これを私からのメッセージとさせていただきます。しっかり胸に刻んでおいてください。
後期始業式で成長した皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

2023年10月4日
                       校長 名和野 新吾

京都市立芸術大学・京都市立美術工芸高等学校 移転オープニングセレモニーを開催

10月1日(日)の13時30分より、京都市立芸術大学堀場信吉記念ホールにて京都市立芸術大学・京都市立美術工芸高等学校 移転オープニングセレモニーが挙行されました。

9月末日をもって京都駅東部崇仁地域への大学・高校の移転がすべて完了し、この日を迎えました。式典では、オープニングムービーに始まり、ファンファーレ、開式、主催者挨拶、おことば、来賓祝辞、祝辞ビデオメッセージ、記念演奏、記念祝辞、テープカット、崇仁子ども御囃子会演奏・地元ご挨拶、閉式の順でセレモニーは終了しました。

その後、京都市立芸術大学新キャンパスの施設内覧会を行われ、笠原記念アンサンブルホールやギャラリー@KCUA、伊藤記念図書館、アートスペースK.Kaneshiro・交流スペースなどを見学させていただきました。

本校からは、教職員を代表して、校長・副校長・教頭・事務長の4名と、生徒を代表して生徒会執行部の3名が出席させていただきました。テープカットの後、本校生徒に門川大作京都市長から温かい言葉をかけていただきました。

いよいよこの新しい地で両校が開校し、新たなステージを迎えることになります。

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図書館で『未知との遭遇』してみませんか?

 1977年に制作公開された映画「未知との遭遇」。高校1年生の私は、バスに30分揺られて片田舎から街の映画館まで出かけていきました。映画の題名からも想像力を掻き立てられたのですが、映画館入口上部の大看板には、「これから自分の知らない世界にどうぞ」というメッセージ性の強い絵が掛けられており、ワクワクしながら入館したことを今でも昨日のことのように思い出します。この映画は、スティーブン・スピルバーグ監督が人類と異星人の接触を描き世界的ヒットを記録したSF映画です。(興味のある方はぜひ観てください。)映画を観ることが好きな私は、映画館が私自身の想像力形成に大きく影響を与えた場所の一つだと思っています。

 なぜ「図書館ニュース(今後生徒配布される予定)」の冒頭で映画のことを書いたのかというと、図書館は映画館と同様「未知との遭遇」を与えてくれる場所であるということを皆さんに知ってもらいたいからです。図書館というと何か勉強するところ、あるいは調べ物をするところ、という答えが返ってくることが多々あります。でも図書館はそんな場所を提供するだけのものではありません。私は、図書館や本屋は何の目的もなしにぶらぶらして、書架の間を歩いて楽しむ場所であるとも思っています。今の時代、調べ物や必要な本はインターネットを利用すれば簡単に知識も必要な本も手に入ります。ピンポイントで自分の求めたい知識や本は探せますが、「思いもかけなかった自分」に出会うことはできません。思いもよらない偶然の出会いが生まれるのが、リアルな場所の魅力です。ちなみに私は様々な図鑑を見ることが一番大好きです。自分の知らない世界を知り、体験することで新しい「知の扉」が開かれます。先日も仕事と仕事の合間に、図書館が近くにあったので立ち寄りました。目的もなく分類別になっている書架をぶらぶら歩きをしながら背表紙の題名を見ていると、目に止まる本がいくつかあります。時間の許す限り手にとってパラパラとページを捲りながらどんな本なのか、何が自分の興味を引いたのか、など自分を見つめている自分がいます。また、職員さんたちの個性溢れた選書コーナーや貼り紙につい釣られて本を取って、その本の世界に没入してしまいました。

 実はこのように本を探す目的もなく、書架の間をただぶらぶら歩きながら本を眺めることを図書館学では「ブラウジング」と呼ぶそうです。ブラウジングを行う中で「こんな本があったのか」「この本はおもしろそう」「装丁のきれいな本だ」等のさまざまな発見が、あなたの新たな知への刺激となります。今まで自分でも気づいていなかった分野に興味が湧いたり、自分の知らなかった世界を教えてくれたり、本のページをめくれば、そこにはさまざまな世界が広がっています。過去や未来、空想の世界、宇宙やミクロの世界、さまざまな国の文化や価値観、人の生き方にも出会えます。経験できない人生も疑似体験できます。これこそが「未知との遭遇」そのものでないでしょうか。

 こうしたブラウジングの効用が、近年再評価されはじめているそうです。生徒の皆さんは、日々の学習、制作、友達とのつきあい、となかなか忙しく、ブラウジングする時間が取りにくいかもしれません。ですが、学校生活の隙間時間(昼休みや放課後)に学校図書館を、帰宅途中やお休みの日の隙間時間に図書館に立ち寄って、自分の「知」の幅を拡げてみませんか。図書館は決して敷居の高い場所ではありません。新たな時代のあなたの自由や夢を実現するために、「感じる」「考える」「表現する」ことをより高める場所となる図書館を、ぜひ訪れてみてください。

                    校長  名和野 新吾

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行事予定
2/12 建国記念の日
京都市立美術工芸高等学校
〒600-8202
京都市下京区川端町15
TEL:075-585-4666
FAX:075-341-7006
E-mail: bijyutukougei@edu.city.kyoto.jp