京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/04/30
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「美術を学ぶ」から「美術で学ぶ」学校へ。美工(美術工芸高校)は、生徒たちに未来必要な力を身に付けさせる教育活動を展開しています。

第43回卒業式 式辞

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●第43回卒業式 式辞

 木々の芽吹きが始まり、春の息吹を感じる今日の佳き日、令和四年度京都市立銅駝美術工芸高等学校 第四十三回卒業式をかくも盛大に挙行できますことは、卒業生はもとより、教職員にとりましても大きな喜びであります。

 本日、京都市教育委員会をはじめ、PTA役員の皆様、並びに、平素よりご支援をいただいております 美工交友会、京都パレスライオンズクラブ、銅駝自治連合会よりお越しくださいましたご来賓の皆様のご臨席を賜り、卒業生の前途を祝福いただきますことを、心より御礼申し上げます。また、保護者の皆様、お子様の栄えあるご卒業を心よりお喜び申し上げます。

 ただいま、卒業証書を授与されました八十七名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、入学以来たゆまぬ努力を積み重ね、美術工芸の専門高校で三年間の学びを全うし、ここに晴れて卒業の日を迎えられたこと、心よりお祝い申し上げます。
 皆さんは明治十三年、一八八〇年に創立された京都府画学校以来一四二年を超える歴史と伝統をもつ美術学校の卒業生として、社会に巣立ちます。その誇りと大きな志をもって、それぞれの新しい道を歩み始めてください。

 さて、今、皆さんが飛び立とうとしている社会は、第四次産業革命とも言われる AI の急速な進化など、技術革新が目覚ましく進展・普及し、超スマート社会 Society5.0が到来します。それに伴い人の働き方や生き方を含めた社会全体の構造までが激しく加速度的に変化しています。具体的にどのように変わっていくのか、その変化の速度や姿は誰にも予測することはできません。そのような時代を生き、時代を切り拓いてほしい皆さんに伝えたいことがあります。

 それは、違う景色に出会い、違う景色を創り出していってほしいということです。それは何かを創り出したり行動を起こしたりする上で必要不可欠な「好奇心」や「わくわく」という気持ちを持ち続けて欲しいということです。皆さんはクリエイターですから、分かってもらえると信じています。
 「違う景色に出会う」ことについて、二つのエピソードをお話しします。
 一つ目は、日本の資産家で、二〇二三年に民間人初の月旅行への挑戦を表明している前澤友作さんについてです。彼は二〇二一年、「ディアムーンプロジェクト」という月に行く計画を発表し、「宇宙へ行くチャンスをより多くの、より多様な人に開きたい」と、同乗者八名を世界中から公募。二四九の国と地域から約百万人の志願者が集まり、実際に前澤さんと一緒に月へ旅立つ八人のクルーが選抜され、昨年末の十二月に発表されました。前澤さんはインタビュー映像の中で、「なぜ月に行くのか」の問いに対し、「理由は三つあり、一つ目は、好奇心。まだ見たことのないもの、行ったことのない場所に行きたい、という好奇心を満たしたい。二つ目は、地球の素晴らしさを改めて感じたい。自分の生まれ育った地球、偉大な地球、ここに改めて感謝したい。三つ目は、自分の小ささ、未熟さを改めて実感したい。そういうことを通して、もっと頑張ろう、もっと成長しよう、きっとそう思えるんじゃないかと思っています。」と答えています。

 理由の一つ目にあった「好奇心」。この好奇心はまさに未知のものに対する「わくわく」した気持ちなのではないでしょうか。この話を聞いて、皆さんはワクワクしましたか。チャンスがあれば月に行ってみたいと思いましたか。私は山に囲まれた土地で過ごしていた幼少の頃から、空を飛ぶ飛行機を眺めては、「あの山の向こうには何があるのだろう。大きくなったら飛行機に乗って、違う世界を見てみたい。できれば外国に行ってみたい。」という思いを抱いていました。大学時代、ようやく夢が叶っておよそ一ヶ月間ヨーロッパに滞在し、様々な文化や多様な人々に出会った日のことを、昨日のように覚えています。その時の肌身で感じた感覚は今でも自分自身の考え方や行動の根幹をなしていると思っています。今やグローバル化が進み、海外へ行くことも当たり前の時代となりました。また、実際に行かなくてもインターネット上でいくらでもバーチャルとして体験することもできます。
 しかし、現実に自分の足で、違う文化や景色に触れることが、それまでの自分自身の価値観や見方・考え方を大きく変えるきっかけになると私は思います。

 エピソードの二つ目は、私の好きな物語の一つに、モンゴメリー夫人が書いた『赤毛のアン』があります。その物語の終盤に主人公アンは、素晴らしい未来を信じてこう言います。「今、その道は、曲がり角に来たのよ。曲がったむこうに、何があるかわからなけど、きっとすばらしい世界があるって信じていくわ。それに曲がり角というのも、心惹かれるわ。曲がった先に、道はどう続いていくのかしら。緑の輝きや、そっときらめく光と影があるかもしれない。新しい景色が広がっているかもしれない。美しいものに出逢うかもしれない。その先でまた道は曲がって、丘や谷があるかもしれない。」
 この物語には、前向きな姿勢と豊かな想像力で様々な困難を乗り越え、新たな世界に向かうアンの姿が描かれており、多くの読者に勇気を与え続けています。アンのように「違う景色を見てみたい」という好奇心は、人を新たな自分へと解き放ち、人生を豊かにしてくれることでしょう。

 知らない世界を見てみたい、訪れてみたいという「好奇心」、それは「わくわく」とした感情であり、今までとは違う景色を見てみたいと思う気持ちに他なりません。この気持ちが心を動かし、発想を豊かにし、何かを生み出したいという原動力となります。本と出会う。人と出会う。知らない土地を旅してみる。今までに経験したことのないようなことを体験する。少しだけいつもとは違う行動が、あなたを体験したことのない世界に導いてくれます。

 先程、私はディアムーンプロジェクトの話をさせていただきました。
クルーに選考された八名はクリエイターやアーティストがほとんどです。いつの時代も、新しい世界をイメージし、創造するのはクリエーターたちです。この月への旅行が実施された後に、彼らがどのようなクリエイティブな提案をしてくれるのかが、私も今から大変楽しみです。
 美工の卒業生となる皆さんもクリエイターの一人です。好奇心を持ち続け、新しい景色を想像し、新しい世界を創り出していって欲しいと切に願っています。家族や世界中の人が幸せを感じられ、他者に優しく世界を創り出してください。

 本校もこの四月、新しい景色の場所へ移り、校名も「美術工芸高等学校」として新たに出発します。我々教職員も在校生も、わくわくした思いと勇気をたずさえて、新しい世界へ旅立ちます。そして、新たな景色を創り出す学校になっていきます。卒業生の皆さんには、校舎が変わり校名が変わっても、美術工芸高校が母校であることには変わりはありません。いつまでも愛し、見守っていてほしいと思います。

 結びに当たり、保護者の皆様、この三年間、本校の教育活動に深いご理解と温かいご協力を賜りましたこと、高い所からではございますが厚くお礼申し上げます。慈しみ大切に育ててこられたお子様の立派に成長されました姿に感慨もひとしおのこととご推察申し上げます。本校での3年間の高校生活を経て、お子様は心身ともにたくましく、頼もしい大人へと成長されました。どうかお子様の輝ける前途を温かく見守り、時には励まし、これからも支えていただきますようにお願いいたします。

 八十七名の卒業生の皆さん、皆さんはこれまで誰も経験したことのなかったコロナ禍の状況を初めてを経験し、素晴らしい対応力で乗り切り、美工での学びを全うされました。そして立派に成長をされました。これらの力を糧に、一人ひとりがそれぞれの道に向かい、力強く旅立ち、その前途が洋々たることを願って式辞といたします。

 令和五年三月一日

        京都市立銅駝美術工芸高等学校長  名和野 新吾


新年のご挨拶

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「生徒の皆さんへ」

 新年おめでとうございます。

 「かくて明けゆく空のけしき きのうにかわりたりとは見えねど
  ひきかへめずらしきここちぞする」 
                吉田兼好(『徒然草』第十九段)

 現代語訳すれば「元旦の夜が明けていく空の景色は、見た目に普段の朝と変わりないが、状況がいつもと違うので特別な心地がする。」ということでしょうか。新年を迎え、皆さんは何か特別に新しくなったような気持になりましたか。

 皆さんには常日頃から節目節目には自身を振り返り、次のステップにつなげていくような行動をしてほしいとお話ししていますが、新年を迎え、どのような目標や決意を抱きましたか。

 今日という日や、今という時は二度と戻ってはきません。だからこそ時間を大切にし、自分自身がやりたいことに焦点を当て、目標を立て、チャレンジ(トライ)して欲しいと考えています。そうすれば、必ず以前とは違う景色(世界)が見えてきます。その違う景色を見るための過程(努力)が、皆さんを成長させ、やり抜く力を育ててくれます。そして違う景色が見えた時の達成感は、何事にも変えられない糧となり、更なる次のチャレンジへと自身を導いてくれます。チャレンジの大きさは関係ありません。勇気を持って一歩踏み出しましょう。上手くいくことも上手くいかないこともありますが、何度も立ち上がって、チャレンジを試みてください。そんなあなたを誰かが見守ってくれ、支えてくれます。

 何かを変えることはとても大変なことですが、創作好きな美工生には大きな強み“パッション(情熱)”があります。自分自身を信じて挑戦してください。私はそんな皆さんを心より応援しています。もし、チャレンジして少しでも何かが変わったら、ぜひ校長室の私の所に来て、お話を聞かせてください。

 話は変わりますが、本校にとって今年度は節目の年となります。銅駝美工として独立開校し、43回目の元旦を迎えました。この地(校舎)で迎える新年は最後となります。これまで4000名を超える生徒がこの校舎で学び、多くの思い出を作ってきた場であり、私も含め教職員も生徒と一緒に苦楽を共にした場でもあります。そのことを考えると、ここを去ることにとても寂しさを感じます。一方で、4月には校名を「京都市立美術工芸高等学校」と改称して京都駅東部に移転、新しい美工の歴史を刻む年となります。未来を担う青年を育成する学校になるためには、教職員と生徒の皆さんや保護者の方をはじめ、多くの学校関係者の方が想いを一つにし、一緒に考え、協力し合いながら取り組むことが必要不可欠になります。その結果として、どこにもないような素晴らしい学校ができると私は確信しています。このような節目の年に皆さんと一緒に学校を挙げての取り組みを成し遂げることに大きな期待をしています。

 最後に、皆さんもよく知っている映画「タイタニック」や「アバター」の監督ジェームズ・キャメロンの言葉を贈ります。

 「失敗することは、アートであり、冒険でなければなりません。信じるからこそ、新しい何かが生まれるのです。どんな発明も、リスクを負わずには生まれなかったでしょう。だからこそ、リスクをとる勇気を持たないといけないのです」

 本年もよろしくお願いいたします。

 2023年(令和5年)1月5日

                        校長 名和野 新吾


校長メッセージ「生徒の皆さんへ」

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「生徒の皆さんへ」

 2022年も年の瀬を迎え、あと数日で新年を迎えます。

 皆さんにとってこの一年を振り返って、いかがだったでしょうか。
 嬉しかったこと、楽しかったこと、悲しかったこと、辛かったこと、頑張ったこと、やり抜いたことなどを経験し、皆さん一人ひとりが1年前より成長した姿になっていると確信しています。(確実に成長していますから、自信を持ってください。)

 今年を本校の主な行事で振り返れば、3月の卒業式で3年生を送り出し、4月には入学式で新入生を迎えました。5月は昨年度まで実施できなかった体育祭を行い、全身で喜びを表現する生徒の姿を見ることができました。7月は文化祭を実施、クラス劇のクオリティーの高さに感心し、感動しました。10月には最大の行事「美工作品展」を京都市京セラ美術館で開催、約4600名の方の入場があり、皆さんが制作した作品を見て感動していました。また、11月には2年生が昨年度行けなかった美術見学旅行に行くことができました。

 日本や世界に目を移せば、2月に平和の祭典と言われた北京五輪が開催されましたが、同時にロシア軍のウクライナへ侵攻開始され、現在も続いています。3月の宮城・福島で震度6強の地震が発生し東北新幹線が脱線、4月には成年年齢が18歳に引き下げられました。知床半島沖で観光船「KAZU l 」が沈没し、多くの方が犠牲になりました。5月には銀河系の中心にあるブラックホールを世界初観測したニュースが飛び込んできました。そして7月安倍晋三元首相が銃撃され死亡、9月には英・エリザベス女王が崩御しました。11月は満月が地球の影に完全に隠れる皆既月食と、月が天王星を隠す天王星食が同時に発生。1580年7月の土星食以来であり、本校でも観測会を実施しました。また、サッカーワールドカップカタール大会で日本がドイツやスペインに歴史的な逆転勝利、決勝トーナメントに進みました。そして新型コロナウイルス感染は今でも終息をむかえておらず、再び拡大傾向にあります。

 取り上げるときりがない程様々な出来事が本校でも、日本をはじめ世界各地でも起こり、身近でない出来事も私たちに大きな影響を与えています。その影響から逃れることは、このグローバル社会ではとても難しいことです。良い影響ならば問題はありませんが、そうでないものは、私たちの生活や幸せを脅かすものとなります。私たちには憲法で保障されているように幸福になる権利があります。しかし、それはただ人任せにして得られるものではなく、自ら考え行動しなくては得られないものも数多くあります。幸福で、肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態「will‐being」を達成するためには、私たちは学び続け、考え、行動を起こすしかありません。決して大きな取り組みでなくてもいいのです。隣に困っている人がいたら少しお手伝いをする程度でも、少しずつですが自分も変わり、周りも変わっていきます。自分が幸せでなければ、人に優しくすることはできません。そのような小さな取り組みが、やがて世界を動かす原動力になることを証明している事例が数多くあります。

 先日、2022年の「今年の漢字」に選ばれたのは「戦」でした。ロシアによるウクライナ侵攻や、物価高との戦いが理由ということです。

 「一日、生きることは、一歩、進むことでありたい。」(湯川秀樹)

 これは湯川秀樹博士の言葉で、「今日を懸命に生きよう。一歩ずつ進むと、数年後には、見違えるほど成長した自分になっているはずだ。」と解説にあります。

 同氏がこの言葉を述べたのは、第二次世界大戦後の混乱期。世界もまだ混沌としており、ドイツが東西に分裂され、中国ではようやく中華人民共和国設立の宣言が行われた年です。そのような時期に、同氏はどのような思いでこの言葉を発したのでしょう。私は、先行き不透明な状況にあっても、確信を持って「今日を懸命に生きようとする努力が大事である」と言いたかったのだと受け止めています。最後の「ありたい」という言葉で締めくくっているところが、前を向いて進もうとする私自身に並走しようとしてくれることばに捉えることができ、素敵だと思います。「頑張れ!頑張れ!」だとしんどくなってしまう。「頑張らなくてもいいよ」では、何も変わらず反対に後退してしまうかもしれない。湯川氏の言葉であれば、前進するけれど、「少しくらいは休んでもいいよ」と囁やいてくれていると思うことができ、勇気をもらえませんか。

 さて皆さんにとって今年はどのような年だったでしょう。「ゆく年2022年」の様々な出来事を振り返りながら、「くる年2023年」の安寧を祈ります。

 2022年12月27日
                      校長  名和野 新吾

人権学習における校長メッセージ

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生徒のみなさんは、今日のお話を聞いてどのような感想を持ったでしょうか?
お話を聞きながら様々なことを考え、思いを巡らせたことでしょう。

来年の4月から銅駝美工は移転をします。活動を始める新校のある崇仁地域は、今、説明していただいたような歴史を持った場所でもあります。お話にあったように、現在、崇仁地域には、他地域へと転居される方もたくさんおられますし、そのまま住み続ける方もおられます。勿論、新たにこの地域に転居されてお住まいの方も多くおられます。

このような崇仁地域の歴史や成り立ちを知ったうえで、私たちは新しい学校に通いながら、街づくりの一躍を担うことになります。

ホームページに掲載しましたが、先日、私と副校長で崇仁地域の文化祭に参加させていただきました。その崇仁文化祭には、本校の生徒の作品数点を展示させていただき、住民の方やその地域で働いている方が、本校生徒の作品を見て、大変喜んでいました。
また、10月に開催した本校の美工作品展を見にも来ていただいており、高校生がこのようなレベルの高い作品を製作することができることに非常に驚かれていました。

そのような魅力ある高校生が、京都芸大生とともに、この地域にやってくることを、とても喜び、期待をしておられました。そして、様々な場面で、高校生の力を借りたいと熱く話をしていただきました。

学校は、生徒や教職員、保護者のためだけにあるものではありません。地域に根差してこそ学校が発展を遂げるものだと考えています。私は、生徒の皆さんと教職員が一緒になって、京都芸大をはじめ様々な方と協力し、地域のよりよい未来を作ることに寄与したいと考えています。
これまで銅駝学区で地域の方と一緒に連携し、地域を盛り上げてきたように、次の崇仁地域でも、まちづくりに参加していきたいと思っています。

私たちは、先生のお話にあったように、興味本位のうわさ話やSNS上での悪意のある誹謗・中傷の言葉などに惑わされるのではなく、正確な情報に基づいて、理性ある行動をしなければなりません。そのために必要なことは「知る」ことです。

正しい知識を身につけるためにも、これからも継続的に学習を続け、一緒になって人権意識を高めていきましょう。美術を愛し、人のことを大切に思う皆さんなら、そのような行動ができると信じています。

今日の講演会は、その第一歩であり、これからも引き続き人権学習の取組を進めていきます。
みんなで一緒に新しい場所で美工の歴史を作っていきましょう。

今日、このような話を聞いて、不安や疑問を抱いた人がいたら、気軽に近くの先生に相談してください。校長室に来てくれても構いません。少しでも皆さんが不安を抱えることなく、新高に通えるようサポートをしていきたいと思っています。

先生、今日は本当に大切なお話をしていただき、ありがとうございました。先生から投げかけられた問いに対し、生徒と一緒になって真摯に向き合っていきたいと思います。

                       校長  名和野新吾

美術見学旅行に向けてのメッセージ

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            「喜びを胸に」

待ちに待った宿泊行事「美術見学旅行」がこの度実施できることは、生徒の皆さんをはじめ、保護者の方や教職員にとっても喜びがひとしおなのではないでしょうか。
本来であれば半年前の3月(1年次)に3泊4日の関東方面への美術研修旅行が予定されていました。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大により実施が見送られ、2年次に延期としたものの、今年度に入ってからも感染者数がなかなか減少しないこともあり、気をもみながら日々を送っていましたが、秋となり、感染者数も減少した今、実施できることに心から感謝しています。

皆さんは本校へ入学し、早いもので1年6か月が過ぎました。この間、美術工芸の専門科目を中心に様々な学習を通して、「感じ」「考え」「表現」してきたと思います。この美術見学旅行では、様々なジャンルの本物の作品に出会える機会です。同じ表現者として作品の前に立ち、対話を試みてください。作者の意図に関係なく、素晴らしい作品は時空を越えて私たちに何かを語り掛けてきます。表現者は、心が揺さぶられた時に何かをつくりたいと思うもの。その心を揺さぶられる素晴らしい作品に出会えたなら、その喜びは一生の宝物となります。そんな経験を皆さんにしてきて欲しいと願っています。今、私たちの世界はインターネットでつながり、端末を使えば何でも検索ができ、調べたことを画像や映像で簡単に見ることができる環境にありますが、実際に現地へ行って、五感を働かせて学ぶ経験はかけがえのないものであり、美工ならではの取組です。

また、高校時代の宿泊行事は、一生の思い出となるものです。同じ志を持つ仲間と美術鑑賞三昧の旅をし、様々なことを語り合い(就寝時間は守ってください)、一緒に過ごす時間はきっと人生を豊かにしてくれるものとなります。

この旅行が皆さんにとって一生の思い出となり、表現者としての素晴らしい宝物との出会いになることを願っています。

“Please enjoy yourself.”
 
                      校長  名和野新吾

後期始業式 校長の話

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(後期始業式)

後期が始まるにあたり、いくつかの話をしたいと思います。

 まずは「美工作品展」いかがでしたか。4600名という方が来場くださり、皆さんの作品を見ていただきました。そして多くの方に褒めていただきました。また、本校の教育に対し、温かい激励もいただきました。

 来場者アンケートのコメントを少し紹介します。「限られた期間で作品を仕上げられたと思えないような力作揃いで、生徒さんたちの才能は素晴らしいと思います。」「芸術に疎い自分でも楽しめました。生徒一人ひとりが、素晴しい作品を作り上げていることに驚きと感動がありました。」「作品の説明をお願いしたら、わかる範囲で教えてもらえ、声をかけて良かったです。」「生徒さんと交流できたら、更に作品を理解できそうだなと思いました。」

 また、本校受検を目指している中学生からは、「全ての作品からその生徒自体の思想や繰り広げる世界が読みとれ、とても素晴らしかったです。色彩、形、物の表現など私の想像する物と異なる物ばかりで驚きました。私は銅駝受検を考えている者ですが、いずれこのような素晴らしい作品が制作できるような人になりたいと思いました。また、受検に向け頑張ろうという思いもより一層強まりました。」というコメントをいただきました。意見の中には要望等も書かれていますので、いただいた意見を学校としてしっかり受け止め、今後の作品展をより良くするために活かしていきたいと考えています。

 皆さんの作品は、自分の手を離れ、見ていただいた人の心を揺さぶりました。皆さん自身はどうですか。私は作品展で当番にあたっている人に声かけをし、思いを語ってもらいました。人に語ることは非常に大切な学びです。客観的に自分を振り返り、自分でも思ってもみなかった言葉が出てくることもあります。皆さんは本当に色々なことを考えていました。5 日間の作品展を終え、自分の作品と対話をしたり、他者の作品と対面したりして、何を考えましたか。様々な思いを持ったのではないでしょうか。その思いを次なるステップアップのために大切に育ててください。それが皆さんをきっと変化させてくれます。

 もう一つ皆さんにお伝えしたいこと。それは新校章のことです。
 美工作品展の初日にお披露目式を行いました。皆さんの中にも参加してくれた人がいます。ありがとう。さて、本校が来年4月、新築移転し、「京都市立美術工芸高等学校」と校名を改称、更なる飛躍をとげるため、校章を全国の方から公募し、この度このデザインを選びました。新校章のコンセプトはすでにホームページにも掲載していますので、ここでは紹介を控えますが、この校章に込めた想いを伝えたいと思います。

 「感性がきらめき、視野が広がり、積み重なって新しい『美』がつくられる。それは、あなたが “美しい” 何かと出会った時に抱く『わくわく』する感情が、やがてまた誰かに感動を与える『わくわく』を作り出していく、ということ。この京都という魅力あふれる文化と伝統が息づく地を足場に『美』を通して、生徒・地域と共に世界に新しい価値を創造していく学校でありたい。 このような想いを表しています。

 この校章は新しい学校のシンボルとして、皆さんと一緒になって、育てていきたいと考えています。3年生の皆さんもよろしくお願いします。

 最後に、今日から後期授業が始まります。そこで私から皆さんにお願いがあります。それは学び方についてです。

 皆さんは「学ぶ」ということをどのように考えていますか。私は、知識や能力を定着させ、実社会で活用できる状態にすることが学びの本質だと考えています。学校や家で、教科書を読む、授業を聞く、動画を視聴する、調べる、問題を解くなどの学校が課題を出して行なっている教育活動の学びだけでなく、主体的な行動、例えばニュースを見る、本を読む、学校の教育活動以外のことに挑戦する、友人と雑談をする、これまで行ったことのない場所に行くなど、様々なことに興味を持ち、行動を起こすことが大きく学びに影響してきます。

 皆さんは、美術に興味があり、本校に入学してきました。描くことやものづくりが好きということは、日頃からの授業を見ても、美工作品展を見ても、よく分かります。自分が本気で好きなことであれば、「上手くなりたい」「もっと知りたい」「その道を極めたい」といった感情が湧いてくるものです。そして、学校生活の中で様々な知識や経験をもとに作品づくりを行っています。では、これから、さらに質の高い学びを目指すには何にどのように取り組めば良いのでしょうか。わたしはその鍵が失敗の過程があっても結果が出るまでの試行錯誤を諦めない「粘り強さ」にあると思います。それは、一つひとつの課題に丁寧に向き合い、自分なりの問いを立て、正解を自分なりに模索する、創意工夫の道なりです。創意工夫の道なりで必要となる力は、自分を客観的に見る力、批判的思考力、課題解決力、やり抜く力などです。試行錯誤の過程で自分の課題に気づき、自己修正していく体験こそが生きた学びであり、一生ものの能力であると私は考えています。指示されたことだけをこなすだけでは未来の自分も世の中も良くはならないのです。これは作品制作の場だけのことを指しているわけではありません。全ての学びや取り組みに当てはまることは付け加えさせていただきます。

 作品展は終わったばかりですが、皆さん、来年の今頃はどうなっていたいですか? 3年生は卒業後の自分の姿を思い描き、1・2年生は1年後の作品展でさらにステップした自分の姿を思い浮かべてみましょう。
 なりたい自分になるために、今日から自分の行動一つひとつを意識しながら過ごしてみてください。 意識するということは、一つひとつの行動が自分を成長させる大切な体験であり、時間はその体験の積み重ねでつくられるということを自覚するということです。小さな一歩が積み重なった先に、変化が必ず訪れます。ここにいる一人ひとりが、必ず成長を遂げることができます。半年前や1年前の自分を振り返ってみてください。小さなことも大きなことも様々あるでしょうが、できるようになったことが必ずあるはずです。自分を信じて、日々を送りましょう。

 これが皆さんに後期が始まる今日、伝えたかったメッセージです。

 卒業式や終業式を迎える日、また一つ成長した皆さんの姿に出会えることを期待して始業式の挨拶の言葉とします。

令和4年(2022)10月12日
                         校長 名和野新吾


前期終業式における校長メッセージ

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●2022前期終業式にあたって

前期の終わりに当たり、皆さんにメッセージを送ります。

昨日、皆さんは美工作品展の搬入・展示を済ませ、今ここにいます。専攻によっては今日も展示をすると聞いていますが、美術館に展示した作品を観てどう思いましたか?
構想から1年間をかけて制作し展示した人、いくつかの課題に挑戦してその中から数点を展示した人、一人ひとり違いはあれど、苦労を重ねながら精一杯作品制作に取り組んできたと思います。

ものづくりには、たくさんの熱意とエネルギーが必要となります。特に夏休み明けから登校の様子や授業の様子などを見ていると、疲れが溜まっている顔が増えていくのが目に留まりました。それくらい何かに集中して過ごしている皆さんを観て、なんて素晴らしいことであり、とても嬉しくかつ頼もしく思います。少しでも何かができるようになった自分をまず褒めてください。自分で褒められないのであれば、仲間とお互いに褒め合いましょう。そして家族や友人に褒めてもらってください。

皆さんの中にはもっと出来たはずなのにとか、全然ダメだと思っている人がいるかもしれませんが、そのこと自体を思うことは悪いことではありません。そう思うからこそ人は成長するのです。作品作りを通して自分と向き合うことが、この学校の素晴らしいところです。しっかりとこの美工作品展の期間中、自分の作品や自分自身と向き合い、感じて、考えて、次なる表現に向かう準備をしてください。それが皆さんが生涯学び続ける力となります。

今話をしたことは君たちへのエールでしたが、次はお願いです。

感謝の気持ちを忘れないでほしいということです。
ものづくりをするということは、決して一人でできるものではありません。制作する場所、制作する時間、制作するための道具や材料が必要です。作品展を開催することひとつ見ても、運搬してくれる運送業者の人、美術館を運営してくれている人も必要です。もちろん制作に疲れて帰った時に、迎え入れてくれる家があり、周りに支えてくれる大人がいます。学校で指導してくれた先生方、勇気をもらったり悩みを聞いて支えてくれた友達や先輩もいます。全てをここに挙げることはできませんが、自分を支えてくれているもの全てに感謝することを忘れないでください。

 作品には人格が現れると私自身は思っています。人格は一夜にして形成されるものではありません。日々の生活の積み重ねです。皆さんにとって一番興味があり、時間を費やしているものづくりにおいて、その感謝の気持ちを持ちながら過ごせば、きっと素晴らしい人格を持った人になれると信じています。私も制作をする時には、まず制作できることに感謝してものつくりをしています。最近は制作する時間が少ないのですが、毎日元気でこうして校長という仕事をさせていただいていることに感謝しています。ただ、今このように皆さんに伝えていますが、恥ずかしい話、私も若い頃は常に感謝の気持ちを持って生活していたかというと、そうではなかったと思います。感謝の気持ちを持って制作をしていたら、もっと学べていたのかもしれないと、考えることがあります。そのことを付け加えておきます。

さて、今年の美工作品展は銅駝美工として最後の作品展となります。20数年間見守ってきたものが最後になるということは寂しさも感じますが、それよりも増して皆さんの作品と出会えることを本当に楽しみにしています。この学校に入学したくて、入試を突破して、様々なことを学んできた成果の一つである皆さんの作品と、ゆっくりじっくり出会いたいと思います。もしかしたら会場当番をしていたら声を掛けるかもしれません。ぜひ私に学んできたことや考えていることを語ってください。その声が私を奮い立たせ、より良い美工の教育活動にするための活力になります。

来年からの美工作品展は美術工芸高校としての開催となります。そして、明日5日、美工作品展会場にて10時30分から新しい美工の新校章のお披露目式を行います。時間がある人はぜひ会場に足を運んでください。皆さんと一緒に祝いたいと考えています。

最後に、多くの市民の方々も多数来場してくださる伝統ある美工作品展。皆さんはこの展覧会の主催者です。作品展を開催できること、そして会場に足を運んでくださり、観覧していただけることに感謝し、礼儀を尽くしましょう。そしてこの制作展を立派に成功させましょう。

2022年10月4日 前期終業式
                       校長  名和野 新吾

文化祭を終えて

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 一昨日から2日間、銅駝美術工芸高校で行う最後の文化祭「銅駝祭」が無事終了しました。

 本校の文化祭のメインは、何と言っても「クラス劇」。今年も劇発表のために早いクラスは4月のクラスが決まった日から動き出しました。6月の中間考査までは台本や役決め、背景や大道具、衣装、音響などの計画を中心に、各係がミーティングを繰り返し、HRの時間や放課後の隙間時間を活用して計画を練り上げていきます。中間考査後は、実際に舞台美術製作、劇練習などが校内のあちらこちらで動き出しました。
 そして迎えた文化祭。生徒たちは一人ひとりの力を結集して、最高のパフォーマンスを披露してくれました。

 創作者・表現者として集まっているこの学校で、クラス劇をつくりあげることは並大抵のことではありません。リアルなコミュニケーションが薄い今の時代に、話合いそれをまとめながら進めることは、ハードルの高いものです。ここに至るまで様々なドラマが各クラスで展開され、時には喜び、時には傷つき、どうしようもない心の格闘に、夜も眠れなかった人もいたでしょう。
 しかし多様性を認めながら他者を尊重し、折り合いをつけ、力を重ね合わせて完成してきた劇を上演することができた喜びは、生涯にわたっての宝だと考えます。

 そのような我武者羅に頑張る皆さんの姿を見ることができたことは、私たち教職員にとっても本当に嬉しいことであり,皆さんの成長する姿を目の当たりにしました。そして大きな勇気を貰うこともできました。
 
 最終日、各賞が発表になりました。受賞したクラスや生徒の皆さんは、おめでとう!一つの励みとして次に繋げてください。残念ですが受賞できなかったクラスや生徒の皆さん、その悔しさは、きっと次の挑戦に繋がることと思います。

 これからも教職員一同、生徒の皆さん一人ひとりに寄り添いながら、一緒になって成長を支援していきたいと考えています。

              令和4年7月6日  校長 名和野新吾

始業式 校長メッセージ

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前期始業式 校長メッセージ

 本日午前中、銅駝美術工芸高校として最後の入学式を行い、91名の新入生を迎えました。また新しく着任された教職員6名を加えたこのメンバーで第43回目の始業式を迎えられることを嬉しく思います。3月1日に卒業生を送り出し、少し寂しくなっていた校内は、本日から新入生を迎え、また活気が戻ってきました。4月は新しい出会いが多くある時です。また自分の立ち位置も変わる時です。その変化を、身体いっぱいで感じ取り、ワクワクしながら新しい未来に向けてスタートを切って欲しいと思います。

 年度当初に当たって、皆さんにメッセージを送りたいと思います。

 本校で学ぶ皆さんに、2つお願いがあります。
 1つ目は「あくなき好奇心」を持ち続けて欲しいと思っています。学びたいと思う動機は「知りたい」から出てきます。いくら授業などで知識を得たとしても、それは単なる「知っている」だけであり、自分の血や肉にはなり得ません。知りたいから調べるし、調べるとまたわからないところが出てきて、また調べる。好奇心があれば学び続けることができますよね。そのような行為が、クリエイティブな仕事をする皆さんには必要不可欠なものです。私自身も作家活動を通して、この「好奇心」の大きさが、その人の将来を左右することを目の当たりにしてきました。作品のテーマを考える時、エスキースや表現するための準備をする時、実際に表現している時、様々な場面に影響を与えるのです。その積み重ねがいつの間にか大きな違いとなって表れる。そんな現実を見てきました。「あくなき好奇心」は、さまざまなものに興味を持ち、新しい発見や、今までにないものを創造するための源泉です。これから毎日1つだけでも良いので、何かに目を止め「これってなんだろう」と思って、探究してみてください。

 2つ目は「やり抜く力」を持って欲しいということです。言うまでもなく皆さんは、この力をもうすでに持っています。そして“もっとできるのではないか”と感じています。これまでの作品作りにおいて、本当にやり抜いてきましたか。少し考えてみてください。「これくらいやったらいいや」などと妥協しませんでしたか。やり抜くとは、自分の持てる力を100%出し切ることだと思います。全ての行動で力を出し切ることはできないかもしれませんが、常日頃から出し切る行動をしていれば、ここぞと言うときも出し切ることができます。とことん本気になって行動している姿は、とってもかっこいいものです。みんながそんな雰囲気になれば最高だと先生は考えています。先日、本校を訪ねてくれた広告会社で働いている卒業生からこんな話を聞きました。「私たちの学年は、一人ひとりがやりたいことがあって、バラバラだったけど、がむしゃらに自分のしたいことをやっていたので、自分も何かやらねばと突き動かされた。それが今の自分を作っている。」と。答えが見えない中で結果を恐れず、何かを真剣にやり抜くことはとても勇気のいることかもしれませんが、そんな環境があるのもこの美工の伝統ではないでしょうか。もっともっとみんなで学校を創造の場にして行って欲しいものです。

 最後に、昨年度末の終業式に、ウクライナ情勢の話をしました。生徒部の森本先生からも何かアクションを起こしてみてはと言う話もありました。その後すぐに新2年生の有志6名が企画書を提出してきて、先週土日の2日間、三条河原町で募金活動を行いました。これはあくまでも私たちが知っている活動のひとつです。皆さんの中には、違う形でアクションを起こしてくれている人が多くいるのではないかと思っています。本当に頼もしく、嬉しい気持ちでいっぱいです。午前中の入学式の式辞の中で、「美術」や「アート」は人の人生や生活を豊かにするものだと言う話をしました。まさに、美術を学ぶ皆さんが心優しく他者に対して思いやりを持っていることに、誇りを持ちます。ありがとう。

 これからも一人ひとりが自分に何ができるのかを考え続けてください。社会で起こっていることに関心を寄せ、自分ごととして捉えて行動してください。このことを皆さんにお願いして、始業式のメッセージとさせていただきます。

 令和4年(2022年)4月8日
                        校長 名和野新吾

入学式 式辞

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第43回 入学式 式辞

 鴨川河畔の早く開いた桜の花が長く咲き誇るこの春の佳き日、京都市教育委員会をはじめ、PTA会長様、平素より本校にご支援をいただいております美工交友会、京都パレスライオンズクラブ、銅駝自治連合会のご来賓の皆様、そして、多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、令和4年度 京都市立銅駝美術工芸高等学校、第43回入学式を挙行できますことは、誠に大きな喜びであり、本校教職員を代表いたしまして、心よりお礼申し上げます。

 ただ今、91名の新入生の入学を許可いたしました。まずは新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員一同、皆さんを大切にお迎えしたいと思います。

 保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。これからの3年間、教職員一同、力を尽くしてお子様の成長を支援してまいります。ご理解、ご協力を賜わりますようお願い申し上げます。

 本校は、明治13年、1880年に「京都府画学校」として創立され、今年で142年目を迎えます。美術工芸科単独の公立高校として長い歴史と深い伝統をもつ学校であり、本校を卒業された諸先輩方は、美術界、産業界をはじめ、各方面で活躍されておられます。皆さんは、晴れてこの歴史と伝統のある美工の入学生となり、また42年間続いたこの銅駝美術工芸高校での最後の入学生となって,1年間この校舎で学ぶことになります。そして来年春には、京都駅東側、京都市立芸術大学に隣接した新しい校舎にて、京都市立美術工芸高等学校生の2期生として、この良き伝統を引き継ぐと共に、新しい歴史を刻んでいくことになります。

 さて、入学生の皆さんは、「絵を描くのが好き」「ものづくりが好き」という動機からこの学校を見つけ、入学されてきたと思います。きっとわくわくした気持ちでこの日を迎えられていることと思います。そのあなた自身のわくわくや夢を,これからも大切に育てて欲しいと思います。そして、入学することはゴールではなく,皆さんが抱いている夢を実現するための一つの節目であり、次の目標に向かって歩むスタート地点です。もし目標がないのであれば、新たに目標を作りましょう。目標を持っていれば、人は歩みを続けることができます。しっかりと夢や希望を持ち、この先、自分はどんな人になりたいのかを考え、その達成に向けて一歩一歩前進していきましょう。今、日本をはじめとする自由経済大国では大量生産・大量消費という状況を作り出し、物質的に満足した生活を送ることができています。テクノロジーの進歩によって生活はより便利になり、パソコンやスマホ1つで家にいても買い物ができ、商品が届きます。凄いことです。あれが欲しい、これが欲しいと言えば、お金さえ払えば手に入れることができます。物質的には、なに不自由なく過ごすことができる社会だと私は思っています。しかし、違う視点から社会を見れば、どうでしょう。こんな豊かな社会ですが,あなたは幸せに感じていますか。あなたの周りの方は幸せですか。地球で暮らしている方は皆幸せですか。国際紛争や気候変動など国際社会は不安定化し、社会は分断され、様々な社会問題も世界的に起こっています。このような予測困難な時代の中での幸せとはどのようなものなのでしょう。私たちはどこを目指し、何をすべきなのでしょうか。どこにも正解はありません。皆さん一人一人がその解を求めるために、これから日々学び続ける、考え続けるべきだと思います。私自身も考え続けています。

 アメリカの企業,アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスは、母校であるアメリカのプリンストン大学の卒業生に向けて「あなたの選択があなたという人間をつくる」とメッセージを送っています。この言葉は、彼が幼少の頃の祖母との会話から教訓を得た考え方のようです。その中で、「才能は生まれついたもので簡単であるが、選択は難しい」と語っています。これはどういうことでしょう。ジェフ・ベゾスが学生に問うた中から5つの問いを紹介します。

 その才能を、みなさんはどう使いますか? どんな選択をするでしょう?
 惰性で生きていきますか? それとも情熱を追いかけますか?
 楽な道を選びますか? それとも誰かのために挑戦し続けますか?
 傷つくことを恐れて何もしませんか? それとも惚れ込んだら行動に移しますか?
 困難なときにあきらめますか? それともなおがむしゃらに挑戦し続けますか?

皆さんはどのように感じましたか。
他の問いも合わせて、本日玄関にあったデジタル掲示板に掲載しています。
 それぞれの問いには答えはありません。このような問いに迫られた時、何を選択するのか、皆さんが決めていくのです。その選択の一つひとつが皆さんの将来を決めていくと言っても過言ではありません。皆さんはこの学校に入試選抜試験を突破して入学してきました。そんな皆さんは、クリエイティブなことに長けています。人よりも少しでも長けているものを才能と呼ぶなら、人は必ず一人ひとり違った才能を持っています。その才能をどのように使うかは自分次第ですが、その使い方で自分の人生が大きく変わるかもしれません。また、周りの人の人生を変えてしまうかもしれません。これから皆さんは中学生の時とは違い、物理的にも精神的にも少しずつ行動範囲を広げていくことになります。18歳の誕生日を迎えるときには、法的に大人になります。これから始まる学校生活は、社会に出るための準備期間です。学校生活や私生活の中で様々な選択や決断を迫られることになります。入学者説明会の時、皆さんにお願いをしました。「まだ入学式まで、3週間あります。皆さんがどのように過ごすかで、美工での学びやスタートが変わってきます。ぜひ大切に過ごしてください。」と。皆さんがこの言葉をしっかり受け止めて、行動してくれたものと私は信じています。そしてこれからは美工生として行動を起こしてくれることを楽しみにしています。

 結びに、皆さん一人ひとりかけがえのない存在です。そしてかけがえのない生徒が270人この学校で学びます。学校は、自分とは異なる多様な他者を知るところ。多様な他者を発見するところです。そして学びを通じて人格を磨くところです。かけがえのない自分の存在と、かけがえのない他者の存在を共に認め合い、高めあってください。

 今、私たちはこれまで経験しなかったような社会状況の中にいます。先にも述べましたが、どれだけテクノロジーが発達し、便利になっても、心の豊かさや幸福度はそれに伴っているのでしょうか。私は、少し違うのではないかと考えています。「美術」や「アート」が今なぜ見直されているのか。なぜ必要とされているのか。皆さんも考えてみてください。私は、30年以上にわたってアーティストとして美術に携わってきて、「アートは人の人生や生活を豊かにするもの」であるから必要であると思っています。この美工で学ぶ3年間が将来の皆さんの「夢」や「希望」をつくることに関われることを教職員一同願っています。皆さんが様々なことにチャレンジし、日々成長する姿を楽しみにしています。皆さんの力と可能性を大いに期待し、式辞といたします。

 令和4年4月8日
                      校長  名和野 新吾

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