京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/05/01
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「美術を学ぶ」から「美術で学ぶ」学校へ。美工(美術工芸高校)は、生徒たちに未来必要な力を身に付けさせる教育活動を展開しています。

平成30年度 終業式にあたって

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 私は、毎日、京阪三条から学校まで4つくらいの徒歩のルートの中から、その日その日の気分でチョイスして通っています。今朝は、比較的暖かく、川沿いの道から鴨川の飛び石を渡って学校まで来ました。鴨川の水は久しぶりに透明度が高く、流れも穏やかでした。昨年の台風や豪雨の時は、ものすごい音を立てて茶色い水がうねっていたのを思い返すと、自然は変化が激しく、やはり「生き物」だと思います。

 私は、昨年4月の始業式に、学校は単なる「入れ物」ではなく「生き物」だと言いました。そして生き物だからこそ、学校にも心臓の「鼓動」や「体温」や「息づかい」が必要だ、と言いました。学校は、鉄の冷たい入れ物であってはならないと思います。皆さんにとって、今年1年、銅駝はどんな学校だったでしょうか。

 高校時代は、大人になる準備期間であり、体の成長と心の成長とのバランスやリズムがコントロールしづらい時期でもあります。当たり前ですが、270名の生徒がみんな同じように成長、変化するわけではありません。授業のこと、制作のこと、集団の中での過ごし方、家族のことなどで悩んだり、心配したり、どうしたらいいかもがいたりした人もいるでしょう。自分は人に比べて弱いとかダメだと思って自分を責めた人もいるかもしれません。そういうことはあまりなかった、1年間結構うまくいったという人もいるかもしれませんが、そういうことで心穏やかでなかった人がいることを知っていてほしいと思います。それぞれ、人には見えない葛藤と努力があったはず。みんな1年間よくやってきたと私は思っています。実は、自己の心身のこと、様々な課題について葛藤し、その結果異なる進路を選択して、今ここにいない人もいます。そのような人のことも心にとどめておきたいと思います。

 学校の「鼓動」や「体温」や「息づかい」は、そこで生活する生徒と教職員がどうであるかで左右されます。様々なことに直面した際、自分とどう折り合いをつけるか、悩んだり考えたりすることは大切です。それは自分が変化するチャンスかも知れません。しかし、しんどいこと、受け止めきれないことは決して我慢せず、ごまかさずSOSを発してください。学校は、葛藤している人、不調になっている人がいれば、そのことに気づき、受け止められる環境でなければなりません。

 皆さん、自分の「鼓動」や「体温」や「息づかい」をコントロールすること、折り合いをつけること、ただし、不調なときは我慢せず言葉にして伝えること、そして他の人の「鼓動」や「体温」や「息づかい」を感じられる人になってください。もちろん教職員も皆さんの「鼓動」や「体温」や「息づかい」を感じられるようにしなければならないと思っています。

 あと半月ほどで、新しい1年生が入学してきます。どうしても銅駝に入学したいと志して頑張ってきた新入生を迎えるために、皆さんと一緒に銅駝をそのような学校にしていきたいと思います。


平成30年3月20日

                    校長 吉田 功

1年美術見学旅行に寄せて

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              春の息吹き

 1年前の3月12日は、中学校の卒業式目前で、すでに銅駝への合格が決まっていた皆さんは、中学校卒業から高校入学という大きな節目のまっただ中にいました。早いもので、まもなく一年が経とうとしています。

 1年生の初め、美術入門研修から始まった美術の学びは、総合的な学習の時間「美術探求」で、美とは何か、美術を学ぶとはどういうことかについて探求し、「表現基礎」で美術の基礎基本を学びながら観察力や実技力を養い感性を磨き、「造形表現」で8分野の実習を経験しながら1つの専攻決定に到達しました。そして、1年間の締めくくりとして、3月12日から美術見学旅行に出かけます。これまでの学校の中での、あるいは京都の中での学びから、遠く離れた岡山、香川で3日間美術三昧の学習をします。私たちは、タブレットで何でも検索ができ、調べたことを画像や映像で簡単に見ることができる環境にありますが、実際に現地へ行って、五感をはたらかせて学ぶ経験はかけがえのないものであり、銅駝ならではの研修です。

 岡山と香川は瀬戸内海を挟んで向き合っています。3月は「水温む」「風光る」季節。この時期の瀬戸内は京都よりも暖かく、心洗われるような自然に触れることができます。とりわけ「瀬戸内国際芸術祭」が開かれた直島を中心とする島々は、アートと自然と人とのつながりを考えられる場所です。この芸術祭は、3年に一度開催されており、今年2019年が4回目の開催となります。今回は皆さんが訪問する約1か月後からの開催になりますが、すでに開催に向けて準備が進められており、その息づかいを感じられるのではないでしょうか。

 私は、今年度は京都駅前バスターミナルから手を振って見送る立場ではありますが、これまで2回引率で経験した旅行では、銅駝の生徒が主体的に学ぶ様子、共に過ごす他の人への思いやり、お世話になる方への感謝する姿をみて、誇らしく感心しました。京都を離れる特別な3日間。この3日間の学びと経験、体に吸収した感覚は、その後の美術の学び、制作活動に必ず大きな力となります。素晴らしい研修になることを期待しています。

 それでは、昨年、現地で詠んだ拙句を掲載し、皆さんを送り出したいと思います。


 三月や海でつながる島と島   吉田功

平成30年度 第39回卒業式 式辞

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               式 辞

 風光る3月を迎え、鴨川の明るい水音が学び舎にとどく今日の佳き日、3年生の巣立ちの日となりました。

 本日、京都市教育委員会をはじめ、PTA役員の皆様、並びに平素よりご支援をいただいております美工交友会、京都パレスライオンズクラブ、銅駝自治連合会よりお越しくださいましたご来賓の皆様、そして多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、第39回京都市立銅駝美術工芸高等学校卒業式を挙行できますことを、心より感謝し、教職員を代表いたしましてお礼申し上げます。

 先ほど87名の生徒の皆さんに、卒業証書を授与いたしました。卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。美術専門高校での3年間の学びを全うし、ここに晴れて卒業の日を迎えられたこと、心よりお祝いいたします。

 保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。お子様は本校で確かな力を身に着けられ、立派に成長されました。この3年間、本校の教育活動に深いご理解と温かいご協力を賜りましたこと、高い所からではございますが厚くお礼申し上げます。

 さて卒業生の皆さん。皆さんは明治13年、1880年に創立された京都府画学校以来139年の歴史と伝統をもつ美術学校の卒業生として、社会に巣立ちます。その誇りと大きな志をもって、それぞれの新しい道を歩み始めてください。

 卒業される皆さんに2つのお話をします。皆さんと過ごした月日を思い返すと、私はまず1年生の時の美術見学旅行のことが思い出されます。倉敷の大原美術館、豊島や犬島、直島のアート作品を皆さんがじっと動かず鑑賞しスケッチをする姿、作品から発せられるメッセージを体中で受けとめようとしている姿に心を動かされました。美術専門高校で学ぶ生徒はこれほどまでしっかり美術作品と対面し、対話できるのだと感心しました。瀬戸内海の島々を舞台に2010年から開催されてきた瀬戸内国際芸術祭のテーマは「海の復権」。太古の時代より人々や文化・物資の交通路であり、人間の生活・生命を支えてきた瀬戸内海は、近代以降、産業開発優先による環境破壊やハンセン病の隔離政策、過疎高齢化による地域力の衰退、海の価値の喪失という課題を抱えてきました。芸術祭は、海・島・人に焦点をあて、島それぞれの個性を大切にしながら、アートの力で課題にアプローチし、展望を切り拓く取り組みでした。芸術祭は3年に一度の開催。しかし芸術祭が開催されない年も、今やアートの力が地域にとってなくてはならない基盤となっており、芸術祭の総合ディレクターを務めた北川フラムさんは、アートが「島の灯台」として機能し始めていると述べています。アートが個人の自己表現に留まらず、傷ついたものを癒やし、閉ざされていたものを解放し、失われていくものを復活させて新たな息吹を起こす。そのような、アートが「社会の灯台」となるように、皆さんがそれぞれの新しいステージで実践していってくれることを期待しています。

 2つ目の話。自動車メーカー・マツダで、デザイン部門担当していた前田育男氏の著書『デザインが日本を変える』には、2016年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー賞、デザイン部門賞をタブル受賞した自動車の開発に至る過程が書かれています。それまでマツダでは、デザイン本部と車体の技術製作部門との接点がないシステムでしたが、この時は、デザイナー、エンジニア、生産担当者など各部門のスペシャリストが最初の段階からチームを作って、開発、生産にあたる仕組みに変更したそうです。「理想をつくるために現実を変える」という思考の転換により、閉じていた各部門が共に創る「共創」を生み出したのです。そして近年マツダでは、新潟県燕市の銅器づくりの職人や広島県の漆芸家とのコラボレーションを行っているそうです。最先端の科学技術を結集させた自動車の開発にあたり、一見遠く離れた存在に思われがちな伝統的な日本の美、日本のモノづくりに注目したのです。多くのものの自動化が進む中、「職人たちはモノとの対話をどのように進めているのか」「意識の高い職人と交流を持つことで、自分たちも簡単に車のデザインを作ってはいけない、もっととことんまで魂を込めないと人の心を動かす作品など作れない」そんな心構えで、世界で高く評価される自動車を開発したのです。戦前の物理学者・随筆家の寺田寅彦は、「科学者と芸術家の生命とするところは創作である。他人の芸術の模倣は自分の芸術でないと同様に、他人の研究を繰り返すのみでは科学者の研究ではない。」また、「観察力が科学者・芸術家に必要なことはもちろんであるが、これと同じように創造力も両者に必要なものである」と述べ、相容れないもののように思われている「科学者と芸術家」に、実は共通点があると指摘しています。科学と芸術、最先端技術と伝統の美、このような異なるもの、離れているものに接点を見つけ、対話し協働することで新たな可能性が生まれるのです。アートは、自分だけの閉ざされた世界ではありません。今後ますます人工知能AIが発達し、予測不可能な時代になると言われていますが、アートを学んできた皆さんは、常に問いを持ち、人と対話し、人と協働して社会的課題に向き合ってください。そして、社会から課題というボールを投げられた時にキャッチできる、さらに社会に課題というボールを投げられるような人になってください。

 今年4回目の「瀬戸内国際芸術祭」が開催されます。公式サイトには「この先地球上に人が生きること、展望を持つこと」を考え、「瀬戸内海が地球上のすべての地域の『希望の海』となることを目指す」と書かれています。地図で見れば海の中に散在している島々。皆さんと一緒にアートの島を訪問した私は、海によって島と島とが離れ離れになっているのではなく、海が、そしてアートが島と島との繋がりをつくっている、という感覚をもちました。離れているものはそのまま孤立しているのではなく、アートの視点や力によって、独自性をもったままつながることができ、そこに新たな価値や魅力が生まれる。アートに未来が託されていることを私たちは忘れてはなりません。

 いよいよお別れです。個性を認め合い、切磋琢磨しながら学びと制作を重ね、立派に成長した皆さんは、本校の誇りです。卒業後、離れ離れになっても、皆さんは瀬戸内の個性ある島々のようにアートによってつながっています。銅駝から巣立つ皆さんが、多様性を大切にしながら異なるものの間に新たなつながり、可能性を創り出す担い手として、地域で、日本で、そして世界で自分らしく希望をもって活躍してくれることを心より期待し、式辞といたします。


平成31年3月1日
                  
          京都市立銅駝美術工芸高等学校長  吉 田 功

校長室ウェブログ 2月3日 「鴨川」

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               鴨川

 冬の鴨川は水鳥の楽園。毎朝、京阪三条駅から地上に出て、鴨川沿いを歩きながら学校までの10分間は、心を洗われるひとときです。カモやサギ、ユリカモメなど多種の水鳥が、首を突っ込んでエサをとったり、緩やかに泳いだり、川土手に上がってちょこちょこ歩き回るのも見かけます。そして冬に渡ってくるユリカモメが群れをなして飛び翔ち宙を舞う様は圧巻です。

 四季折々、鴨川両岸の樹木の姿が変化し水音も高さや大きさが変わります。昨年の豪雨、台風の折には、鴨川は水かさを増し、土色になって轟々とうねり、川底や河岸を削りながら流れていました。天候によって表情を変え、時として荒れた姿を見せる鴨川も、今は落ち着いて丁寧に流れています。

 冬の日の出は遅く、通勤で川沿いを歩く7時30分頃には、東山から朝日が差して鴨川に面した本校実習棟がきらきら輝き、銅駝の朝が始まります。本校の校地は、明治に番組小学校として創立された上京第三十一番組小学校が、鴨川そばに建てられていた舎密局の跡地に移転して銅駝小学校となり、戦後は銅駝中学校として子どもたちが学んできた場所にあります。鴨川の水音が聞こえ、東山、大文字を望む美しいこの場所で、明治以来、途切れなく教育の営みが行われてきました。

 鴨川は、日本画専攻や洋画専攻、染織専攻の生徒がスケッチや写生に出かける場所でもあります。染織専攻では、2年生の実習で鴨川を題材にろうけつ染めの作品を制作します。卒業制作で鴨川を描く生徒もいます。銅駝の生徒にとって鴨川は、学校生活につながっているところ。多感な年齢に美術高校で学ぶ本校生徒。穏やかな明るい表情ばかりではありません。悩んだり、苦しんだり、行き詰まったり。少しうつむきながら登校する生徒もいます。様々な課題にぶつかって辛くなるときは、鴨川を眺め、水音を聞くと、少々楽になるのではと思っています。様々な表情を見せながらも鴨川は遙か昔から途切れなく流れ続け、水は同じ所に留まっていません。川の流れに無常を感じるという文学作品もありますが、「常ならず」ということは視点を変えれば「動かない現状はなく、物事は変わる」ということです。

 3年生もあとひと月ほどで卒業、1・2年生もその後学年を終了し、それぞれ次のステージに移ります。あの顔、この顔、生徒を見ていると、あの時、その時の生徒の姿が思い出されます。年度末までもう少し。今、向き合っている課題、もがいていることもあるでしょうが、時折、鴨川の水音を聞き、水鳥の伸びやかな姿を見てほしい。

 鴨川河畔の桜の樹は、もう春の準備を静かに始めています。


2019年2月3日          
                 校長  吉田 功

2月3日(日) 校長室ウェブログの記事を更新しました。

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 2月3日(日)校長室ウェブログの記事を更新しました。

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2019年 新年のご挨拶

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            新しい年を迎えて

 2019年が始まりました。希望をもって健やかに過ごせる一年であってほしいと願っています。

 昨年11月30日、京都市(行財政局、教育委員会)より「京都市立芸術大学及び京都市立銅駝美術工芸高等学校移転整備事業に係る基本設計について」が発表されました。2023年に京都駅東部崇仁地域へ市立芸術大学と本校が新築移転し、「文化芸術都市・京都」の新たなシンボルゾーンになることを目指す大きなプロジェクトの基本設計の概要が発表されました。基本設計の考え方として、京都の町に受け継がれてきた「通り」「奥庭」「軒下」などの空間要素を効果的に配置し、学内・校内の垣根を越えた出会いにより創造的な活動を生みだし、市民や入洛者が気軽に芸術にふれあうことを可能にする、また3地区に分かれた敷地に東山や鴨川と調和する連続的な屋根や水平に広がる大きな床により「つながり」をつくり、京都の玄関口・京都駅と東山の文化ゾーンを結ぶ拠点とするデザインにすると発表されました。本校は、鴨川のそば、東山を望むA地区に移転予定です。

 この間、基本設計業者JV(乾・RING・フジワラボ・o+h・吉村設計共同体)は、本校を何度も訪問・調査していただき、本校の教育活動の特色や現状と課題、そして美術専門高校としての未来に向けたビジョンを聴き取っていただき基本設計に反映していただきました。

 1880年(明治13年)に京都府画学校として創立して以来、戦前永く京都市立美術工芸学校という校名で美術専門教育に取り組んできた本校は、戦後、今から70年前の1949年、総合制のもと日吉ヶ丘高等学校の中に普通課程とともに美術課程として併設されることになりました。本校の沿革史によれば、50年前の1969年に「京都市立美術工芸高等学校設立準備世話人会」が発足し、美術単独高校実現の要望が高まっていたことがわかります。そして本校が、現校地である銅駝中学校の跡地に銅駝美術工芸高等学校として単独開校したのは1980年で、まもなく40年目を迎えることとなります。本校は、永い歴史の中で、入学する生徒はもちろん、保護者、地域、市民、各方面から熱い期待と支援を寄せていただきながら美術専門教育を実践してまいりました。伝統ある学校が、歴史を重ね発展していくためには、常に社会の情勢・変化を把握し、作品はもちろん、美術の学びが社会に果たす役割を追求しながら、教育実践の改革を怠らず、次代の担い手を育成していかなければなりません。

 今年は、全国に先駆けて、京都で番組小学校が建設された1869年(明治2年)から150年目。上京第三十一番組小学校、後の銅駝小学校もこの年に建設されました。明治維新という大きな社会変革の時期に、町の人々が熱い思いと資金を注いで未来を担う子どもたちのために学校建設するという画期的な事業が行われたのです。銅駝小学校、銅駝中学校と地域の人々が大切にされてきた校地で美術専門高校として再スタートをした本校。新しい年を迎え、あらためてこれまでの歴史を振り返り、現校地での教育の積み重ね、寄せられた思いをしっかり受けとめ、未来に向けて一層学校力の上を目指したいと考えております。

 今年度の学校案内ポスターに掲げた言葉をあらためて記し、新年のご挨拶とさせていただきます。

  未来を描き 時代を創る

2019年(平成31年)1月4日
                       校長  吉田 功

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12月26日(水) 校長室ウェブログの記事を更新しました。

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 12月26日(水)、校長室ウェブログの記事を更新しました。

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校長室ウェブログ 12月26日 「数へ日」

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              数へ日

 12月22日から24日まで、第39回美工作品展「1・2年生展」を開催しました。京都市美術館が改修中のため、今年度から1年・2年・3年の作品を一か所で展示することができなくなり、10月に「3年生展」、12月に「1・2年生展」と2つの時期に分けて開催することとなりました。二期に分けた作品展でしたが、3年生展は4日間で約4000名の来場者、今回の1・2年生展は3日間で約1400名の方にご来場いただき無事終えることができました。これほど多くの方々に、本校270名の生徒の作品と出会っていただき、ご観覧いただけたことに深く感謝しています。

 今年もあとわずかとなり、1週間足らずで新年を迎えます。
  
  数へ日のともあれわたくしの居場所  土肥あき子

 「数へ日」(数え日)という冬の季語があります。今年もあといく日と指折り数えるほど暮れがおしつまる頃に使う言葉です。そのような年末の慌ただしさの中、一年を振り返ってみると、穏やかな、あるいは順調な日々ばかりではなく、うまくいかなかったこと、悲しかったこと、心穏やかでなかったことが次々頭に浮かんでくる、そしてことによっては年が変わっても向き合わなければならない、そのような思いをもちながら、ともあれ自分の「居場所」はここに存在する、先の俳句は、その様な心情を詠んだ俳句だと鑑賞しました。

 人にとって「居場所」は大事です。居場所は単に自分の身を置くところというより、安心感をもって自分の気持ちに沿った思索や活動、休息や休養ができる場、生の実感をもちながらエネルギーを発出できる場だと思います。今年は自然災害が多かった年。多くの人々が辛い、悲しい思いをした年でした。先日テレビで、西日本豪雨で被害を受けた小学校の児童が、約3キロ離れた別の小学校のグラウンドに建てたプレハブ校舎で授業をしていて、終業式もその小学校の体育館で行われたと報道されていました。災害から5か月、環境の異なる学びの場で生活した子どもたちが多数います。

 私は今年、様々な場面で「学校は希望を創るところ」だと話してきました。「学校」は万能ではありません。生徒の居場所は学校だけではありませんし、学校の中だけで成長するわけでもありません。それでも銅駝で学びたいと入学してきた生徒が、学校で「希望を創る」ことができるよう環境を整え、導き、支援をしていくことが私たち教職員の責務であると考えています。生徒も私たちも、多様な居場所がいくつも必要です。それでこそ他の誰でもない、唯一の存在としての自分を成り立たせることができるのでしょう。

 今年は、教職員の働き方が大きく取り上げられた年でもありました。本校でも、超過勤務の問題は看過し得ない状況であると認識しています。教職員にとって、学校がやりがいをもって働く場所であり、心身の良好な状態で教育活動ができなければなりません。校内では、超過勤務の課題を少しずつでも解消するために、京都市の方針や他校の状況を踏まえながら様々な変更、転換を進めています。保護者や生徒の皆さんのご理解をいただきながら電話対応について変更をしました。年明けには、月に1回、教職員の「定時退校日」、生徒の皆さんにとっては「自主学習日」を設定するお知らせをさせていただきます。ご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 「数へ日」の頃となり、私自身この一年間、様々な人との出会いや関わり、わが身にあふれるくらいの多様な出来事をふりかえっています。銅駝美術工芸高校という「わたくしの居場所」のおかげで、生徒の、時には卒業生や教員の作品に心を動かされました。そしてその「居場所」で、生徒の生き生きとした、きらりと輝く姿を見る一方で、心穏やかでない、課題や悩みを背負い込んでいる表情も観ました。その課題や悩みをともに考え、解決していけるよう支援していきたい  行く年にその思いを確かにしながら、来る年を、希望をもって迎えたいと思います。

 2018年12月26日
                 校長  吉田 功

校長室ウェブログ 12月1日 「色 いろいろ」

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             色 いろいろ

 1年生の「造形表現」という専門科目は、2年生からの専攻実習につながる8分野の実習を経験する科目です。4月入学後8分野をひと通り経験した後、3分野を選択して学び、そこからさらに選択した2分野を現在、並行して履修しています。生徒はそれぞれ8→3→2と絞り込んできた実習を火曜日・木曜日に分けて取り組んでいるので、後期の各分野の制作は、1週間に一度ずつ年度末まで続けることになります。

 従って実習の様子を見に行くと一人の生徒が火曜日に制作しているものと木曜日に制作しているものが異なります。また1つの分野の実習を火曜日に見に行ったときと木曜日に見に行ったときは違った生徒が同じ課題に取り組んでいる場面に遭遇します。感性、観察力、創作力、実技力がふたりとして同じ生徒はいませんので、いつ見に行っても新鮮で、発見や驚きがあります。

 先日、デザイン分野の実習室に行くと、色面構成とタイポグラフィという課題が黒板に示されていました。生徒の実習机の上には、様々な色の葉っぱや花びらが置いてあり、生徒は絵の具を混ぜ合わせながらその葉っぱや花びらの色を再現しようとしていました。自然物を写真で撮影するのではなく、自分の目で観察して、それをどの様な色だと捉え、絵の具でどう再現するか。色のトーンを学ぶための難しい課題でした。日本画専攻の実習室へ行くと、サツマイモと南瓜という自然物、野菜の着彩課題に取り組んでいました。課題はその日1回の授業で完成するものではありません。1分野の実習は1週間に1度なので、前の週からの継続で制作を重ねていきます。当然自然物の野菜は、色や形が変化します。時間の経過とともに変化するモチーフを観ながら、自然物の色をどう感じ、岩絵の具でどう表現するか、1枚の紙に描ききるか。なかなか深い問いが含まれています。染織専攻の実習室では、花のろうけつ染めを制作するための下絵の段階でした。花を観察し紙に描きます。しかし、色は、目の前の花の色と同じようにそのまま着彩するのではなく、美しい作品として完成するよう自分のイメージにあわせて細かく塗り分けをしていきます。生徒の前には、その生徒なりの観察力、感性、表現力で描かれた写生ではない花が描かれていきます。陶芸専攻では、装飾を施した箱形の小物入れを制作しており、土の表面に模様を描いていました。陶芸でも、染織でも、釉薬、染料の色と、完成したときの色は異なります。出したい色を出すために制作の過程の作業が大きく作用します。

 8分野、8専攻の実習で生徒は様々な課題、制作を通じて、色を感じ、色と向き合い、色を創り、色を表現します。難しく、奥の深い学びです。美術の専門高校では色について考え、実践する場面がふんだんにあります。そして、常に形についても考え実践します。このようなアートの学びは、アートの中だけに収まらないような力を鍛え、磨いている。アートの専門家ではない私は、生徒の学びを見守りながら、そう思うのです。

2018年12月1日
                       校長  吉田 功

12月1日(土) 校長室ウェブログの記事を更新しました

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 12月1日(土)校長室ウェブログの記事を更新しました。

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