京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/04/27
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「美術を学ぶ」から「美術で学ぶ」学校へ。美工(美術工芸高校)は、生徒たちに未来必要な力を身に付けさせる教育活動を展開しています。

(アーカイブ2017年2月6日) 見えている 見えていない

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 人が得る情報の8割から9割が視覚に由来すると言われ、毎日の生活を「目」によりかかって過ごしている現実があります。目が見えない、目が見えにくいとはどういうことか、視覚に障害のある人はどのような生活を送っているのか。本校2年生のデザイン専攻とファッションアート専攻の生徒は、美術を学ぶ高校生として、その調査、体験、聴き取りをしながら、自分たちから提案するユニバーサルデザインについて課題研究をしました。その取り組みの成果を、2月4日(土)大丸京都店で開催された「第42回視覚障害者福祉啓発事業 あい・らぶ・ふぇあ」で、展示とプレゼンテーションにより発表させていただきました。取り組んだ8グループの内容は、星座・月面・惑星について体感する、視覚障害者が晴眼者にサポートを求める際のグッズ、ロービジョンの方も楽しめる映像朗読、視覚障害者と晴眼者で楽しむスイカ割りゲーム、素材を考えた楽しくオシャレする衣服、キリンの実物大モデルを使った立体福笑い、バレンタインデーに作る点字チョコ、ためらいを解消する体感型RPG、というものでした。事前に京都ライトハウスを訪問し、視覚障害者のことについて学習した後、自分たちで提案できるものを考えるため、各所に調査に行ったり聴き取りをしながらグループテーマを決め、制作に取り組みました。昨年度はデザイン専攻だけで取り組んだ課題でしたが、今年度はファッションアート専攻もともに研究しました。異なった専攻の生徒がともに課題を見つけその解決のために研究するという展開にしたことで、考察が深まりました。自ら問いを探し、調査を進め、グループで多角的に考察して、その成果を制作物として創り上げる。このような協働学習ができたことは大きな成果です。私は、校内の中間発表の機会に、研究成果を視覚障害者も晴眼者もともに理解してもらえるプレゼンテーションになるようにとアドバイスしました。当日会場での発表は、両専攻の生徒が専攻の枠を越えて創りだした提案は新鮮で興味深い内容で、多くの方に聴いていただきました。ただ、視覚障害者にとってわかりやすいプレゼンテーションであったかという点では、まだまだ課題がありました。提案内容とプレゼンテーションのあり方など、到達点と今後の課題について是非振り返りをしてほしいと思っています。

 今回の生徒の課題研究に触発されて、『伴走者たち 障害のあるランナーをささえる』(星野恭子著)という本を読みました。本の中で、視覚障害者にとって雨の日の外出が嫌な理由は何か?という問いについて、大きな問題は「雨音」だと書かれていました。耳からの情報取得の妨げになるからです。視覚障害者は目が見えない(見えにくい)ので、歩くのが不便、などと浅い想像力だけで考えていると、何ができて、何に困りがあるのか課題の本質が見えません。視覚障害者のランナーと伴走者は伴走ロープをもって一緒に走ります。そのとき、伴走者の位置、手の振り方はどうすればよいか、実際の様子を見て初めてわかることがあります。この本を読むと、伴走者がランナーのことをよく理解し、適切な伴走のペース、フォーム、声かけをすることがとても重要であることがわかります。そして「伴走者」は単に視覚障害者の「援助者」ではなく、障害のあるランナーの理想の走りを実現する「二人三脚のペア」であるということです。伴走者の喜びは、視覚障害者のランナーに「ランニング・ハイ」(陶酔感・幸福感)状態になってもらうこと。この状態なれば、視覚障害のあるランナーはロープの存在を忘れ、まるで一人で走っているような感じでランニングできるのだそうです。

 私たちは、自分のもっている経験と知識で判断し、あたかも答えがわかっている、見えていると思いがちです。しかしそもそも多くのことを「わかっていない」「見えていない」 ということを自覚し、常に学び続けること、他者と対話したり、体験したりしながら、自らの思考力、想像力、表現力、感性を磨いていく必要があります。そして、教員も生徒の「伴走者」であることを、あらためて忘れないようにしたいと思います。

2017年2月6日     
              校長 吉田 功

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行事予定
5/5 こどもの日
5/7 3年学科模試(河合塾)
5/8 生活指導強化週間(〜5/12)3年実技模試(授業中)
5/9 1年美術研修 検尿 3年実技模試(授業中) 3年志望理由書説明会(放課後)
5/10 検尿
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