最新更新日:2024/05/03 | |
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第2回入学式 式辞ピンクの桜が満開に咲き誇り、心地よい春の風が、キラキラした鴨川の水面を吹き抜けていく今日の佳き日に、京都市教育委員会をはじめ、PTA役員、平素より本校にご支援をいただいております美工交友会、京都パレスライオンズクラブのご来賓の皆様、そして、多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、令和6年度 京都市立美術工芸高等学校 第2回入学式を挙行できますことは、この上ない喜びであり、本校教職員を代表いたしまして、心よりお礼申し上げます。 ただ今、92名の新入生の入学を許可いたしました。まずは新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。 保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。これからの3年間、教職員一同、力を尽くしてお子様の成長を支援してまいります。ご理解、ご協力を賜わりますようお願い申し上げます。 本校は1880年、京都御苑内にわが国最初の公立の美術学校「京都府画学校」として創立されました。そして昨年、新天地であるこの地に移転、「京都市立美術工芸高等学校」として校名を改称し、2年目を迎えています。本校は美術工芸科単独の高校として143年を越える長い歴史と伝統をもつ学校であり、本校を卒業された諸先輩方は、美術界、産業界をはじめ、様々な方面で活躍されています。皆さんは、晴れて美工生として、この良き伝統を引き継ぐと共に、新しい歴史を刻んでいくことになります。 さて、入学式において、本校の新しい一員として皆さんを迎えるにあたり、心より歓迎の意を表します。そして、この特別な日に、私から皆さんに伝えたい2つの重要なメッセージを贈ります。 まず、ダイバーシティという言葉についてです。 今日から皆さんは多様性を深く理解し、尊重する旅をはじめることになります。ダイバーシティという言葉を知っていますか。この概念は、単に人々をその性別や人種などの生まれ持った属性で分類し、区別することではありません。それは、個々人の持つユニークな特性や経験を認め、尊重することであり、これらの個性が集団全体の豊かさへと貢献する、という考え方に基づいています。 これからの学校生活では、多様な背景を持つ人と出会うことでしょう。いえ、すでにもう出会っていますよね。隣に座っている同級生が、その一例です。異なる文化的ルーツ、育ってきた環境、ハンディキャップの有無、性自認の違いに至るまで、これまで経験したことのない多様性に触れることになるでしょう。これらの出会いは、私たちに新たな視野を開き、相互理解と思いやりの精神を育む機会を与えてくれます。これは、美術という分野で私たちが追求する創造性と直接結びついています。多様な人々との出会いにより、様々な視点から物事を見ることができれば、より豊かで多面的な作品を生み出すことができるのです。 そこで、皆さんには異なるバックグラウンドを持つ人と積極的に関わり合うことを期待します。自分と違うから、分からないからといって排除したり、躊躇したりせず、新しい出会いを求め、多様な経験を共有し、お互いから学び合ってください。 また、学校生活に留まらず、地域活動や学校外でのグループの活動に参加することで、視野を広げ、深い理解と共感を育んでください。これらの経験は、未来を切り拓く上での貴重な糧となるでしょう。 皆さんのこれからの旅が、互いの違いを尊重し、その中で自己を見つめ直し、成長する機会に満ちたものになることを心から願っています。美術を通じて人と人とを繋ぎ、深い理解を育む使命を持ちながら、豊かな学びの場を共に築き上げていきましょう。 次に、お話ししたいことは、批評に向き合い、立ち上がることについてです。 皆さんはこれまで中学校などで様々なジャンルの作品制作を通じて貴重な経験を積み、美術がとても好きになったのではないかと思います。それはとても素晴らしいことです。しかし、これから始まる本校での美術教科の学びは、常に楽しいわけではないかもしれません。心を込めて制作した作品が批判的なフィードバックを受けることや、予想外の角度から講評されることもあるでしょう。 また、他者との比較によって落胆や挫折感を抱くこともあると思います。そのような経験はとても辛いことだと思います。けれども重要なのはそのように落ち込んだとしても「七転び八起き」の精神で、常に立ち上がることです。 厳しい批評や多様な意見に向き合うことは、本校の教育プロセスにおいて不可欠なことです。それは、深く考え、自らの表現と向き合いながら新たな作品を生み出すことへの挑戦でもあります。長年作家としての経験を積んできた私自身も、そのような経験を何度もしてきました。 私たち美工が目指すのは、周囲の多様な価値観を尊重し、それによって自身の真の個性に気づき、誰にも真似できない新たな価値や表現を生み出す力を育てることです。異なる興味や関心を持つ仲間、教員と出会い、意見交換を通じて、より広い視野を得る場所です。ひとりでは決して体験できない多くの学びを、ここで経験してください。 皆さんが好奇心を持ち続け、新しい出会いを通じて視野を広げることを期待しています。そして、皆さん一人ひとりの成長と発展につながることを願っています。 結びに、皆さんもよく知っている画家のパブロ・ピカソの言葉を紹介します。「できると思えばできる、できないと思えばできない。これは、ゆるぎない絶対的な法則である」。この言葉には、挑戦の精神と自己信頼の重要性が凝縮されています。人生は、自分の信念と態度によって形作られるということを、ピカソをはじめ、多くの作家たちは私たちに教えてくれています。皆さんがこれからの高校生活の中で様々な挑戦や学びに向き合う時、確かに無数の困難に直面することでしょう。その時、この言葉を思い出してください。できると信じることが、第一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。逆に、できないと決めつけてしまえば、その時点で可能性は閉ざされてしまいます。 新しいことに挑戦することは、不安や恐怖を伴うかもしれません。しかし、その一歩が皆さんの能力を高め、未知の世界へと導いてくれることでしょう。失敗を恐れずに、挑戦を続けることで、皆さんは自分自身の限界を超え、違う景色に出会うこと間違いなしです。 ピカソの言葉を胸に、限界を設けず、夢に向かって果敢に挑んでください。自分自身の可能性を信じる皆さんが、未来を切り拓く主役です。ここでの高校生活が、皆さんにとって充実したものとなり、自らの無限の可能性を信じるきっかけとなるよう願っています。 この言葉をもって、式辞とさせていただきます。 令和6年4月8日 京都市立美術工芸高等学校 校長 名和野 新吾 |
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