京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/04/30
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「発見」「協力」「チャレンジ」

家庭訪問のできこと

 この季節になると、よく思い出すことがあります。

 私は担任の時、よく家庭訪問に行っていました。「教師は足でかせげ!」先輩からよく教えてもらっていたこともありますし、職員室で仕事をするのが苦手だったこともありますが、とにかくよく家に行っていました。年間200日以上行っていた年もありました。
 子どもらが何か問題を起こした時に、イヤな報告に行くだけではなく、学校でおさえきれなかった勉強を一緒にしたり、最近がんばっている事や、いいことがあったときに「ちょい」と寄って話をしたりするのです。初めはあんまり歓迎されていないと感じる家もよくありましたが、そのうち、「あんなあ、先生…」と親からいろんな話が聞けます。時には晩ごはんをいただきながら子どもの話で盛り上がり、そんな横に、学校で見せない姿をいっぱい見せる子どもがいました。
 「子ども達のために!」と全ての子への向かうための一人の教師のエネルギータンクは限られています。でも、一人一人の子ども達の背景には、子のことを一日中考えている(に違いない)親や家庭の「願い」がいっぱいあり、その熱い思いは、教師にとって大きなエネルギーになります。子どもの情報を伝える家庭訪問だけではなく、教師が日々かかわる子ども達のために、「力をもらい、尻を叩かれる」家庭訪問です。

 そんな家庭訪問の中で、こんなことがありました。
 2年生の子でしたが、なかなか勉強ができず、宿題も忘れては叱られることも多く、家に行っては一緒に宿題や復習・予習をしていました。そのお家は、家族ぐるみで料理屋さんをされていて、お店には美味しそうなメニューがいっぱいありました。
一緒に冬休み宿題のまとめをしたある日の家庭訪問の帰りのことです。
 お母さんが「カニを持って帰ってもらえますか…」と言われました。私はてっきりお店で扱っているズワイガニや毛ガニの姿を想像してしまいました。「いやあ、そんな気をつかってもらったら…」と恐縮しつつ、ニタニタとした顔で答えたのですが、お母さんはきょとんとしています。しばらくして、「あのお、休み前に学校から持って帰って世話をしていたサワガニ…。」とポツリとおっしゃいました。
そこでやっと理解できた私は、厚かましさと恥ずかしさのあまり、顔からまさに「火が吹いて」いました。
 それ以上、突っ込まないでいたお母さんの優しさを感じるとともに、勉強を見てあげていたという高慢な自分がいなかったかとか、今度どんな顔で家庭訪問しようかな…、とかいろんなことを考えながらの暗くて寒い学校への帰り道を覚えています。

 その後、数年がたち、同僚とそのお店に客として寄せていただきました。お家の人や、立派になった子ともいっしょに昔の話に花が咲く幸せな時間でした。
 途中で、お母さんが、「これ、サービス。どうぞ」と持ってこられたのは、立派でとてもおいしそうな「カニ」だったのです…。お母さん、覚えていたのでしょうか。今まで食べた最高の味のカニでした。
 寒くなるこの季節になると思い出します。

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