京都市立京都堀川音楽高等学校校歌「海を遠く」
作詞者、作曲者からのメッセージをご紹介いたします。
作詞者 山本純子先生(京都市立日吉ヶ丘高等学校 教諭)
詩を書いて、その詩について話す、ということはほとんどなく、少し恥ずかしいのですが、みなさんの校歌について、どんな願いを込めたか、についてお話ししたいと思います。
音楽でも美術でも文学でも、すべての創作や表現のもとにあるのは、イメージです。まずイメージを豊かにふくらませる力をつけてほしい。そのためには、からだの内側に時折、海をイメージするのも一つの方法かな、と思います。海の波のように、私たちの内側にも呼吸という波が、寄せては返しています。そして、その呼吸のリズムが、ひとりひとりの個性の源なのでしょう。個性は、創り上げるものというより、余分なものをそぎ落として純化していったあとに残る、キラッと光るものではないでしょうか。みなさんには、自分だけの呼吸のリズムと、そこに潜んでいるキラッと光るものをつかんでほしいな、というのが、一番の歌詞の願いです。
舞台芸術をはじめ、人が集まってともに何かを創り上げるということは、それぞれの呼吸を合わせることでもあります。いろいろな場面でさまざまな人と、自由自在に呼吸を合わせていく、やわらかさとしなやかさを養ってほしい。そんな願いを、みどりの枝に託したのが、二番の歌詞です。
京都堀川音楽高校は、その歴史の中で、グローバルに活躍されている音楽家を輩出しています。みなさんが、まずあこがれ、目標にされるのは、そんな先輩方でしょう。創設以来、工夫を重ねて育ててこられた環境、その同じ環境から自分はどのように飛び立っていけるのか、試される場面に何度も立たれると思います。そんな時に、自分が新しい波を起こすんだ、という気概で、でもこわばらず、大らかにすっきり立ってほしいな、と思います。舞台の上も客席も、会場の呼吸が一つになるしーんとした瞬間、そんな創造の糸口になる瞬間を何度も体感できる幸せを、人生の中でどんどんふくらませていってほしい、と三番の歌詞では願っています。
みなさんの、これからのご活躍を心からお祈りいたします。
作曲者 平田あゆみ先生(本校教諭)
新しい校歌は、前身の音楽高校と同様、本校らしい、本校ならではの曲がふさわしいと思いました。常々芸術作品に触れている学校ですので、校歌といえども高い芸術性を持ち、音楽科の生徒の力を存分に発揮できる曲を目指しました。誰でも歌える、校歌で行進するという制限もありません。舞台や式典時に映えることを念頭に置きました。
○ 専門家の声域を用いた混声3部合唱を基本とします(部分的には5部)。演奏者が満足するよう、歌い甲斐のあるレベルにしました。
○ 言葉と音とが連動し、詩の世界を増幅、拡散できる音楽にしました。
○ 伴奏部分には、想像力を喚起し演奏者の表現力を引き出す役割を持たせました。(管弦楽編曲は木下阿由見さんです)
実は歌の最初の4小節間に、古今東西の名曲が内包する「秘密の技法」を設(しつら)えています。耐久性というのでしょうか、クラシックを学ぶ学校にふさわしく、自然に人の記憶に残り、学校から離れた処でもいろんな方々に愛され、永らく歌い継がれていく力を託しています。
なお、校歌の演奏は、3月22日(木)第2回卒業演奏会(京都コンサートホール)で行う予定です。