京都市立学校・幼稚園
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センター試験

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左:1月8日,東大寺二月堂からの夕焼け   右:二月堂の常夜灯。
ふっと「西方浄土」という言葉が浮かびました。


 小寒を過ぎ,寒さが本格的になってきました。そんな中,今度の土日は大学入試センター試験です。今年の堀川は2会場で,同志社大学新町校舎と京都教育大学。
 多くの学校がなさっていますが,堀川も当日は会場前で生徒たちの受験確認と本番直前の応援を行います。今年は初めて2会場になることもあり,3年生の学年主任は準備に余念がありません。その指揮のもと,例年ですと担任を中心に20人余りの教員が,200人ほどの生徒たちが入場するのを待ちます。
 待っているからよいという訳でもありませんが,普段の調子で本番に臨めるようにという,よく言えば師匠ないしはコーチの親心,実はやや甘めの取り組みです。いつもは「不親切」を心がけていますので,その場で驚く生徒もいます。本番で驚かせては意味ないじゃないかとも思いますが,恒例なので,3年生諸君,どうぞ落ち着いて,普段の力を発揮してください。
 同志社新町校舎は新生7期生以来5年目です。同志社のみなさん,毎年お騒がせして申し訳ありません。今年は,教育大のみなさんにもお世話になります。どうぞよろしくお願いします。
 当日の朝に生徒が体調を崩したり,交通機関の遅れで影響が出たりといった不測の事態に対応するために,学校で待機する連絡係もいます。追試験を含め,具体的な手続きは個々の対応となりますが,センター試験の制度上,在校生には学校が相当に関与します。
 いっぽう卒業生はというと,まったくの個人対応です。すべて自分でします。昨秋も受験用の調査書の交付申請に来た懐かしい顔に多く会いました。偶然に試験会場が同じになることがあります。そんな時は,少し照れくさそうです。
 卒業生諸君,この一年の取り組みの成果をいかんなく発揮してください。

 何年か前のことですが,京都府立医科大学が会場だった時,大学1年生の卒業生が後輩たちの応援に来てくれたことがあります。みぞれまじりの雪の降る寒い朝でした。
 この生徒は小さい時から子どもが好きで,幼稚園の先生か小児科の先生になりたいと思っていました。高校に入ってからもその思いを持ちつつ,しかし,しだいに別の進路を考えるようになっていきました。高校3年生の夏,思うように勉強がはかどらないで苦しんでいたときに,自分が何をしたかったのかということをあらためて考え直してみて,そのときに,医療に携わりたいという思いを新たにしたそうです。高3の秋,彼女は担任にその旨を伝えました。意志の強さを受け取った担任は,「それじゃあ,がんばってみるか」。

 一概には言えないだろうと思われるかも知れませんが,どういう生徒が合格しているかというと,次の7項目(順不同)に数多く該当する生徒です。
○学ぶことが好きで,多くのことに疑問をもつ
○いろいろなことに興味をもって取り組む,取り組もうとする
○楽しいことも楽しくないことも,なぜそうなのかを言語化できる,言語化しようとする
○よかったことを素直に喜べる,よくないことを他人のせいにしない
○自分の強みと弱みを知っている,知ろうとしている
○他人と一緒に楽しむ,楽しもうとする
○将来への志をもっている,もとうとしている

 簡単に言うと,「自分でやってみる」,「むやみに頼らない」ということになるでしょうか。これは塾や予備校に頼っているだけではだめだし,残念ながら,実は学校に頼っているだけでもだめだということです。
 なるほど,上の7項目に多く該当するような生徒なら合格するだろうが,そうでない生徒はどうするのか,と思われる方もいらっしゃるでしょう。そうですね,だからこそ「教育」が重要になります。
 堀川は「自立する十八歳」を育てることをめざしていますが,それは,近い話で言えば大学合格にもつながるものです。生徒が学ぶことで,周囲からの視点に言い換えれば,学ぼうとするきっかけを用意することで,さらに言うと,内発を促す外発をしかけることで,「自立する十八歳」を育てることができる,と私たちは考えています。まだまだ十分ではありませんが,生徒たちが近い進路にも,遠い進路にも,あるいは眼前の課題にも,自ら立ち向かっていく力を身につけてくれることを願って取り組んでいます。

 昨年末,医師になりたいという希望をもっている生徒が少し悩んでいる,と担任から聞きました。会ってみたら,小児科医になりたいとのこと。ふと,この子には彼女の話がいいかもしれないと思いました。先ほど紹介した医大生は,すでに研修医になっています。連絡をしたら,「ええっ! 私で役に立つでしょうか。うーん,ともかく伺います。でも時間がなかなか約束できなくって」。
 はたしてその当日,急患が入ったということで,遅刻する旨の電話がありました。会議室で待っている3年生のところに行ったら,本を開いて勉強していました。
 「少し遅れるそうです。医者は大変やね。悪いけど待っていてください」
 「はい」
 しばらくして,医者の卵の到着。寒いのに上気しています。「遅れてすみません」。その後1時間半ほど話してくれました。時折,廊下まで笑い声が聞こえていました。
 終わった後の立ち話。
 「どうでしたか?」
 「ありがとうございました。とても参考になりました」
 「えー,ほんと? 私ばっかりしゃべって,ごめんね」
 「いいえ」
 「この人は高校時代も思ったことをどんどん言う人やった。校則のコートの色がおかしいと言ったことも」
 「あれはおかしかったですよ。だって黒と紺はいいけど,グレーがだめやとか」
 「だから,その通りだと思ったからすぐに変更したやんか」

 その後,進路部長も交えて近所で食事をしました。
 「まじめな子ですね。とってもいい感じ。ところで先生,私いろいろ言いましたけど,結局,小児科には進まないんですよ」
 「どうして?」
 「小児科って,内科中の内科なんです。診察して検査して総合的に診療計画を立てる。そういう仕事は,本当に頭のいい人がやるべきなんです。私はそんなに頭がよくないし。悩みました」
 開けっぴろげに話してくれる表情に,悩みを何とか乗り越えた人の静かな落ち着きを感じました。
 「小児科医が少ないと言いますが,私の同期でも結構多くの人がめざすんです。でもぶち当たる壁の一つが親です。学校でもモンスターとかと言うでしょ。病院でもそうなんですよ。その対応に参ってしまう人が出てしまう。でも私は平気なんです。まあそりゃあ自分の子どもが病気なら,親は必死になるわなって思えますし,そういう親と話すのも苦にならないですから」
 「子どもは好きやけど,でも内科には向いていないように思うし,一時は医者をやめようと思ったこともありました」
 「他にもいろいろあって,1年くらいは死んだみたいになっていました。そんな中で,研修でやった外科の手術が結構得意で。私,家庭科が好きだったんですよ。裁縫とか料理とか得意で。手先が器用なんです。自信もあります。まだまだ技術を上げる必要は当然ありますが,子どもを主として診る形成外科医になりたいと思うようになりました。それから生き返って,必死で勉強して,ここに行きたいと思う病院に採用されたので,来年からそっちへ行くことになりました。子どもが怪我したり,生れつき何か障害があったりして外科手術をしないといけないとなると,子どもももちろんですが,親御さんもすごく心配じゃないですか。そういうときに役に立てる医師になりたいって思います。やっと自分の役立つ場所が見つけられて」
 一気に話す彼女を見ていると,高校3年生の7月,雨の西京極球場(現在の「わかさスタジアム」)のスタンドで,傘もささず柵にしがみつき,ずぶぬれになって同級生の応援をしていた姿が浮かびました。あの子が,こんなに大きくなった。
 「そうか,自分の場所を見つけたか」
 「はい,やっと」
 そう言ってサラダをほおばる彼女に,
 「ところで,君さっきからずっと話してくれてるけど,後輩へのアドバイスも長かったし,そんなに話し続けて疲れない?」
 「疲れますよお。眼の下なんかクマができてるし」

 今年は元旦から多くの神社仏閣へお参りしました。数多く祈りました。すべての誠実ないのちに,この大地に,幸いがもたらされますよう。

                      36号(2012.01.10)……荒瀬克己

グー・チョキ・パー

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昨年12月27日の,夕日を受けた富士。
この日,中教審高等学校教育部会で堀川の取り組みを紹介しました。
いつもながら,意余って力足らず。
その帰り,トンネルを抜けるとほのかにオレンジ色のかかった富士。
あわてて撮りましたので少し傾いていますが,いつも,富士は実に大きい。
  冠雪の富士越えていく鳥もあるべし  宜礼



 新しい年が明けました。
 今年は年賀状を一枚も書けていません。
 この場を借りて,早々にお送りいただいた皆さまに非礼をお詫びします。
 昨年までのご厚誼に感謝するとともに,この後も変わらぬご鞭撻をお願いいたします。

 転勤してきて1年目の教員と新年のあいさつを交わしたら,「もう今日から生徒が学校に来ていますね」と驚きの感想。部活も初練習ですが,自習室や図書館や進路資料室にも生徒が三々五々いて,廊下ではヒサシブリーとかオメデトーとかと,ひとしきり賑やかでした。

 校長室にいると,開け放した扉の前を通る教員たちが入ってきて,オメデトウゴザイマス,今年モドウゾヨロシクオ願イシマス。私も立ち上がって,ヨロシクオ願イシマス。
 進路部長がやってきて,しばらく話しました。これからの堀川のことやキャリア教育のことなど。お昼時になったので一緒に食事に。帰ってきてもそのまま話が続いて,「では,そろそろ」と退室する彼を見送って廊下に出たら,3年生の女子生徒がふたり。オメデトウゴザイマス。オメデトウゴザイマス。
 進路部長に数学の質問に来て,待っていたようでした。では3分後に,と言われたふたりは横の階段を上がって,自習室に行くのかと思いきや,そのまま階段の途中に立ったまま。ふと,じゃんけんをして勝ったほうが勝ち方の数だけ段を上がるゲームを思い出しました。
 それを話すと,
 「やりましたよ,よく」
 「グーはグ・リ・コで3段,チョキはチ・ヨ・コ・レ・エ・トで6段,パーはパ・イ・ナ・ツ・プ・ルで6段やったよね」
 「チョキかパーで勝たないと損やね」
 「でもグーでこまめに稼ぐことも大事やし」
 一緒に盛り上がっていると,進路部長が,「それ,どれを出すのがよいかという問題が東大入試にありましたよ」。
 すぐに問題を見せてくれました。

 1992年前期の理系の6番。
 A,Bの二人がじゃんけんをして,グーで勝てば3歩,チョキで勝てば5歩,パーで勝てば6歩進む遊びをしている。1回のじゃんけんでAの進む歩数からBの進む歩数を引いた値の期待値をEとする。
(1)Bがグー,チョキ,パーを出す確率がすべて等しいとする。Aがどのような確率でグー,チョキ,パーを出すならば,Eの値は最大となるか。
(2)省略(こちらは難問)

 「ええー! チョキはチ・ヨ・コ・レ・エ・トで6つなんとちがうの?」
 「チョ・コ・レ・エ・ト?」
 「チ・ヨ・コ・レー・ト?」
 進路部長から教わった私が,「東京では数え方が違うということやね。では解説しよう。つまりこの場合,答えは全部チョキ。なぜかと言うと,チョキでグーに勝ったら,(と言ってしまって)あれ? どういうこと? わからなくなった」。
 すかさず進路部長,「あとは自分で考えろ,ということですね」。
 生徒たちが上を向いて思案顔。そして笑って,
 「あ,そうか!」
 明るい声で,
 「先生,今度じゃんけんゲームしませんか」
 「いいね,5階まで使ってやろう。でも手が見えるかなあ」
 「そうか,相当差がついたら無理ですね」
 見上げる仕草に,子どもの無邪気さ。

 ふたりの内のひとりは,夏に別の生徒と一緒に明かりを消した進路資料室に座っていたことがありました。何をしているのかと尋ねると,
 「節電中です」
 「暗いと目が悪くなりますよ」
 「心の節電です」
 「え?」
 「ちょっと,いろいろと,ありまして」
 「電気は節約しましょうということだけど,心は節電しないほうがいいよ」
 「はい」
 思いが交錯する時をいくつも重ねて,生徒たちは大きくなっていきます。

 今日は薄暗く,寒さは厳しく,風は強く,さっきは雪が斜めに降っていました。
 明日は自然科学部を中心とした,希望者によるSSHフィールドワーク。舞鶴にある京都大学フィールド科学教育センター(舞鶴水産実験所)での研修と舞鶴引揚記念館の見学があります。天候が心配です。
 「8時に出発なので,7時半ごろに最終判断をします。舞鶴に電話をしたら,いまはみぞれ。本格的な冬将軍ではないようです」。
 みんな,気をつけて。

 2012年が始まりました。しかし,2011年が終わったわけではありません。変わることなく,この国に住む人間の叡智と誠実が厳しく問われています。
 明日のことを考え,今日を生きていくことの,切ないほどの大切さ。
 生徒たちと,教職員と,そのことを胸に刻んで,日々を重ねていきたいと思います。

                      35号(2012.01.04)……荒瀬克己
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行事予定
1/12 月曜振替授業
1/13 3年激励会(LHR時)
一斉清掃
1/14 1年土曜テスト
PST(9:30〜16:00)
大学入試センター試験
1/15 大学入試センター試験
2年:センターチャレンジ(校外)
1/16 3年:センター試験自己採点
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