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最新更新日:2025/07/22 |
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わかいいのち![]() 「ほんとうにいいんですか」 「どうしてだめなの」 「わたしなんかの書いたものですから」 「きっと読む後輩たちがいますよ」 「あんまり目立つところは,ちょっと」 「でも誰にも気づかれないところでは掛ける意味がないしね」 「そういうもんですか」 「そういうもんです」 うろうろして,アトリウムの傍らの柱に位置を決めました。後日,業者が少しの工事をして掛けてくれました。 谷川俊太郎の「やわらかいいのち」。「思春期心身症と呼ばれる少年少女たちに」という副題がついています。この卒業生は書が好きで,在学中にも半紙に書いたものを持ってきてくれたことがあります。乾いて少し凹凸のできた半紙には,「青い闇」と書いてありました。何日もかけて不安と動揺を綴った文章を読ませてくれたこともありました。 休みがちであやぶまれましたが,進級もして,みんなと一緒に卒業しました。 初夏,いつになるか分からないけど君のことと書のことを書いてもいいですか,と電話をかけました。 「そんな,ほんとうですか」 「ほんとうです」 「なんか恥ずかしいですが」 「嫌ならやめます」 「いえ,うれしいです」 「ありがとう。それで,どうしているの」 「わたし,大学受けます。やっぱり農業をやりたいと思って」 「じゃあ必死で受験勉強ってわけだ」 「そうなんですよ」 額に入れられた書の紙は,ところどころ変色しています。捨てられようとしていたものを先生に頼んで頂戴した,と言っていました。どうしてもその紙に書きたかったそうです。届けることのできる言葉と,届けることのできない言葉と。屈託のない笑顔の底で,若い人たちは時にやるせなくもがきます。 額の掛った柱の先のアトリウムでは,いま3年生たちが文化祭の練習に余念がありません。連日の猛暑の中,Tシャツと短パンに着替えて,パフォーマンスを組み立てていっています。 「水分摂ってる?」 「はい」 濡れた髪ときらきら光る汗は,まるで泳いだ後のよう。 先日,1年間のうち1日しか学校を閉めない公立高校の先生と話しました。土日も当番制で回して自習室を開けているそうです。「大変ですねえ」と言ったら,その人は「本当に」とおっしゃいました。 堀川は,明日から16日まで学校を閉鎖します。その間合宿に出ていく部活もありますが,生徒も教職員も,ONとOFFの切り替え期です。 …… 荒瀬克己 コミュニティカレッジ『文学歳時記 通年講座』 予定変更について
8月20日(土)に予定されていた『文学歳時記 通年講座』は、都合により中止させていただきます。
次回は、9月10日(土)14時30分〜「総角・早蕨」で開講いたします。 宜しくお願いいたします。 探究道場![]() 7月30日(土)に本能館で「探究道場」を開催しました。 本能館は堀川高校の東側,油小路通蛸薬師にあります。かつて本能小学校があった跡地に建てられた堀川高校の第二校舎で,その名の示すとおり,織田信長が討たれた本能寺のあった場所です。本能寺の変の後,寺は豊臣秀吉によって現在地,京都市役所の南側に移されました。 「探究道場」は,文部科学省から研究指定を受けているスーパーサイエンスハイスクール事業の一環として行っている,中学生に理科や数学について深く学ぶ機会を提供するものです。今回は数学でした。同じ内容で別の中学生を対象にもう一度実施しますので,どんなことをやったかは,いまは申し上げられません。申し訳ありません。 では何をお伝えしたいのかというと,今回の道場で見た,とても興味深いことがらについてです。実はすでに知られていることではありますが,実際にその場にいて体験すると,何度同じような経験をしていても,なるほど,やはりそうか,と改めて合点がいきます。 要は,取り組みにはコミュニケーションが大切だということです。チームワークが欠かせない,と言ってもいいかも知れません。 道場は,PBL(Problem Based LearningあるいはProject Based Learning)の手法で行っています。問題を提示した後は,基本的に説明は行いません。自分の持っている知識や技術や経験に基づき,それらを活用して取り組みます。堀川の生徒が進行役や補佐役を務めますが,手を貸すことはしません。したがって,自分でよく考えるということとともに,他のメンバーとよく話し合うということが大切になります。 同じ中学校の人を別にしますので,各グループは初対面の中学生たちで構成されます。学年も同じではありません。まずは自己紹介から始まり,練習問題をやって,本番に臨みます。その中で,どれだけ自分を出せるか。どれだけ相手を引き出せるか。受けとめられるか。発見,考案,創出するために協同できるか。それらが問われます。そして,2時間余りの試行錯誤の成果をポスター形式で発表します。 このとき,コミュニケーションが活発であったかどうか,そのことによってチームワークが図られたかどうかが如実に現れます。一人の考えた方法を,他のメンバーが質問したり指摘したりして,多角的に揉んでみたかどうか。それが行われたグループの発表は,一人では考え付かなかった確認や点検や考察が加わった結果,より論理的なものになっています。 もとより,一人の才能によって新たな世界が開くことはあります。その場合,周りがそれに気づくということが重要になります。しかしながら,それを周りが気づけるように説くということもまた重要です。おそらく,そういう練習を重ねることが,これから社会に出ていく若い人たちには必要であるだろうと思います。 「探究五箇条」なるものがあります。教員が考えました。あちらこちらから集めた感はありますが,なかなかのものであると思います。何度も読むと,これは誰に対しての言葉なのかと思ってしまいます。 探究五箇条 一、知らないということを知れ 一、常識を学べ 一、常識を疑え 一、手と頭を動かせ 一、朋と愉しめ 「はじめに,堀川高校の校長でもある,探究道場の荒瀬克己道場長からあいさつがあります」。 道場の開始にあたって,司会の生徒が紹介してくれました。校長を辞めて道場長一本でやっていくっていうのもいいなと思いました。今度名刺を作ろうかと思っています。 …… 荒瀬克己 |
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