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最新更新日:2025/06/12 |
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『東山を西に見て』![]() 職員朝礼が終って、教頭先生と簡単な打ち合わせをしてから校内を見て回るようにしています。私と同様、初めは緊張気味だった先生方や子どもたちも徐々に慣れてきて普通に振舞ってくれるようになりました。休み時間に入ると声をかけてくれる子どもたちが増えてきて、とっても幸せな気持ちになれます。 遅刻してくる子、授業を抜け出して保健室等に行こうとする子もいます。学年の先生がすぐさま対応するのですが、時には私も話をします。「厳しく叱って、力づくで直ぐに教室に戻す」そんなやり方もあるのでしょうが、本校ではそうはしていません。遅刻してきた理由、授業がしんどい状況等、子どもたちの声をしっかりと聴き、話をして納得させた上で教室に返すようにしています。そのまま終業のチャイムが鳴ることもあるのですが、その時間はきっと意味のあるものになると信じています。 2年生の時、よく問題行動を起こしたというA。テニス部に所属しているというので練習を見に行きました。天気も良いので思わず“ボール出し”をし、ついでに指導もしました。その間の彼の眼差しが忘れられません。指導に対して「ハイ」と言います。私がコートを去る時には大きな声で「ありがとうございました!」と言いました。廊下での彼との会話で、そのことが嬉しい驚きだったと伝えました。それに対しての答えは「教えてもろてんにゃし、当たり前やん」でした。 肢体育成学級で学ぶ2年生のB。彼の自立活動の時間は、本校の長い廊下を何往復も、腕の力をいっぱいに使って這って歩く練習です。疲れてくると、力を入れるときの声が校長室や2Fのフロアにまで聞こえてきます。担任の先生だけでなく、そばを通る全ての教職員が彼に声援を贈ります。はじめて見た時は、その一生懸命な姿に心を動かされ目頭が熱くなりました。 BのことをAと話しました。意図を見透かしたようにAが言います。「俺が勉強するようになる前に、Bは歩けるようになるんちゃうか」彼もBの頑張りを認めていたのです。「授業が分からんし、面白んない。どうせ、高校へは行かへんし勉強してもしゃーない。」と繰り返すAに対して、担任の先生はじめ学年の先生方は手を変え品を変えアプローチしています。コートでの眼差しと指導に対しての態度を思うとき、必ず進路を見つけて学習に真剣に取り組む日が来ると信じています。 個人的な関わり方をせざるを得ない子どもたちは他にもいます。勿論、それでよしとしている訳ではありません。集団の中で育てることの必要性と重要性とは全員が十分理解しているつもりです。良くも悪くも子どもが子どもを変えます。マイナスの力が働くとき、教師の力の小ささを思い知らされることもありますが、それがプラスに働くときは、教職の魅力を存分に感じる瞬間です。 3年生では、既に修学旅行の取り組みが始まっています。この中で子どもを集団にとり込み、育てていけることを願っています。 『東山を西に見て』![]() 花山中学校校歌の歌い出しはこうなっています。「北にそびえる鏡山、西に連なる東山」初めてこの歌詞を見たとき、不思議な感じがしました。私はこれまで東山を西に意識したことがありません。東山は常に東にある山々だと思って生きてきたからです。しかし、このことは、古い京都に住んでいる人間のエゴなのかもしれない。校歌の作詞者は、旧市街地に住む人にそのことを気づかせようという思いもあってこのように作られたのではないでしょうか。今はそんな気がしないでもありません。 さて、京都市立花山中学校に赴任し、校長室の机に向かって今日で十日が経ちました。「不安と期待に胸をふくらませて校門を入った」とは、入学式でよく聞く件(くだり)ですが、将に今年の私がそうでした。圧倒的に不安の方が大きかったです。教職員や子どもたちに出会う過程で、それらが徐々に小さくなり、替わって期待と希望、喜びが大きくなっていきます。この歳で新入生の気持ちを共有できたのですが、貴重な体験になりました。 教育委員会から学校へ異動して、一日がとても速く過ぎるように思います。次から次へと色々な事へ対応しなければなりません。同時に忘れかけていた感覚が呼び覚まされる感じです。子どもの歓声、先生の指導の声、楽器の音に部活動に励む掛け声、学校は生きているのです。情報として紙の上で知った名前の子どもたちに出会います。課題のある子どもたちは少なくありませんが、どの子もとても可愛らしいです。特に、3年生は私の下の息子と同い年でもあるので息子を見る目で見てしまいます。この子たちが1年後、「中学校生活は本当に楽しかった。」そう言って卒業していってくれることを願わずにおられません。 始業式と入学式で子どもたちに伝えた「3つのこと」をもう一度綴っておきます。これらは、私がこれまで出会ってきた中学生に常に言ってきたことです。 1つは、「今、この瞬間を大切に!」ということ。当たり前のことですが、“この瞬間”は一生に一度しかありません。だからこそ、授業や部活動、学年や学級活動の場面に全力で取り組み、思いっきり楽しんでほしいと思います。2つめは、「ねばれ」ということ。学校生活だけでなく、人生を生きる上で「しんどいなぁ」と思うことはたくさんあります。「もう、アカンわ」と感じたときに、簡単に諦めずひと踏ん張りできる“ねばり”の気持ちを身につけてほしいです。3つめは、「感謝の気持ちを大切に」ということ。人は誰しも一人で生きてはいけません。親や地域の方や先生や友達などの支えがあって暮らしているものです。そのことに気づき、素直に感謝の気持ちをもてる人になってほしいと思います。 今週は「生活確立週間」ということで、全教職員が校門に立ち「おはよう」の声と共に生徒を迎えています。7時半ごろから部活動の朝練習に励んでいる生徒、先生の間を照れくさそうに通って行く生徒、遅刻しそうになって走り抜けていく生徒、どの姿にも中学生らしさを感じます。当面の目標は、本校生徒407名の顔と名前とを覚えることです。充実した毎日がいよいよスタートしました。 |
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