最新更新日:2024/06/12 | |
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考えるあたまと感じるこころで
本日、1年生が宿泊研修に出発しました。
今年度は、海外3コース(タイ、マレーシア、台湾)と国内2コース(福島・東北、福島・関東)の合計5コースを設定しました。生徒たちは自分の関心や研究テーマなどをもとにコースを選択し、これまで長期間にわたって各地特有の歴史や自然、文化などに関する事前研修を重ね、今日を迎えました。 2年前に初めて設定した福島・東北コース。当時、私も同行しました。 ちょうど13年前の今日、平成23年3月11日に発生した東日本大震災。その大規模な地震災害の状況、そして、10年以上が経った後の人や街の状況をこの目で見ておきたかった。何が起きたのか。今はどうなっているのか。人は何を願っているのか。 現地でのバスの中でのこと。夕日を浴びながら、その日の宿泊地に向かっている。右手遠くには海が見える。今通っている道路は、津波に飲み込まれた地域であるとのこと。海側の家屋は新しく、山側左手は古いまま。ここまで津波が押し寄せたことを街並みが物語っている。 バスガイドの方が、脳裏に焼き付いた記憶を静かにゆっくりと語り始めてくれた。涙交じりの声が時にかすれている。そのことばの一言一言が私たちに重く響く。 雪が降り続く寒い午後だったとのこと。突然の揺れが人を混乱させ、街には津波警報が響く。人たちは高台に向かって細い一本道の階段を駆け上がる。四方八方に行き来しようとする車は狭い交差点で立ち往生し、クラクションが鳴りやまない。街中にある防災スピーカーからの避難指示は1回きりで、情報が更新されることはなかったという。 真っ黒な大波が地響きを立て、鳥たちを一斉に空へと追いやる。驚異的な速さと威力で建物を飲み込み、車をさらい、街を荒らす。高台に避難した人たちが必死に叫ぶ。「早く逃げて。車を捨てて上に登って。」無常にも、窓が閉め切られた車の中までその声は届かない。 バスガイドの方は、かけがえのない大切なものを容赦なく奪い去られた深い悲しみとともに、希望を持って心をつなげ合わせながらこれまで過ごしてきた心境を飾ることなく伝えてくれた。あたりまえのものの尊さと喜び、生きることの幸せと勇気、人への感謝と恩返し、そんなことを教わった気がしている。 その時に見た海は、太陽の光でキラキラと輝いていた。緑が風に揺れ、花が咲いていた。人々の笑顔にしなやかさとしたたかさを感じた。でもいまだ、街のところどころは静けさに包まれ、寂しさが漂っていた。今もなお、現地の人たちは故郷を想い、昔の光景を大切に心にしまい込んでいることだろう。 令和6年1月1日、能登半島で大きな地震が発生した。大切なものを失った心の痛みやどこにもぶつけられない強い憤りを抱きながら、それでも今も前を向いて歩むために周りを見渡し、声をかけあい、知恵を絞り出し、心をつないでいる人たちがいる。凍える寒さの中で。1日も早い復旧と復興を心から願う。 今から10年後を想う。東北の人たち、能登半島の人たちはどうしているだろうか。街はどうなっているだろうか。私たちにはいま何ができるだろうか。 世界では何かが起きている。目の前では何かが動いている。人がいて、時が流れ、ものが生まれている。その中で、私たちはいま何をすべきだろうか。 見るべきものを見て、立ち止まって静かに考え、胸に刻むべきことを刻む。無関心だと絶好の機会には巡り合えない。瞬間を逃せばエネルギーを蓄えられない。 昔、今、そして未来。 人の居場所、役割、そしてつながり。 考えるあたまと感じるこころをもって、自分や他者、社会や世界にとっての「豊かさ」とは何かを考える大きな機会となることを期待しています。 3月8日に実施した結団式では、宿泊研修委員の生徒たちが出発を前にして、力強く全体に伝えていた。 現地研修は通過点に過ぎない。 ハングリーでありたい。 「シンカ」を追い求めていこう。 約5日間の現地研修。 大いなる刺激を受けて帰ってきた生徒たちが、少し誇らしげな姿で自分のダイナミックな変容を語ってくれることを楽しみに待っています。 橋詰 忍 巣立ちの日
冷たい風がまだ残る中、本日、第76回卒業式を挙行しました。
23期生の卒業生たちは、時折、緊張した面持ちを浮かべながらもキリっとした大人の姿を見せ、これまで培ってきた仲間との絆を確かめ合うような表情を浮かべていました。 卒業生の入退場の際には、吹奏楽部の生徒たちが会場内で曲を演奏してくれました。数年ぶりの生演奏。卒業式に素敵な花を添えてくれました。ありがとうございました。 保護者のみなさまにおかれましては、これまでの間、十分でなかったところやご心配をおかけしたこともございましたが、あたたかくお見守りいただき、支えてくださったことに、厚く御礼申し上げます。 以下に、卒業式式辞の一部を紹介いたします。 23期生のみなさんは「景(ひざし)」と呼ばれてきた学年でした。1人1人が自ら素敵な輝きを持ち、他を照らす存在であってほしい。それぞれの「景」があふれ、照らされたその先には新たな出会いがあり、つどいが重なりあったときのおもむきを味わい、自由に挑んでほしい。そんな思いを込めました。 1月の激励会では「GIFT」という曲の歌詞を紹介しました。 降り注ぐひざしがあって だからこそ日かげもあって そのすべてが意味を持って 互いに讃えているのなら もうどんな場所にいても 光を感じれるよ また、その曲にはこんな一節もあります。 「白か黒で答えろ」という 難題を突きつけられ ぶちあたった壁の前で 僕らはまた迷っている 迷ってるけど 白と黒のその間に 無限の色が広がってる これからの人生、いっぱいの難題に出会うことでしょう。そのたびに悩み考え、勤勉に取り組み、楽しむことを忘れず前を見て、心を躍らせながら自分に似合う素敵な色を追い求めていこうとし続けるみなさんを、母校である堀川は、ずっと見守っていきたいと思っています。 自分の中にある、いちばんきれいな色ってなんだろう? となりの人の中にある、いちばんひかってるものってなんだろう? そんな最高のGIFTを探し続けてほしい。 そんな最高のGIFTを誰かに届けてほしい。 そして、そんな最高のGIFTをずっと大切にしていてほしい。 そんなことを願っています。 卒業生が、最後のことばを贈ってくれた。 卒業生代表の生徒が壇上に上がり、私の目の前でゆっくりと奉書紙を取り出し、落ち着きのある声で読み始めた。ことばの一言一言に力を感じた。手は少し震えていた。それでも節目節目で手元の文字から目を離して顔を上げ、私を見つめた。まるで、目線の上にことばを乗せて届けようとしてくれているように。 自分の高校生活を貫いてきた「おもしろがる力」に焦点をあてながら語ってくれた。「おもしろがる」ということを、すべきことが与えられるのを受動的に待つのではなく、いかなるものに対しても自ら魅力を見出し、楽しむという能動的行為とし、文化祭や体育祭、探究基礎、日常の学びや語らいなどのさまざまな場面で、いかに「おもしろがる力」が培われ働いたかを、豊かな語彙でもって伝えてくれた。 おもしろがる力とは、 些細なことに気づき、価値を吹き込む力 自分が主体となり、何かを変える力 情熱的になって、何かを突き詰める力 またその生徒は、昨今の世界の状況において光と影が同時に存在することに目を向け、自分たちは影の内を見る「視力」を養わなければならないと決意を新たにしていた。自らの成功や幸福をもってよしとするのではなく、内を見るためにはさらに教養を身につけ、思考力を鍛えることが求められる。そのときに大事なのは、やはり「おもしろがる力」なのだと。 もちろん彼は、自分を見守り慰め、支えてくれた家族をはじめさまざまな人たちに、感謝のことばを届ることを忘れなかった。 本日、23期生のみなさんはここを巣立ち、新しい世界に飛び立っていきます。記憶の中で、堀川で過ごした時間が、懐かしさとともに少しの誇りを感じられるものであり続けることを願っています。 みなさん、お元気で。 橋詰 忍 |
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