京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/05/31
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6月3日(月)15:40-19:00 MBS放送 よんちゃんTV「ミルクボーイのおかんの代わりに学校行ってみました」(17:30頃)で本校が紹介されます!

また今日が始まってく

 徐々に春のあたたかさを感じる中,3月1日に第74回卒業式を挙行しました。
 21期生の卒業生たちは「自立する18歳」らしく,落ち着いた表情と凛々しい姿を見せてくれました。そして,3年間を過ごしたこの学び舎,BIG BOXを巣立っていきました。

 当日は,新型コロナウイルス感染症の感染予防や拡大防止のため,密集の回避や時間の短縮等にできる限り留意しながら実施しました。みなさまに趣旨をご賢察いただき,また,ご協力をいただきまして,深く感謝申し上げます。

 卒業式前日の午後,ある21期生生徒と話す機会をいただいた。私とその生徒の2人。1年生の時から知っているその生徒は,3年間の月日による変容を感じさせ,成長した18歳の風格を醸し出していた。
 約2時間。その時間に特別な目的があるわけではなかった。各学年で所属したクラスへの思い,学校行事に対して注いだ熱量,あの場面で自分が発したあの一言あの振舞いに対する振り返りと反省,夢中になった部活動のエピソード,自分の18年間の生い立ちと変化,家族への思いと感謝,など。他愛もない話しで盛り上がったり,真剣な思いに耳を傾けあったり。

 最後に聞いてみた。

 堀川高校にどんな学校になってほしいと思う?

 その生徒はうつむきながら少し考えたあと,照れくさそうに伝えてくれた。

 自分は学校行事とか,学校説明会スタッフとか,部活動とか,やりたいことがたくさんあって,その都度,夢中になっていた。勉強よりも優先して取り組んだことも多かった。すべてがうまくいったわけではなかったけど,すごく楽しかった。そんな風に,生徒たちが何かを楽しんでやってみる時間とか,挑んでみたい機会にあふれていてほしい。そして,1人1人の異なるチャレンジを互いに認め合って,それに刺激を受けて自分もやってみようという思いが湧き出て,お互いを鼓舞しあうような人でいっぱいの堀川高校であってほしい。
 
 そう言って,彼は笑顔で去っていった。


 当日。生徒の入場から退場までのすべてを含めると約2時間の卒業式。その後半。卒業生のことば。読み上げる生徒は司会による指名を受け,透き通った返事を会場に響かせる。しっかりとした足取りで登壇し,中央に立つ。静止し,一瞬,私を真正面に見つめる。表情は穏やか。後ろには卒業生全体が起立をしたまま,壇上の生徒に思いを重ねる。司会による「礼。」壇上の1人と後ろの卒業生たちによる,一糸乱れぬとまでは言えないが一体感のある動き。壇上の生徒は一歩前に。少し手を震わせながらも落ち着いて多当紙を開く。奉書紙をめくり,1行目に視線を集中させる。一息ついた後,張り過ぎずこわばらずの第一声を発する。

 見えるだろうか,東の空にやっと太陽が昇り始めた。

 21期生である自分たちは,3年前の入学式で「暁」と名付けられた。なぜ自分たちは,まだ暗い状態を意味することばなのか。そういったピンとこない状態から始まった高校生活。
 3年間での授業や学校行事,探究基礎,スタッフ活動,部活動などは,それぞれがかけがえのないものであり,充実したものだったが,なかなか,自ら光となり,暗闇を凌ぐことができない。やりたいかなえたい思いを増長させるだけでは自分も周りも変わらない。自ら突き詰めて考え,ことばにして共有すること。それがあたりまえと感じさせてくれたのは2年生の真ん中頃。学校での時間が「自分はこんなこともできるのか」という気づきを与えてくれた。自分たちに月光がさし始めたが,でもまだ太陽は昇らない。
 「ひとつになる」「ひとりになる」ことの難しさもまた,自分たちに立ちはだかった。3年生になると,自分の中での無理の決めつけより,やってみようの挑戦が勝る場面が多かった。壁にぶち当たる度に,周りの人が本気で関わってくれた。「ひとりだけど,ひとりではない」を実感した。今思うと,自分たちはそのことを確認しようとして,高校生活を過ごしていたのではないか。
 日が昇るのを待ちわびる時間こそが尊い。そのことを今の私たちは知っている。昇り始めた唯一の太陽を,やっとみんなで見ている。

 先生たち,家族の人たち,後輩たち,21期生の仲間たち,それぞれへの心からの感謝を,読みことばではない素の「ありがとう」に乗せて伝えてくれた。そして,次のことばで締めくくった。

 また今日が始まってく。

 その生徒。卒業式前の最後の日曜日には,1人の先生とともに教室に1日中こもって,先生と対話しながら,自分や自分たちの3年間を掘り起こし,過去の時々を思い,表現を整えていたという。
 卒業式前日の夕刻には,他の生徒が誰もいない会場で練習を行っていた。卒業式当日にも,他の生徒が登校する前の朝早くに,一連の動作と声の調子を確認していた。その生徒の21期生を背負う意気込みと覚悟を感じさせてくれた。

 見えるものはすべて見えないところで準備されている

 第65回卒業式,12期生が卒業する際に卒業記念品として寄贈していただいた石碑には,このことばが刻まれている。これもまた,堀川高校で大切にしたいことばの1つである。

 人は環境を生かし,取り組むことによって,成長することができる。自分自身の力は,自分では気づかないうちに大きく尊いものとなり,その影響力により,他の人を変えることができる。生徒たちからあらためて教えてもらった。卒業生たちには,これから歩む人生において,謙虚に学び,人と交わり,多様な経験を重ねていってほしい。

 21期生のみなさん,卒業おめでとう。

橋詰 忍

校歌

冬休みを迎えようとする昨年の12月21日,京都市立京都堀川音楽高等学校の生徒たちや先生方の多大なるご協力をいただいて,本校校歌の録音を行いました。

本校の歴史は,明治41年に創立された京都市立高等女学校から始まりました。その後,大正11年に第一高等女学校,昭和3年に堀川高等女学校に改称され,昭和23年に,学制改革により現在の校名である堀川高等学校となりました。当初は4課程(普通,商業,家庭,音楽)により発足しましたが,家庭課程,商業課程の廃止を経て,昭和38年より2課程(普通,音楽)となりました。平成9年には音楽課程が独立本校化され,現在は堀川高等学校と京都堀川音楽高等学校に分かれています。たまにですが,本校に「今日の演奏会は何時からですか」といった問い合わせがあったり,本校が演奏会の会場だと間違えられて来校されたりもします。

昭和55年,それ以前に存在していた校歌を新たにし,現在の校歌が校旗とともに生まれました。

 堀川の空の雲は   比叡染めゆく窓に飛ぶ
 ひらく窓よ 高く  謳え 理想の空
 しろい雲のある窓に 

 堀川の笛の花は   みどり肩くむ庭に咲く
 ひびく庭よ 尚く  光れ 文化の笛
 わかい花の咲く庭に

録音当日の午前10時に音楽高校を訪問し,音楽ホールへ。校舎が移転新設されて12年とのこと。さぞ丁寧に扱われておられるのだろう。とても落ち着いていてすばらしい空間である。高校生のみならず,大学生やプロの演奏者などによるさまざまな会が催される荘厳なホール。静けさの中に豊かな音色が響くのであろうと,素人の私にも感じられる。舞台の中央には演奏者を待つ1台の立派なグランドピアノが佇んでいる。ホールの中でその存在感が一層際立っている。

私は300席ほどある客席の中央あたりに座って,期待感を膨らませながら,照明に照らされる舞台や高い天井をぼんやりと眺めていた。しばらくすると,男女14名の生徒たちが次々と舞台に現れてくる。ピアノを中心にして緩やかに弧を描くように配置に着き,各々が黙々と楽譜などの準備にかかる。指揮とピアノは先生が担当する。指揮者の指示に応じて各パートの練習が始まる。録音機器の調整が繰り返される。

いよいよ本番。機器担当の方による合図によって指揮者が動き出す。静寂の中,生徒たちは凛と立ちながら,視線をその手に集中させている。しなやかな体の動きによって奏でられるピアノの伴奏とともに,生徒たちの歌声がホールに響く。私の想像をはるかに超える調和と迫力,そして上品さ。

何度も言うが,素人の私にとってはすでに完成されたものに思える。しかし,専門家の先生や声楽を学ぶ生徒たちには不十分なようで,その改善に妥協はない。1回1回の録音が終わるたびに,先生が歌詞をなぞりながら,より豊かな表現に向けた修正点を指摘する。五月雨に続く一言一言を聞き漏らさないという生徒たちの集中力がうかがえる。また,ある生徒が自分の納得のいかなさを伝える。「先生,もう一度お願いします。“ぶんかの”の“ぶ”が…。」その指摘に応じて,全体がキリっとした表情に一変し,次のテイクに向かう。録音が始まってから1時間を優に超えている。何回のテイクが繰り返されただろうか。

正午に差しかかった頃に,ようやく録音が終わった。さすがに疲れた表情を浮かべる生徒たち。突き詰めようとする集中力と粘り強さ,妥協を許さない姿勢,生徒のみなさんから教わった気がします。私は舞台上にいるみなさんに感謝の意を述べた。「心を打たれました。みなさんの声を末永く大切にさせていただきます。」

帰り際,協力してくれたある生徒にあらためて感謝を伝えるとともに,少し話しかけてみた。

「京都の人ですか?」
「いえ,私は他県から来ました。1人で下宿をしています。」

中学生の時にはすでに志を持ち,覚悟が決めて学んでいる。その表情は明るかった。

「将来の夢は何ですか?」
「まだはっきりとは決めていないですけど,芸術大学には進むつもりです。でも,法律の勉強もいいなと思っているんです。小学校で日本国憲法をすべて覚えた時から興味があって。」

多様な関心から自分の道をまだまだ広げようとしている。世界に通用する声楽家をめざすのか,新しい目標を掲げるのか。それとも,いくつもの世界を眺め究めようとするのか。

あらためて,京都市立京都堀川音楽高等学校のみなさんに感謝申し上げます。本校と起源を一とする高校のみなさんにご協力いただけたことは感慨深く,大変うれしく思っております。思いを込めて作成していただいた音色を響かせ続けたいと思います。

新しい年を迎えました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

橋詰 忍

高みをめざす

12月19日の日曜日,京都市立高校グローバルフェスタ2021が京都工学院高校にて実施されました。この取組は,京都市立中学校の2年生に市立高校9校の各校が実施する授業の一部を体験していただき,高校での学びに触れ,高校選びの参考にしていただくことを目的の1つとしています。なお,ご応募いただいたにもかかわらず,ご参加いただけなかった方々につきましては申し訳ございませんでした。

堀川高校は「クリティカルシンキング 〜常識を疑え〜」と題した体験授業を行いました。ご参加くださった中学校2年生のみなさん,ありがとうございました。今回は,本校生徒1,2年生の計8名が,ハンス・ロスリング著『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』を参考にし,「自分たちが信じている“あたりまえ”」を疑うことから探究への道が始まる,ということを中学生に感じていただきたいという思いから,生徒どうしで議論を重ねながら準備を進め,授業を作ってくれました。堀川高校生が取り組む姿勢や授業の雰囲気を少しでも感じ取っていただけたなら幸いです。次年度に向けて,授業内容や運営方法などをさらにブラッシュアップさせていきたいと思っております。

今回のグローバルフェスタ2021をもちまして,中学生のみなさんに堀川高校を紹介する本年度のイベントが終了いたしました。5月には予定していたキャンパスツアーを実施できず,その代替として生徒が作成してくれた動画を配信いたしました。その後の7月の学校説明会,11月の進学説明会/学校説明会では,残念ながら人数を制限せざるを得なかったりオンラインで実施したりという形といたしました。そうした難しい状況の中,本当に多くの中学生の方々に関心を寄せていただき,ご応募ご参加いただきましたこと,この場をお借りして心から御礼を申し上げます。また,残念ながらご希望に沿うことができなかった方々には申し訳ございませんでした。

11月の説明会のスタッフとして活躍してくれた本校1年生生徒が,説明会後の振り返りの会で他のスタッフ全員に向けて次のように言っていました。

「本番1週間前に大きなつまずきがあったのですが,当日はなんとかうまくできたと思っています。この経験を通して,想像力を活かして準備することの重要性を学んだ。そしてまた,困ったときには原点に立ち返ること,自分たちは何をめざしていたのかをもう一度確認することが大事だと感じた。説明会の取組は疲れもしたけど,とっても楽しかったし,大きな達成感を得ることができた。」

高校生のみならず中学生のみなさんもまた,何をめざすのかという自分の原点を大切にしながら,目標に向かって邁進されていることだと思います。夢を抱き,志を高く,力を抜いて,可能性を信じきる。みなさんがこれまで歩んできた道は確かなものであり,そして,たどり着きたい場所にはきっと通じている。その場所は,今はまだぼんやりとかすんでいるかもしれないし,その輪郭はくっきりとわかるけど小さくしか見えないかもしれない。でも,力強い一歩の連なりは,みなさんを次のステージへと誘ってくれるはずです。

堀川高校には,さわやかにいきいきと豊かに生きる指針として,生徒会が定めた堀川高校憲章「ひとつになる 高みをめざす ひとりになる」があります。

 高みをめざす

 私たちは,よりよいものを創出することを求め,困難に立ち向かい,
 工夫を重ねて,一層の高みに向かうことをめざします。

堀川高校の選抜概要についてご不明な点や学校生活についてのご質問などがございましたら,本校の企画部までお気軽にご連絡いただければと思います。

みなさんの挑戦を応援しています。

橋詰 忍

STAY WITH ME

10月7日の前期最終日。残暑の厳しい1日,嵯峨野グラウンドにて体育祭を実施しました。

競技の中盤,陽ざしがますます強くなり,砂ぼこりが舞い上がる中,学年別クラス対抗の団体競技,大玉転がしが行われていました。
 
各クラスの生徒20名ほどが二手に分かれ,30メートルほど離れたこちら側とあちら側の配置についたところからスタート。ポヨポヨと柔らかいけど跳ねはしない,持ち上げるには重たい大玉。直径が身長ほどある文字通りの大玉を,生徒が2人1組で力を合わせてこちらからあちらへ運び,待ち構える次の2人にバトンタッチ。今度はその2人があちらからこちらへ。その往復を繰り返し,最後の2人が対岸にたどり着き,20名全員がしゃがみこんだ時点で終了。一番速かったクラスが1位。グラウンド全体が生徒たちの黄色い声で湧き上がる。大変盛り上がり,見ていてもおもしろい。

1年生,2年生と続き,いよいよ3年生。スタンバイOK。体育祭の企画から運営までを取り仕切ってくれる生徒会執行部の生徒たちがその様子を連携しながら確認し,GOサインを出す。スターターピストルが鳴り響く。6クラスそれぞれの2名が一斉に大玉を押して走って,また押して走って。思いもしない方向に転がる大玉との悪戦苦闘を生徒たちは楽しんでいる。

この競技にはもう1つ難関がある。対岸に向かう途中には1本のカラーコーンが立てられていて,生徒は大玉とともにそのコーンをぐるっと1周しないといけない。これがまた,生徒たちを悩ませる。

「おいで,おいで!」,「あと少し!」といった声援があちこちに飛び交う中,あるクラスの生徒が先頭に立って大玉が運ばれてくるのをソワソワしながら待っている。出番はいよいよ。目の前では2人のクラスメイトが真ん中にさしかかった。コーンを回り終えようとしたとき,大玉がコーンに当たって倒れてしまった。2人はそれに気づかず,ひたすら大玉を押している。砂ぼこりがその姿を追いかけるかのように舞っている。

先頭に立って出番を待っていたその生徒は,一瞬の戸惑いと躊躇の後,そのコーンめがけて一直線に走っていった。そしてもとの場所に立て戻し,すぐに自分の場所に戻ってきた。再びワクワクしながら自分の出番を待っているようだった。その一連の光景は,私に柔らかくて優しい感触を与えてくれた。

堀川高校では例年,クラスの親睦や団結を深めるために,各クラスがオリジナルTシャツを作成している。生徒たちが色やデザインについて話し合い,6月球技大会や9月文化祭,そしてこの体育祭で着用することが恒例となっている。

その生徒のクラスTシャツは青色。背中には背番号とともに,1人1人それぞれのお気に入りのことばがプリントされている。これまたオリジナル感があり,個性が輝く。

STAY WITH ME

その生徒の背中に見えたことば。本人がどのような思いを込めたのか,何を意図したのか,私には定かではない。

私とともに

時間と機会を重ねる中で人がつながり,連帯感や信頼感が生まれ深まっていく。楽しみや喜び,悲しみなどの感情を受け止めてくれる仲間であったり,真剣に意見を交わし主張しあうことができる仲間であったりが自分の周りにいてくれる。安心感に包まれながら自分らしさを表現したいし,他の人の居心地も大切に守ってあげたい。そんなWITH MEやWITH US,また,WITH YOUの思いが,体育祭といった学校行事をはじめ,学校でのあらゆる場面で,生徒たちの心の中に育まれているような気がした1日だった。

「ひとつになる 高みをめざす ひとりになる」 ひとつになって何かをめざす体験を繰り返すからこそ,集団の高い目標や個人の役割がみえるようになり,そして自分がひとりですべきこと,成すために仲間に頼ることの大切さを知る。生徒たちにはそういったことを実感する高校生活を思う存分に楽しんでほしい。

3年生にとっては最後の体育祭。他にもさまざまな頼もしい表情を見せ,行事を盛り上げてくれました。

そして後期が始まりました。

橋詰 忍

はねかえすチカラ

 5月にさかのぼりますが,本校サッカー部のインターハイ予選を観戦しました。

 試合会場となる高校には関係者しか入れない。この高校も然り。私も正門前で身元を確認されてやっと入れていただいたと思えば,会場内でも責任者の方から「保護者の方の立入はできません。」と声をかけられる始末。生徒の安全安心が最優先,と心を整える。

 試合開始直前のミーティング。堀川が陣取るテント前に白色のユニフォーム姿のイレブンが輪になり,その輪をさらに部員たちが取り囲む。顧問の指示が飛ぶ。生徒どうしで戦術を再確認し,互いに士気を高め合う。一方で,みんなの笑顔もあふれる。肩の力を抜いて。

 「よし,いくぞ!」威勢のよいかけ声があちこちからあがる。前週の勝利に続き,目の前の1勝をめざしていよいよフィールドへ。負ければ終わりのトーナメント戦。1試合でも多く真剣勝負がしたい。両チームの整列,あいさつ。イレブンは円陣を組んだあと,自分のポジションに散っていく。いよいよ,笛が高々と鳴り響く。私自身もサッカー競技歴が長かったこともあり,この瞬間に一気に沸き立つ闘志で身を震わせる生徒の気持ちがよくわかる。

 3年生にとっては最後の大会。これまで新型コロナの影響をずっと受け続けてきた生徒たち。思い返せば,練習の時間や内容にも試合経験にも遠征機会にも制約がかかり,競技に向き合う姿勢を保ちづらい環境の中,自分たちで考え,自らを奮い立たせ,心をつなぎ合わせて,ここまでやってきた。不確実性の高い状況において,生徒それぞれが山あり谷ありの時間を過こしてきたことだろう。唯一解を見出せず誰からも提示されず,思考するために必要な情報すらぼやける中,自分や自分たちはどうしたいか,どうあるべきかという納得解をとりまとめ,さまよいながらも道を歩んできた。

 試合はといえば,前半は互いに譲らず互角。後半になってもチャンスとピンチが繰り返される。終盤になると,徐々に押し込まれてきたか。ディフェンスの生徒が忙しい。強い日差しが体力の消耗を加速させる中,最初の一歩が遅れがちになる。それでも,自陣に飛んでくるボールに次々と食らいつき,競り合い,押し返そうとする。
 少しでも遠くへ。味方のもとへ。

 後半の終了が告げられる。結局,両チームともにゴールを割ることができず,0対0のまま延長戦へ。それでも決着がつかずPK戦へ。時に運も左右するこの蹴り合い。残念ながら,3年生の舞台はここで閉じられた。
 ナイスゲームと心から伝えたい。

 はねかえすチカラ。
 こっちへ来させるものかと激しくはねのける。ゴールに近づかせないために味方に指示を出す。その瞬間,生徒は何を考えているのだろう。勝つために必要だから,ルールだから,体が勝手に動くから,そうするのがあたりまえだから,夢中だから何も考えていない。そういったことだけなのか。

 後日の昼休み,サッカー部の3年生に聞いてみた。「あの瞬間,君は何を考えていたのだろう。」全身ではねかえし続けた生徒。頭を悩ませながら考え込む彼と話す中で,彼はあることばを浮かび上がらせた。役割。スポーツ競技であれ,他の活動であれ,自分に課された役割を自覚することが大切であり,それを果たすための姿勢と行動が仲間を勇気づけたり楽しませたりすることにつながる。自分はそう思っている,と。

 彼は穏やかに続けた。勝ち負けといった表面的な部分だけでなく,練習の一場面やミーティングでの議論の過程において,これまで成功体験と失敗体験をたくさん繰り返してきた。そんなときに抱いた充実感とか自己効力感,逆境に向かう高揚感とかは,これから自分をもっと強くしてくれるはずだ,と。「これまで」と「これから」。はねかえす「今」は,過去から続き未来につながっていくもののようだ。Serendipity=「偶然の幸せな出会い」。彼らは同じ年に生まれ,15歳で堀川に集い,サッカー部という集団に引き寄せられた。その瞬間からこれまで,学校内外で長くて短い時間が流れ,彼らが大事に思う数々の見えるもの見えないものが積み上げられてきた。

 最後に彼は,「うまく伝えられなかったので,もう一度考えてみます。」私から,「また落ち着いたら,お話しを聞かせてくださいね。」彼はさわやかに去っていった。

 1人1人の生徒が役割を担い挑戦している。
 学習か,研究か,運動か,趣味か,他の活動か。
 放課後となった今,教室,グラウンド,体育館,あらゆるところで,生徒たちはひとつになって,高みをめざして,ひとりになって,自分や自分たちだけにしかその価値はわからないのかもしれないが,とってもこだわりのある目の前のモノをはねかえそうとしている。そんな音が学校中に響いている。
 もとめすぎず,ポイントをはずさず。
 他の誰かを打ち負かすためではなく,自分の成長のために。
 その挑戦は味方に伝わり,きっと支えてくれる。

 7月を迎えました。
 依然として基本的な感染防止対策の徹底が求められ,また,暑さによる熱中症には十分留意しなければならない中ですが,生徒の学習や活動の機会を可能な限り拡げていきたいと考えています。

橋詰 忍

幕開き

 新しい年度を迎えました。
 今年度もどうぞよろしくお願いいたします。

 本日の午前10時より,やわらかいひざしの中,23期生の入学式を実施しました。

 式辞では,23期生の入学に対するお祝いを新入生および保護者の方々へお伝えするとともに,生徒諸君の身体に満ちあふれている自負と緊張感をいつまでも大切にしてほしい,また,自らを鍛え,決して小さくまとまることなく,誇りと見識,また,謙虚さと感謝の気持ちをもって,夢の実現に向けて,心を込めて取り組んでほしいということを伝えました。

 また,3年生21期生,2年生22期生とも交わしている3つの約束「学校は学びの場である,学校は小さな社会である,学校は楽しいところである」を23期生諸君にも伝えました。

 以下,式辞からの抜粋をご紹介いたします。

 これからの3年間,自分の可能性と潜在能力に線を引かず,失敗を恐れず,常に挑戦意欲を持って,力強く躍動してほしいと思っています。また,先人たちの知恵を謙虚に学ぶとともに,常識とされるものに疑念や違和感を持ち,「知りたい」という自分の心と頭にビシビシと突き刺さる知的刺激を大いに楽しみ,ワクワクするような高揚感を持って,取り組んでほしいと思っています。
 みなさん1人1人は,自ら素敵な輝きを持ち,他を照らすことができる存在です。そのような個性的で堂々とした希望のひかりが,学校の中のみならず外の世界にあふれ,人の心を満たし,目の前の見えるところだけでなく遠くにも向かい,未来を展望し,力強く広がってほしい。志のともなった「ひざし」が照らすその先には新たな出会いがあり,それらが醸し出すおもむきを味わい,そして意志高く,時には協同し,自由に挑んでほしい。そんな「景(ひざし)」のような存在であってほしいと思っています。「ひざしおもぶき,世にあふれ,人にしみいる。」この一文字に魂を吹き込むのは君たち自身です。


 入学式の後,午後に前期始業式を実施しました。

 新入生である23期生を迎え,3学年が一同に会して実施しました。その後,生徒は自分のHR教室に戻り,担任の先生や仲間とともに時間を過ごしました。その時,私が1年生のHR教室が並ぶ4階廊下をフラフラと歩いていると,ある女子生徒がHR教室から出てきたところに出くわしました。見覚えのある生徒でした。

 「あなたを探究道場で何度かお見かけした気がしますが...」

と唐突に投げかけてみると,彼女は突然の驚きの中にも素敵な笑顔で快活に「はい。」と。

 「2度,来られましたよね。」
 「いいえ,3度です。中学1年生の時に1度,昨年度に2度です。」

 彼女はこれまでは堀川高校を外からみていましたが,今日からはその中に入り,堀川高校生の一員として学校生活を謳歌していく。内から見た堀川の景色はどのようなものなのか,ぜひ聞いてみたいと思っています。

 さまざまな新入生が,中学生のときから堀川高校とつながっていたり,憧れていた堀川高校生活への希望に満ちていたり,緊張や不安の中にもワクワクした気持ちを秘めていたり。そんな23期生たちとこれから歩む3年間。私自身も大切にしていきたいと思っています。

橋詰 忍
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行事予定
3/4 2年学年末考査 1年宿泊研修結団式 生徒校内立入禁止(13:30〜)
3/5 終日生徒校内立入禁止(5〜8日)
3/6 1年宿泊研修(6〜11日)
3/8 中期選抜学力検査
3/9 2年学年末考査
3/10 2年学年末考査 2年アクセスガイダンス スクールカウンセラー来校日

カリキュラム

進路状況

お知らせ

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学校経営要項・方針

京都市立堀川高等学校
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